第12話 旅立ち前。
「君ともっと仲良くなりたいから、話そうかなって」
「なっ!?」
もっと仲良くなりたいか……と
ケイは照れている。言葉通りそのものだが、今彼は彼女の魅力?に翻弄されている。これで一目惚れなんだから恐ろしい。
「私、あの……えっ……と、あの先生にずっと迫られてさ…最初はちょっと距離が近いな〜くらいだったんだけど、段々エスカレートしてって…」
まだ入学して数日くらいなのに……
「それって…もしかして、入学する前から続いて感じ?」
たった数日くらいでここまでエスカレートすると言う事……完全におかしい訳ではないが、そこだけ聞くと色々省略した?と思った。
「私が僧侶なのは知ってるでしょ、冒険者ギルドの僧侶として、色んな人を治療してたんだけど……」
もう大方想像がついた。
「あぁ…えっと…もしかして…」
「うん、あの先生、つい最近まで冒険者だったんだね。あの人の顔が見覚えがあったから。きっとそれで…目をつけられたんだと…思う」
「こればかりは……ドンマイ」
最悪な男に引っかかったな…レノアさん。運がないとしか、言えることがない。そうすると彼女は少しもじもじし始め、ケイに問う。
「あの……ケイ……君。キミに聞きたいことがあるんだけど…」
「?」
「転移者ってホント?」
その時、忘れていた目的を思い出した。何故ケイが、ここに来たのか、それは人脈形成。転移者について知ってる人間に会うことだった。ザルツ先輩、リサの二人は家族に調べさせる事を約束してくれた。
後でザックにも聞いてみよう。
この事を今、思いだした。
「あぁ、本当だよ」
「え!?本当なの!」
レノアは体をグイッと近づけ、超至近距離で話す。
それに少しドギマギした。顔が熱い。つい目を逸らしてしまう。
「凄い……初めて見た!!」
「君の知的好奇心を満たせたなら…何より…!」
言葉を紡いでなんと放つ。数秒しか目を合わせられない。なんでだー!?
「………顔、赤いですよ?」
「そ、そうか!?」
ケイの頭はもう、絶賛錯乱中である。オーバーヒートする前に早く離れてやれ、レノア。
「どうやってこの世界に来たんですか?」
この姿勢のまま、レノアは続ける。鈍いのか…わざとなのか……
「それが、全然覚えてないんだ。と言うか思い出せない。あぁそれと、俺以外の転移者知らない?」
「うーむ。全然。と言うか、知識としては知ってるだけなんだよね」
気づけば彼女は自己紹介の時とは考えられない程、彼女は言葉に詰まる事なく流暢に喋っている。
ケイが転移者である事について知った所を境か。
距離の詰め方が尋常じゃない。仲良くなれた!と思ったらグイグイ行くタイプなのだろう。
「やっぱりか。からは長い時間をかけてやるしかないな」
「一年後に旅に出るんだよね、凄いね、私は冒険者が
傷ついた姿で帰ってくるのを見て、すぐ諦めたよ
ちょっとカッコ悪いけどね。本気で目指してた時期もあったから尚更…」
それは、俺達も同じだ。何も出来ずに志半ばで野垂れ死ぬかも知れないが、諦めるわけにはいかない。
俺は帰る。帰らなくちゃいけない。何故か常にそう思う。
「それまた一つの選択肢なんだから。かっこいいと悪いとかない。当然だろ?」
彼女は嬉しそうにそう答える。
「そうだね、私も頑張らないと」
──────
[数ヶ月後]
昼休みに中に呼び出された。それは前のレノアではなく、教師、カマルであった。彼の授業は分かりやすくかなり、やりやすい。
感覚派と努力派の中間にある人物な為、どちらの面倒も見れる。授業しか会うことがない為、彼がどんな人物か、最後まで知る事は出来ないだろうな。
職員室に行き、カマルと話をする。
「あともう一ヶ月で、お前達は旅立つ。だから、これを渡しておきたくな」
渡したのは招待状だ。ケイ・タケダ様へと丁寧な字で書いてある。
「これを書いたのはアルテミア家の女王候補。
セリーナ・ラフ・アルテミアからの手紙だ。
詳しい内容は実際に確認してみてくれ。まぁ、簡単に言えば会って話したい。だってさ、試験でお前の名前が広がったんだろうな」
「なるほど、分かりました、それでは失礼…」
しましたと言う前にカマルに遮られる。
「その前に、特別稽古を付けてやる」
「え?」
「良いから来い」
半ば無理やり、ケイを引っ張って連れて行く。
着いたのは学校近くにある森、ここで行うらしい。
「今ここで教えるのは人間の闇。暗殺者についてだ」
その言葉は恐怖と怒りを孕んでいる。圧だけで勝てないと分かる。いきなりなんでこんな事を?と思ったがすぐに吹き飛んだ。理由は至ってシンプル。
死を最も身近に感じた日が今日で更新だ。
先生の殺気はとんでもない。レター先生でも、こんな殺気を出した時はなかった。
「お前らの名は、お前らが思ってるより遥かに早く広がっている。お前らを疎ましく邪魔だと思う人間がいると言う事を教えておく!」
「つまり、狙われるかも?と言う事ですか」
「ああ、そう思ってくれて構わない。だからそれ用の対策として、三つ!お前に教えておく!!心して聞け!!」
その後、先生から命をかけた訓練で無事、しごかれたが、それを見せるのはもう少し先のお話。それを教えてたのは俺だけらしい。一体何故?
その後は、至って普通の授業で、特に変わり映えはなかった。
こうしてザック、レノアと共に、一年間、授業と鍛錬に励んだ。
主にあのカマルとか言う先生。バケモンみたいな強さをしていた。学校教師はこんなもんらしい。
絶対嘘だ。最初から俺たちは思ってたけど。
月日が経つのは早い。気づけば明日、出発だ。
ザックや、レノアに話しておこう。
こうして教室に行くと、レノアがいた。
「レノア」
「ケイ君……?あ、そっか、冒険の始まりか、少年!」
変な口調で俺の背中を叩く、不思議と勇気をもらえた気がする。
「そう言えば下で待ってる事を伝えてってザック君は言ってたよ」
「え?わかった…?」
一体なんの様なのだろう。ザックの事だ。大声で鼓舞でもしてくれるのだろうか?
「来たぞ、ザック。なんの様だ?」
「待ってたよ、ケイ、あの時のリベンジだ」
あの時?なんの話だ…あぁ、あの時か。
冬の入りに、俺はザックと勝負した。勝ったのは俺だったのは覚えてる。ザックは威力は良いのだが、剣術が甘い。上から目線な評価になってしまうが。
「リベンジ……スタート!!」
剣を作り、急いで爪を作る。
「剣術を磨いてきたんだ!ここで……勝つ!!」
彼の一撃を受ければ受けるほど、隙が無くなっていくのが分かる。だが、今度は隙をなくす事を意識し過ぎて、威力がない。
「隙あり!!」
すぐさま背後に忍び寄り、首に爪を当てる。
俺の勝ちだ。
「っ〜!!」
声になってないが、悔しそうに頭を掻く。
「やっぱり、まだ勝てないか〜!!」
尻もちをつき、地面を叩く。悔しさの余韻がまだ抜けてない様子だ。
「ザック、君の助けもあって俺は学校でやっていけた、ありがとう」
手を伸ばし、ザックはそれを受け取る。
「ああ、こちらこそありがとう、ケイ!
ケイ・タケダの冒険譚、聞かせてくれ!」
友情が芽生えたのは間違いない……筈だが、具体的になんかあったか、と言われると特にない。
長い歳月がなんとかしてくれたのだから。
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「準備は終わった。出発だ!!」
ザルツは声高々に宣言する。見送りに来たザルツ先輩の友達……いや、女性が多いな、なんか、
ザルツ様〜!!て言ってる。なんだアレ。
「ああ……あまり気にしないでくれ、ファン?と言う奴らしい」
「暫く出番がないうちに何があったの!?」
「何言ってんのリサ?」
二人が話している間に、ケイは持ってた招待状を見る。セリーナ・ラフ・アルテミア。調べてみた所、評価はかなり高い。顔よし、スタイル良し…しか評価は無かったが。見た目はどうやら良いらしい。
「それが、君目当てのお貴族様、か」
ザルツ先輩が、ひょっいと手紙に視線を渡す。
「アルテミア家とは繋がりが無かったから、私もどんな人かは知らないのよね」
残念そうにリサが呟く。まぁ、一体なんなのだろうか…?
そして、貰った地図を見る。
これを見ると、不思議な世界だとしみじみ思う。
学校がこの世界の中心にある。物理的に。
そこから北、東、南、西に進むとそれぞれ街がある。
俺たちが向かう街は北の街。ネオニィシティに向かう。街の印象は……?
「ネオニィシティ?あそこは良い場所よ。御綺麗な貴族の街。あなたを招待した…彼女はそこにいるのは間違いないけど……一体どう言う事なのかしら?」
リサは頭を悩ませていたが、すぐ考えるのを辞めた。
まぁ、こっちには貴族×2だし多分大丈夫だろう。
そう思っていた。神の四天王の動向も気になる。
これからは世界情勢に目を向ける必要もありそうだ。
第一都市、ネオニィシティ。そこで待ち受けるの果たしてなんなのか…?
それよりもケイの頭を悩ませている要因があった。学校の記憶があやふやになる気がするのだ。思い出そうと思えばすぐに思い出せる。
だが、それについてはあまり気に留めなかった。
[視点は、セリーナ・ラフ・アルテミアに代わる]
「ケイ・タケダ……興味ある人間よね」
「同感です。魔法使いと、戦士の半身。私めも興味があります」
煌びやかな服に身を包んだ、いかにも貴族な彼女は
執事風の男と話していた。
彼に依頼があった。ハウ・ゲレーロには断られた為、消去法であいつにお鉢を回した。
「私の命を彼に賭けるべきか、見定めてやる。
覚悟して来なさい!」
不適な笑みを浮かべて、彼女はケイの登場を心待ちにしていた。
「お嬢様」
「なに」
「クッキーを焼いて来たのですが」
「たべる」
学園編:終
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