第27話 第二都市へ向けて
一ヶ月経った。八月中旬にリサ、並びにザルツが現場復帰。
死ぬ程食べて鍛えてを繰り返す生活に戻れる事に喜んでいる様だった。
新しく仲間に加わったハウを軽く紹介し、次の目的地について話し合う。
場所は人がいなくなった教会で、
負傷者については完全に治療が終わった。
カミリーズに行くべきか、違う場所へ行くべきか…
個人的な事情を考慮すれば行く一択なのだが、リーダーが権力を振り回すのは違う。
それと、神の四天王だったノアに触れられた時、記憶が一部蘇った。
ケイがこの世界に来た原因に奴らが一枚噛んでいるのは間違いない。
奴らを殺す。もしくは接触する事が記憶を全て元に戻すのに必要だろう。
「行くしかない…よね」
ザルツが答えるとリサとハウも頷く。
「参謀が始めた冒険だ。俺達の目的は一致こそしてないものの、リーダーはお前だ。優先するのはお前に決まってる」
ハウが静かに答えると、ケイの覚悟が決まり、
目的地が決定した。
あいつと決着を付けよう。
その為には──────
「強くなるのが必須…」
どうやって強くなるかは不明。奴の速度について行く何かが必要だ……
全員でトレーニングメニューを考えていたら、教会の扉が開く。
「カミリーズに行く…か。そこについて何か調べたのか?」
渋い声が教会中に響く。少々老けた男は、話を聞いていたのだろう。
「え?誰」
リサは状況が飲み込めていない。なんなのこのオッサン?とでも言いたげな表情だ。
男は勝手に近くの席に座り出し、話を切り出す。
「レノア・マフォードから聞いたぞ。お前、カミリーズに行くつもりなのか?」
───凄い!!同じだ!!
そう言えばレノアはああ言っていた。
何がパーティでも作っていたのだろうか。
と言うか学校は…?
「悪いことは言わない。辞めておけ」
低い声でそう言うと、ハウ達は怪訝な表情になる、
唯一、ケイを除いて。
男は遠慮なく続け、ケイの方を見る。
「まぁ、そこの三人はいいとしてお前は駄目だな、
ケイ・タケダ」
はっきりと言う。ザルツが反論しようとしたがケイが止める。
「自分でもわかってる──そう言いたそうだな」
「実際、この中で一番弱いのは俺だからな」
ザルツの本領、ハウの経験、リサのセンスにはどう足掻いても勝てない。
この差を覆したい。今考えているのはそれだけだ。
「……説明してなかったが、今のカミリーズは嫌な噂が流れている」
少しケイの事について理解した男は自己紹介を後回しにし、説明しだした。
「近頃あそこで、未確認の魔物と、ベテラン冒険者の失踪が話題になっている。噂では何者かがそれを行なっているという」
神の四天王の一人が前者の噂を実現しているのだろう。後者は恐らくドライヴだ。強いやつを見つけ殺戮の限りを尽くしている。
「その噂、多分本当だと思いますよ」
口を出したのはザルツだ。
「先月、神の手先を名乗る男とケイが交戦。その神が元凶だと思います」
淡々と状況を説明すると、男は考えた姿勢を取った。
「俺達は二度そこに向かっているが、元凶となりそうな者はいなかった……潜伏。それか人間社会に溶け込んでいるのだろう」
厄介厄介。男は呟き、ケイ達を見据える。
この男は何者なのか──聞くタイミングを完全に逃した。
「まだお前らはそこに行くのは早い。俺の勘がそう告げてる。全員鍛えてやる。冒険の最中は長いだろうしな」
少し間を開け、ドスの効いた声で男は言う。
「あそこは危険地帯になるかも知らないぞ、それでも
行くのか?」
全員、躊躇いなく行くと答えた。
扉の奥から歓喜の声が聞こえる。
「ヒュ〜!!!勧誘成功!!」
チャラそうな男と、興味がなさそうに本を読む男、そして….
「久しぶり、ケイ君」
僧侶のレノア・マフォードである。
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チャラそうな男からの説明で、始めから勧誘のつもりで来ていたとの事。
めちゃくちゃに行くなと言っておいて、男はやたら街の事を説明していた。その理由がないと思っていたケイは、合点が言った。
「オレはブレイ・カラム。この需要のないツンデレオヤジは、ログロ・スロッグ。旧友だ」
勧誘?をしてきたログロだけではない、ブレイも奥の男も強い───魔力総量だけではない何かがあるのだろう。
「お前は黙ってろ……はぁ……このまま行けば俺達の足を引っ張る事になる。もう少し強くなれ」
そう言い残すと何処かは言ってしまった。
「あの……そちらの方は…?」
今の状況を飲み込むの止め、奥にいる本を読む男に話を促すと、男は軽くため息を吐き、自己紹介をし始める。
「ストライド・マーサナリー。彼らと違い、雇われの身だ。前回から彼らの任務に加わった。以上」
簡潔にそう言う。
「それと…私、レノア・マフォードです…」
弱々しく手を挙げるレノアを横目に、一体次の街はどんなところなんだと、考えずにはいられないケイ達であった。
「そう言えばレノアちゃん。学校は?」
リサの質問に静かに耳を澄ませる。それはケイも気になっていた。仲間になるのは色々な意味で嬉しいが……
「マフォード家の姉妹達は忙しくて…本当は私より優秀なお姉様達が行くべきなんだけど、みんな世界各国で働いているせいで大変なんだよ」
それで彼女にお鉢が回ってきた。と言うわけか。
「えぇー!!レノアちゃんって何人姉妹!」
「四人姉妹で、私が四女」
「いいなぁ!!私、一人っ子だからさ〜!姉か……
憧れるなぁー!!」
女子同士で仲良くしていた二人は気が合うのだろう。
これから忙しくなると、本腰を入れ直すケイだった。
────[ここから視点はドライヴに移る]────
ある場所で、神の四天王の一人の男は、改造した魔物、六人を作った。
彼らを息子と呼び、期待している。
その期待が洗脳の様な形であることを理解していた。
ドライヴは長男。最強の子供だ。
あくまで籍である神に属しているだけで、忠誠は名ばかりだ。奴もそれに気づいている。
「ドライヴ。失敗したそうですね」
紳士を装う彼の内面を図ることは無理だろう。
「すんません。でも確実にここに来ますぜ」
手をヒラヒラさせ答える。
「へぇ…確実!!ですか。ふふふ…そうですか!!」
いきなり高笑いし始めると、手に待っていたワインを飲み干す。
「そうですか…」
何か考える姿勢を取り、部屋に籠った。
どうせろくでもない。考察するだけ無駄だ。
(かかってこい。ケイ・タケダ。お前が熱いハートを持ってるならな)
そう心で呟きドライヴはどこかへ消えた。




