第10話 準備。
ケイは、元の世界に帰るために旅の準備をしていた。
何を持っていけばいいか…全然分からん。
「ケイー!!」
遠くからザルツの声。走って来たのだろう。息も絶え絶えだ。
「先輩?どうしましたか?」
キリッとしている先輩からは想像できない姿。
でも、急いで俺を探しているのならもしかして…
「僕を君の仲間に入れてくれないか!?」
頭をすごい勢いで下げる。その光景に焦ったケイは
すぐに頭を上げさせた。よく分からん奴があのザルツを……!?となっても困る。
でも、今はただひたすらに嬉しさが心を満たす。
こんな頼もしい人が仲間になるんだ。最高だろ。
「え…!!ついて来てくれるんですか!」
興奮で、声が大きくなる。ギリギリまでしつこく口説こうと思っていたところなのに、彼から頼んでくれるなんて……!!
「あぁ!!僕も、弟を探したいからね、君についていけばまた会える気がするんだ!」
ザルツのイケメン爽やかスマイル。これにやられた女子は多いだろう。
「それなら………入学しない方針って事で良いんですよね」
「問題なのはそこだよ、優秀な人材がよく分からない旅に出るから、入学しませーーん。はかなりまずい」
そうである。まぁ、それについては当たって砕けろで
セイト学園理事長に土下座するしかないか…
「そうだけど……ああ、そう言うことか。学園長の説得にはこの人を頼ろうと思っててね」
ケイの後ろを指差し、ケイは振り向く。そこには…
「私よ!!」
「リサ!?」
学園長の姪、リサである。彼女曰く、私にデレデレだからいける!との事。
「まぁ……ダメ元で行ってみるしかないわ!!」
自信満々だが、果たして……
[場所は理事長の部屋に…]
「ダメ」
交渉は十秒で終了した。実にあっけない。
「流石にさ、それはまずいのよ。優秀な人間を教育させずにそのまま世に放つなんて…」
「大丈夫です、理事長!!冒険者になるんで!!」
「…………………」
リサの意思は相当固いと判断した、理事長はケイに話を振る。
「トラブルがあって優勝者はハウ君とケイ君。二人だ。ハウ君が出て行った以上君をみすみす離したくない。それに、学校の面子もある。それは!理解しているね」
あまり自分を優秀だと思いたくはない。けど、俺たちベスト4勢を逃したくない。それはあの人の立場から考えたら理解できる。だが……俺のやりたい事は
一貫している。
「僕は家に帰りたいだけなんです」
全然理由になってない。それもわかる。だけど本心
「?どう言う事かな」
「俺は転移者です」
隠す理由もなかったし、ここで打ち明ける。
同情を誘おとしてしまっている自分に少々嫌悪感を覚えるが今は無視する。
「えぇ!?」
「何!?」
リサとザルツは驚いて、空いた口が塞がっていない。
常識としている事は知っているけど、まさかいるとは思わなかった。これがこの世界の常識。ケイはそれを知っていた。
「…………察するとこつまり、この世界ではないところに戻りたい。戻り方を探したいのにここで三年も待たされたくない。そう言いたい訳だな」
随分と察しのいい人だ…とケイは呆気に取られた。
もはや心を読んでいるのではないか……
「で、君は」
「僕は……」
ザルツに話を振る。弟を探す旅。そんな事をしたいと言うのなら確かにここにいるべきではない。と言う事を学長に伝えた。
「……と言う事です」
「……………………全く」
長いため息をし、重い口を開いた。
「わかった!ただし条件がある。一年は在籍しろ。それは絶対。我々の顔を立ててもらいたい。
例外だったハウ君はともかく、リサ君、ザルツ君。
そしてケイ君。君らはそれまでに準備を徹底する事だ。主にケイ君、君はこの世界についてどれくらいだ?」
「大体数ヶ月程度です」
「だったらこの世界の地理事情くらいは知っておいて損はないだろう。文句はあるかな!!」
「ありがとうございます!」
三人で頭を下げる。全く、こんな例外は初めてだよと愚痴を溢していたが、そんなに悪い人じゃない事をケイは知った。しかし一年か…短いようで長いだろうな………家に帰る為だ。仕方ない。
これからたった一年の学校生活が始まった。
次章:
学園生活編。
長い一年を二話でまとめます。




