【第五十八話】大宴会と、終わらない契約
シリーズ1部はこれで完結。残り3話はエピローグになります。読んでくれた皆さまありがとうございます。残りの3話もお楽しみください。
その夜。 源頼光の屋敷では、前代未聞の大宴会が開かれていた。 人間も、式神も、そして戦いに協力した妖怪たち(玉藻前の一行)も入り乱れての無礼講だ。
「カンパーイ!」
「うめぇ! やっぱ平和な飯は最高だぜぇ!」 金時が猪の丸焼きにかぶりつく。 「カケル殿、あーん♡」 綱が膝に乗りかかってくる。彼女は暴走時の記憶がないふりをしているが、積極性が三倍増しになっている。 「……今日の占いは『大吉』でした。逆に怖いです。明日死ぬんでしょうか」 貞光も、なんだかんだ言いつつ酒を飲んでいる。
「カケル様。お疲れ様でした」 玉藻前が、僕の隣で優雅に盃を傾ける。 「道満も退屈な男でしたわね。永遠の命より、こうして刹那を楽しむ方が、よほど贅沢ですのに」 彼女の尻尾が、僕の背中をくすぐる。
「こら玉藻! 私の席だぞ!」 頼光が割り込んでくる。 彼女の手には、紫色に発光するおにぎり(特製)が握られている。
「カケル、食え。精がつくぞ」 「いや、命が尽きますって!」
「ふふふ。……平和だね」
安倍晴明が、少し離れた場所からその光景を眺めていた。 彼の手には、修復された僕のスマホがあった。 画面はまだつかないが、彼はそれを興味深そうに弄んでいる。
「カケル君。この板は私が預かっておこう。いつかまた、君が未来へ帰りたくなった時のために、修理を試みてみるよ」
「……ありがとうございます。でも、急がなくていいです」
僕は宴会の中心を見た。 騒がしくて、乱暴で、暖かくて、愛おしい仲間たち。 現代の快適なアパートも、高速なWi-Fiもないけれど。 ここには、僕を必要としてくれる「居場所」がある。
「当分は、ここで残業することにしますから」
僕は清明に頭を下げ、頼光たちの元へ走った。 「おーいカケル! 早くしないと金時に全部食われるぞ!」 「今行きます!」
こうして、平安京を揺るがした「末法・システムダウン事件」は幕を閉じた。 筋肉ゼロの社畜SE・カケルの戦いは、これで終わりではない。 明日からはまた、金時の食費を稼ぎ、綱の暴走を止め、貞光を励まし、頼光の殺人料理を回避する、壮絶な日常が待っている。
けれど、今の僕には怖くない。 どんなバグも、どんなトラブルも、この最強のメンバー(と僕のSE魂)があれば、きっと乗り越えられるはずだから。
空には満月。 今度はバグることなく、優しく僕たちを照らしていた。




