【第五十九話】二日酔いの朝と、平安復興プロジェクト(エピローグ1)
「うぅ……頭が割れる……」
世界を救った翌朝。 僕を待っていたのは、感動の目覚めではなく、強烈な二日酔いだった。 昨夜の宴会で、鬼の酒(度数不明)を頼光に無理やり飲まされたせいだ。
「カケル、起きたか。だらしないぞ」
枕元に、源頼光が座っていた。 彼女はすでに身支度を整え、シャキッとしている。 この人の肝臓はどうなっているんだ。
「ほら、迎え酒だ。飲め」 「死にますよ!? 水をください!」
僕が這いずりながら起き上がると、屋敷の外から賑やかな音が聞こえてきた。 カンカン、トントン。 木槌の音。人の声。
「外、どうなってるんですか?」 「都の修繕だ。昨日の戦いで、あちこち壊れたからな」
縁側に出ると、そこは復興の現場だった。 だが、何かがおかしい。 大工たちが、なぜか整列して「番号札」を持っている。 そして、その指揮を執っているのは――
「はい、次のタスク! 三条の橋の補修! 優先度『高』です! 金時、資材搬入!」 「ういーッス! 丸太百本、持ってきたぜ!」
「大工チームBは、五条へ! 進捗率は夕方までに80%を目指してください! 遅れたら綱殿が『悲恋の詩』を読み聞かせに行きますよ!」 「ひぃッ! それは勘弁! 急げぇ!」
卜部季武が指揮台に立ち、巨大な黒板(工程表)を使って現場を管理していた。
「……季武さん、何してるの?」
「あ、カケル殿! お目覚めですか!」 季武が眼鏡を光らせる。 「カケル殿が以前教えてくれた『プロジェクト管理手法(アジャイル開発)』を導入してみました! 職人の配置を最適化し、タスクを見える化した結果、作業効率が通常の三倍になっています!」
平安の大工たちが、現代の工事現場のようにテキパキと動いている。 「報・連・相」が徹底されている。 SEの知識が、こんなところで役に立つとは。
「カケル殿。私の仕事ぶり、いかがですか?」 碓井貞光が、幽霊のように現れた。 彼女の手には、大量の「アンケート用紙」がある。
「被災した住民の『不満点』や『悩み』を聞き出してリスト化しました……。ネガティブな意見を集めるのは得意なので……」
「すごいよ貞光さん! それ、最高の『要望定義書』だ!」
僕の仲間たちは、いつの間にか優秀な「復興チーム」になっていた。 これなら、都はすぐに元通り……いや、以前より住みやすい街になるかもしれない。
「ふふ。私の夫(予定)の知恵が、都を救うか。誇らしいぞ」 頼光が僕の背中を叩く。
「痛っ! ……まあ、悪い気はしないですね」
僕は二日酔いの頭を振って、現場へ歩き出した。 「よし! 僕も手伝います! サーバー(都)のメンテナンスは、管理者の仕事ですからね!」




