第26話 最強の護衛
(もう戦える奴はあれで終わりか)
ドライヴの心を満たせる奴はいなかった。
退屈。
美味しいとこ取りなんてつまらない。
ノアの事をさんざっぱら酷評したドライヴだったが、
奴もそのタイプだ。全く人の事を言えていない。
「もっとギリギリの戦いほしー!」
残念そうに叫ぶとまだ息があるケイに留めを刺そうとした…が。
「悪いが、そいつはうちの参謀でな」
どこからかそんな声がする。
(背後───)
剣をノールックで背後に振るう。それを受けた男は驚いていたが軽く受け流した。
どちらも距離を取り、ケイを中心として互いを見つめ合う。ドライヴに攻撃した男。それは…
「数ヶ月ぶりのシャバの空気は美味いな」
一矢しか纏ってない姿のハウ・ゲレーロ。
「うお!お前服着ろよ!!」
「すまないが焦ってここに来た為、服はない」
(こいつ…)
ハウのその堂々した佇まいに少し引き気味のドライヴだった。
変態が来たが、任務は確実に遂行する。
ここはハウと戦いたい気持ちを抑え────
「れる訳ねぇだろぉ!!」
ケイに留めを刺すフェイントをしたが、ハウにはバレていた。
ハウが用いる大剣とドライヴの長細い剣がぶつかる。
「強いなぁ!!」
「黙って戦え」
ハウの回し蹴りをくらい、軽く浮く所にすかさず、打撃の連打。
「お前が俺と戦う必要が無いように、俺もお前と戦う必要はない。吹き飛べ」
あえて斬らずに平打ちで吹き飛ばす。
ホームランだ。
(痛って!!斬られてねぇのに…まぁ、確かにお前を殺すのは任務外だ。けどよ)
「俺様の私情はどう……なんだ!!」
ケイを一撃で倒した技、[燃焼]
それを使い、雷を放出する様に加速する。
「ッ!!」
防御には成功するが、防戦一方。
だがこのまま何もしないハウではない。
「大会ぶりだな…使うか」
目を手で覆い、魔の目を起動する。
(あ?何を……なっ!?)」
剣が消滅した。魔の目の本領、体外に放出した魔力を
自動で消去する。
制限時間は一分。だが先に戦いを辞めたのはドライヴの方だった。
「任務失敗。か…」
少し悔しそうに言うと、手をヒラヒラさせる。
「おい、変態。そこの死にかけにこう伝えろ。まだ挑んでくる熱いハートの持ち主なら……冒険者の街で待つ。とな」
そう言い残し、雷の様な速度でどこかに飛んでいってしまった。
「随分と厄介な奴に目を付けられたな、参謀」
ニヤリとケイの方を向く。ハウは気づいていた。
「何!?気づいてたのか!?」
[気絶したフリ]はハウには効かなかった。
何故ここに囚人のハウがいるのか?
それは、セリーナに褒美としてハウを牢屋から解放し
仲間になる様に手配してくれ…
という願いを一つ返事で淡々とこなしてくれたセリーナには頭が上がらない。
その為、ハウなら真っ先にここに来ると信じて、ドライヴに負けた後は変に抵抗せずに沈黙を貫いた。
「ま…貫かれた事には変わりないが…」
依然出血が止まらず、激痛に苛まれている。
「今度は必ず…殺…!す…」
限界が来て、倒れた。
教会のお世話になる人がまた一人増えた。
────────[数時間後]──────────
命に別状はないザルツだったが、力という力を使い果たした為、目を覚ますのが一番遅かった。
「ん……天国…?」
夢でノアとの別れを告げたザルツはもう死ぬのかと思っていた。日差しの暖かさに勘違いをしている。
「現実です」
目覚めを待っていたのはケイ…ではない。ハウだった。
「ハウ・ハゲーロ!?」
「ハウ・ゲレーロだよ!!ハゲを促す苗字になった覚えはねぇよ!!」
そもそも掠ってすらいない。
そんな事もありながらも、今までの事を軽く説明したハウは、筋トレに向かった。
「やれやれ、変な奴が味方になったな」
ザルツはそう呟き、寝た。
現在、治療が終わったのはケイとリサ。ザルツは強度の筋肉痛でレノアの治療待ちだ。リサは元気ではあるがまだ復帰は許されていない。
ドライヴに思いっきり斬られたレノアだが、意識さえあれば自力で回復できるそうで問題はなかったそうだ。
夜───ケイは教会の屋上から星を見ていた。
ドライヴとの戦いは…あっさり負けた。
傷こそ簡単に治してくれたが、なんとなくまだ痛い。
勿論リベンジするし、強くなる気もある。
奴が神の四天王側ならいずれか戦う事になる。
(ハウはアレと互角に戦っていた。彼は獣族と人間のハーフだ。純粋にパワーが…いや、俺でもやりようはあるな。膂力の差で片付けるな)
──── 冒険者の街で待つ。
と、奴は言っていた。あの戦いで少し怖気ついたのかもしれない。行きたくないと言う気持ちもあるにはある。
「まぁ…行くよな」
記憶を取り戻すには神の四天王を倒すしか無いのだから。
そんな事を考えていたら背後に気配を感じた。
ずっと前から居るのに顔を出さない。
「誰だ」
数秒後、ひょこっと顔を出したのはレノアだった。
少し驚きつつも何処か安心したケイは何故ここにいるから聞いた。
「えっと……お話…したかったから?」
彼女もよく分かっていないのか…?
「これから……どうするの?」
ぎこちなく聞くとケイは考えるポーズを取る。
「カミリーズへ行く。こっから学校を越えて南へ」
現在、日本時間に合わせると七月。
そこに着く頃には八〜九月くらいにはなっているだろうか。
「え?今なんて…」
「カミリーズへ…行く」
するとまた彼女はグッと距離を詰めてくる。
学園の時然り、突然顔面ドアップは心臓に悪い。
「凄い!!同じだ!!」
嬉々として喋るレノアだったが……
「な…!な………!そう…!なんだ」
目を合わせずに顔を赤らめそう答える。
レノアは少しニヤニヤしてる様にも見えたが…気のせいか。
離れて欲しい。そう伝えるとあっさり離れた。
「あ!ごめんなさい。[ちょっと]近かったね」
「ちょっとじゃ……無いです」
「?なんか言った?」
慌ててなんでもないと返す。彼女は「早く寝なよ」と言い残し、優しく手を振って教会へと戻った。
彼女は悪女だ。人の心を掴んで弄ぶ────────
しかも無意識に。
「はぁ……なにで悩んでたんだっけ…」
顔の熱さと疲れで、部屋に戻った。
次回:第二都市[カミリーズ]に向けて。
新たな仲間と敵が───?
お楽しみに。
[感謝のついで]
遂に合計pvが1000を超えました。ありがとうございます!面白い作品を作れる様に努力します。




