第17話 ぶつけてみる・受けてみる。
一番可哀想なのは、怪我を治したら男二人が突然喧嘩し始めてよく分からない状況になってる僧侶のお姉さん。
「ケイ…?」
弱々しい子犬のような顔をしてザルツは俺を見上げる。なんかこっちが悪く思えてきた。
100俺が悪いんだけどね!!
「ザルツ先輩、いや、ザルツ。ここで終わる気か?
やれ弟だの、やれ戦えないだの!!お前はあいつの何にビビったんだよ!!あ!?」
ケイの理不尽な怒号にザルツの目が怒りに染まる。
「君は失踪した家族があんな異形になって!!人を殺していたら、どう思えばいいんだ!!どう向き合うのか教えてくれよ!!!」
胸ぐらを掴み一撃、ケイを殴る。その後ケイを地面に投げ、マウントの姿勢。
「何が!ここで!終わる気だ?だよ!!たかが!!
一年で!!お前から見えた[ザルツ]はどう言う人間なんだ!?それも教えてくれよ!!」
言葉の合間合間にケイを殴り続ける。
「正々堂々戦う[真摯な]人間か!?それとも
どんな時でも冷静さを失わない[魔法使い]か!?
わかってんだよ!!今このやり取りが全部僕の為にやってる事も全部!!全部わかってる!!わかってんだよ!!でも…!」
言い終わると同時にケイを殴るのを辞めた。
「魔法使いとしてこのパーティにいるのに、魔法は簡単に弾き飛ばされ、君の様に全ての魔法を無詠唱で扱えない!!なんだよ闇魔法って!!あんなのずるいじゃないか!!」
ザルツはもう、遠慮をせず言葉をぶつける。ここら先はもう誰にも止められない。
実際の所、ザルツも闇以外の魔法は全て無詠唱で扱える。だが試験での一戦やグリフォン討伐での戦いで、
ザルツは無力感を少しづつ募らせていた。
「出来ねえって勝手に諦めて!勝手に憧れてんじゃねぇよ!!」
上にまたがるザルツを殴り飛ばし、お互いに立ち上がる。
「お前にだって俺達と違う圧倒的な魔力量があんだろ!!限界ラインは定めたら絶対越えられない。
だから人は少しずつ越えていくんだろ!?お前が見た俺は確かに突然この世界に来て、何も知らない状態で魔法覚えて、限界ラインを飛び越えたように見えただろうな!!俺もそう思った!才能の開花だって!
だけどよ!」
酸素が足りない、急いで肺に入れろ。
絶対に言いたいんだよ、これだけは!
「リサや、イーヴィさん、ザルツ先輩、そしてハウなどのいろんな奴に会って見たら思ったよ!俺はただ
みんなと一緒のステージにいるんだけなんだ!!
なんでもできるだけなんだよ!なんでもできて、やっとお前らに肩を並べるんだ!」
喧嘩と言うより、お互い自分を卑下しているだけになってきた。
「僕は…君の言う同じステージいない…いないんだよ!!」
涙が出てきてしまうが、もう抑える必要はないのかも知れない。ザルツは言葉を続ける。
「魔法が使えるだけだ…それだけなんだよ…僕は…」
「あんたにとって弟は、どう言う存在なんだ?」
「え?」
「どう言う存在なんだって聞いてるんだ!!」
喧嘩と言う恐喝のようになってるが、ザルツ先輩なしでここから先の戦いで勝てる気がしないし、弟を解放する為にもあの人が必要だ、多分。
「…大切だ………大切だよ!!ずっと僕のたった
一人の弟だ!!なのに……なんで…」
再び、ザルツの胸ぐらを掴み言う。
「だったら最後まで向き合え!!怖いのも分かる、殺すのも殺されるのも両方怖い!全部分かる!でもあんたが言った通り、弟なんだろ!この世界でたった一人の!!」
「あ……」
ザルツ先輩の言いたい事全部分かる。勝手に分かったつもりになっている。それなら、俺は綺麗事で立ち向かわなくちゃいけない。
「弟……」
こうしている間も刻一刻と時間は過ぎる。
だが、これが言いたかった事…なのかも知れない。
「…………まだ…やる事が…あるのかもしれないな」
ザルツの乾いた笑いは先程の重い空気が消えたような気がする。
「ザルツ先輩、俺達と一緒に戦ってくれませんか」
ケイは拳を突き出す。
リサがほっとした表情をした後、任せろ!と胸を
張り、拳を突き出す。
「あぁ、任せてくれ!!」
ザルツもそれで返し、改めてこのパーティがまとまった気がした。
「あの…」
僧侶のお姉さんが、気まずそうに口を出す。
「そこの方はまだ怪我が完璧に治った訳では決してないので明日までは安静に…」
言葉の意味を理解する前に秒で頭を下げる。
「あ、すみません」
今思うとリサはともかくあの人にも見られたのは恥ずかしい!!
[翌日…]
全員の頭はスッキリして、迷いはない。作戦会議だ。
四天王の襲撃は翌日。やれることをやっておこう。
改造グリフォンなどの軍隊も引き連れてくる可能性もある。つーか多分くる。今の問題はこれだと言わんばかりにリサが口を開く。
「あの暗殺者。どうする?」
そう、前にセリーナの事を暗殺しようとしたあの二人。リサとの説明を照らし合わせてほぼ確実だ。
あの時襲撃したあの男。暗殺を失敗した時に……
──────チッ、本当についてねぇ。◼️◼️◼️◼️◼️は…どうやら期待できないねぇな」
だったのを解読?すると、[援護は]だと思う。
後の言葉から考えてもそう考えるのが妥当だ。
VSノアはザルツ先輩で確定。
ならこれは…
「それは俺が引き受ける。狙ってるのはセリーナ様だから……まぁ確実に責任重大だ」
さっさと倒してザルツ先輩のサポートだ。
「なら、リサ。あなたに頼みたいことがあるんだけど」
セリーナの一言。リサを手招きして耳元で喋り出す。
「はい?」
小声でリサに作戦?を伝えている。
「え!?わ、分かりました!!」
リサは自信満々だ。大丈夫か?
「?何を話したんだ」
ザルツが興味津々に聞くとリサは悪戯っぽく笑う
「ひみつ」
よく分からないが楽しみだ。
「ではお嬢様、私は引き続き護衛に務めます」
執事はそれだけ言い終わると他に何も言わなかった。
それ以外やる必要ない。忠誠心から来る言葉だ。
こうして作戦を立て、準備は万端。勝負だ四天王!
[翌日…]
時間は夜だ。日本時間で19時、真っ暗だ。
ザルツは城から状況を確認、その目は殺意で満ちている。覚悟は十分だと見れば分かる。
ケイは街を移動、暗殺者を誘う。
街をまともに探索した記憶なんてなかったなと思う。暗殺者達は俺達の動向を見ているなら好都合。
今は逆に暗殺者の実力を信じる事にする。
目指す場所はネオニィシティの象徴とも言える。
アルテミア大時計。あそこは時計の役割も果たすが、本来は高い場所から街を見下ろし夜景を楽しむ社交場だ。あそこは広く誰の目にも映らない。誘い出すにはピッタリだ。
まだ四天王は来てない。早めにやる。
社交場に着くと部屋が暗い。全体を確認できる暗さな為、無視して進む。
「……………!」
聞こえてくるのは足音。一人か。チッもう一人は無理だったか。予定通り、誘い込めると思っていたが……
薄暗い部屋に一人、入る。男はこの暗さによく合う服装だ、色合いは黒を基調としている。
「よぉ」
低い声だ、だが決して聞こえずらい訳ではない。
「命令が変わった。殺す。」
刹那の睨み合い。男の目が変わる瞬間、感じた。
遅れたのだと。
「よっと!!」
ナイフで顔に二突き。ギリギリ避けて蹴りで反撃。
交わされ距離を取られる。
「まだまだ!!」
防戦一方。まだ避け切れているだけきせ……な!!
「隙あり」
視界の端。人間が捉えられるギリギリにナイフのようなものが映る。つまり敵は…二人!!
「グッ!!」
腕に攻撃が掠る。掠っただけだが、すごい一撃だ、
血が止まらん。
「おせぇよ」
「うるさい集中しろ」
「へぇ〜い」
ふざけたやり取りをしているがこちらの警戒は欠いていない。
「二人か…ラッキーだな」
「あ?」
「ここで…やる!」
強がっているが、実際は怖いし自信は無い。
だがここで思い出す。学園で担任の特別授業を───
──── 対策として、三つ!お前に教えておく!!心して聞け!!
まさか、こんな所で伏線を回収するなんてな。
やる事は一つだ、
時間を稼ぎつつ、四天王が訪れたらすぐに殺す。
殺す場面に出会ったら出来るかどうかは…分からない。
次回18話
ケイVS暗殺者




