第14話 護衛
「捕まっちゃった…」
親に怒られた子供の様にしょんぼりしているのは、決勝戦で四天王と共に戦った、ハウ・ゲレーロであった。
体育座りでちょこんとしている。
「貴様らはこうはなりたくないだろう」
セリーナはこの世の悪より悪な顔をしている。
怖いって。
「…………ハウ、何してんだ」
「護衛の件を断ったら、こうなった」
本当に?そう思い、近くの衛兵に事情を聞く。
「本当に、断っただけなんですか?」
「あいつお嬢様に向かって、誰がそんな依頼を受けるか。失墜しちまえ!と言っておりました」
………………………
「すみませんうちの全身筋肉が……今後は良い筋肉に仕上げていきますので、どうかお慈悲を……」
「誰が全身筋肉だ!!」
「お前だよ」
こんな所で喧嘩している場合ではないと、ケイは思い出す。
「これは私の同期です。どうか見逃しては貰えないでしょうか」
こんな筋肉でも戦闘では役に立つ。
「良いだろう。と言うか、私も怒ってはない。牢屋に閉じ込めておけば受け入れてくれると思っていたのだが…」
頑なに認めないハウに、セリーナは呆れていたとの事。頑固そうだもんなあの人。
「あー!!!あんた!服着てないじゃん!!み、見ないでおくから!!」
リサが気づき、顔を背ける。
「安心しろ、下は履いている」
体育座りだったのを足をずらし、おもむろに見せてくる。
「どうでも良いよ!!!履いてようが履いて
まいが!!!」
さっきまでセリーナのペースについて行くだけでも精一杯だったのが、いつの間にかケイ達のペースになっている。恐ろしやハウ。
「え〜と、紆余曲折ありましたが、俺たちはセリーナさん、あなたの依頼を受けます」
「まぁ、助かるわね」
断ったら投獄って、キツすぎる!!
これで、自分達は後戻りはできないと確信した。
投獄という選択を自分が勝手に選ばない事を望む。
ちなみに、ハウはそのままだ。
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セリーナの部屋で話し合いが始まる。彼女は大胆不敵だ。油断すると嵌められた事にさえ気づかないかもしれない。
「依頼内容は至ってシンプル。私の護衛よ」
「護衛?」
リサは気になって質問する。
「そう、護衛。私は国王候補なんだから当然それを邪魔したい奴がいる。それを犯人を見つけ出すのは私たちがやるから、あなた達は私の護衛を努めて
欲しい」
「それは勿論全力でやりますが、セリーナさ…女王様は…」
「女王様はなんか横暴そうに聞こえるかセリーナで」
彼女がそう言うなら……とケイは呼び方を変える。
国王候補か、改めておっかない。
「セリーナ様、護衛は俺たち全員ですか?」
「いや、一人で構わない。君たち三人を一気に疲弊させるのは避けたい。護衛、初めてでしょ?」
なるほど、護衛慣れしてない俺たちに気を回してしまったか。ちょっと申し訳ない。
「分かりました。全力でやらせて頂きます」
頭を下げ、作戦は…少なくとも今日は不要だ。
今日彼女は城から出ないとの事な為、自分から名乗り出たザルツに護衛を任せ、リサとケイは探索だ。
その前に……
「ケイ様」
後ろから話しかけたのはケイにナイフを突きつけ、
彼女の執事兼護衛の……
「えっと…お名前をお伺いしても…?」
「私は名乗る程の者でもないので、適当に執事。とお呼びください」
「わ…分かりました」
背丈が一回りが二回り大きく威圧感がある。
彼女とは違う怖さだ。
「学園からケイ様について問い合わせてみた結果。
ケイ様は知識欲溢れる御仁と、お聞きしました」
「はぁ…どうも…」
知識欲?たった一年しか在籍してないが、先生方はどう俺を評価したんだ?
「この城にはアルテミア家代々伝わる書斎がございます。ご利用になってはいかがでしょうか」
牢屋があった地下より、更に地下。部屋の入り方も複雑だ。正しい順番で、鍵を開けないと二度と開かない仕組みな扉だったり、タイミングをしくると無限の毒針が飛んでくる仕組みだったりと…殺す気だ。
執事の完璧なエスコートにより書斎に着く。
「どうぞ、近辺の本は読んでも構いません。
しかし、奥の扉は開けないようお願い致します」
「奥の扉?」
「あそこは禁書と呼ばれる本達が揃う場所です。
前にお嬢様が入った後…」
謎にここで止める。後…?と聞き返そうとした瞬間。執事は口を開く。
「死にかけました」
「……!?」
怖気付いてしまった。近寄る理由もないが、それでも入ってみたい理由がある。
それは神の四天王ノアが使ったあの結界─────
あれが何なのか知りたい。この先様々な敵に遭遇する際、敵の独壇場にはさせたくなはない。
「分かりました」
結界に関する情報はもしかしたら禁書に書かれるレベルではないかもしれない。徹底的に探そう。
「………それと、ケイ様は一つ誤解している様なので訂正を」
「はい?」
「私は確かに護衛と暗殺に長けてます。しかし──────私はあなたより弱いです。正面で戦うのでは私はあなたに勝てないでしょう、人目見て分かりました」
「え……?」
強い……俺の方が?
いや、考えるのは後にしよう、今は本を探す。
[探す事数分…]
「ない!!」
やっぱりアレは禁書級か!!でも、今は探す必要はないか。
おとなしく、違う本を探そう。
こうして見つけたのは生物の本。魔物に関する知識はここで補完する…な…?
偶々見つけたグリフォンのページ。それはケイの考えを大きく変えた。
──────
「な〜んか、大変な事になっちゃったね」
ネオニィシティを探索中にリサがそう言う。その割にはワクワクしてる様に見える。
「ケイは?どう思う?
……ケイ?」
「………後ろ」
小声で後ろを見る様に促す。リサも後ろを見ると…
「ッ!?あの人は…!」
黒服で、長身。あの人は……執事さんか。
「俺たちはまだ、彼女から信頼を勝ち取れていないと言う事だな。当然と言えば当然だけど」
「ほっとく?」
「俺たちが喋らなきゃあの人は味方なんだから放置だ」
かなりの手練れなあの人の事だし多分大丈夫だ。
丁度店が見えたのでそこでリサと話す事にした。
テラス席の離れた所だ。可愛いパラソルと白の座席。
良いチョイスだ…とリサはどこかで聞いた事がある言い方で呟いた。
「気になる事が二つあるんだ。まだ妄想の範疇だけど」
単刀直入に、俺は切り出す。ここで話しておいた方がいい気がした。
「え?」
リサはリンゴジュースを注文した後、驚いてこれ以上喋らなかった。
「これは俺の妄想だ。根拠がないからな」
「ちょちょちょちょ!妄想なんでしょ?今はお互い
混乱する事態は避けた方が良いんじゃないの?」
そうだけど、そうなんだけど!!
「妥当な反応だ。だが……ここで話しておいた方がいい気がする。少なくとも、リサとザルツ先輩には」
「………そう言われたら…断る理由もないな。
それじゃ、聞こうかな」
「ありがとう」
ケイは話始める。妄想に近い考察と違和感について…
「一つ目は、今の敵について。俺はセリーナ様の言葉を聞いて、違和感があったんだ」
「どう言うこと?」
重々しくケイは告げる。あまりこうしてはならなかったと思っていたが…
「セリーナ様は俺たちに嘘、もしくは全てを語った訳じゃないかもしれない。理由はたった一つ。俺たちが
護衛する前には一体誰が護衛してたんだ?」
「それは……あの黒服な人でしょ」
「本当に?あの人だけで?」
─────私はあなたより弱いのです。
あの発言は嘘じゃないと思う。あの人の力量を俺は
計れなかったけど。
「なら何故今、彼女は俺たちに依頼したのか……
それはわからない!!」
おおよそ敵を探る為なんだろうけど。
(俺たちに)依頼前は他の人に頼っていたか、そもそも防戦一方で調べられなかったのか…
「本当に敵はいるのか、前はどうしていたのかは明日護衛の俺が調べる。こんな妄想より、少しは裏が取れた話をしよう」
「裏?」
リサが興味を持ったのか、体を前のめりにして聞く。
「あぁ…グリフォンについてなんだが……」
「グリフォン?あぁ、あれか」
最初に会った、ボロボロに消えたあの魔物。
「魔物に関する本について色々調べんたんだが、ここらのグリフォンは、群れないらしい。しかも食用としても有名だ」
実際この店のメニューにグリフォンのステーキがある。
「そんなグリフォンが、砂埃となって消える?それはあり得ない。最悪の可能性が俺の頭に浮かんだ」
「最悪な…可能性?」
「グリフォンは誰かに改造されたのかもしれない
もしくは作られたのか。特異種と考えるのが妥当だが、少なくとも本には書いてなかった」
考え過ぎ…なのかも知れないが、あの本は事細かに
グリフォンについて書いてあった。そんな新種なんてあるのか…?
「違和感……」
全てにおいて根拠がゼロだ。妄想で喋ってしまっている。
「今は考えないでおこう。護衛に集中!!」
リサは深い思考の沼に沈むケイの背中を叩き鼓舞する。
「…………!!そうだな」
今は考える必要はない。そう、今はそれでいいんだ。
根拠のない考察に意味はない。
伝えきれなかった設定。(ごめんなさい)
金銭について。
ヨーロッパのユーロの様に共通。
金貨、銀貨、銅貨。




