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【第五十七話】青空の都と、落ちてきた社畜

「うわあああああッ!」


落下。 阿弥陀像(システムの中枢)が崩壊し、僕は遥か上空から放り出された。 眼下には京の都。 だが、そこにあるのは、もう赤黒い地獄ではない。 突き抜けるような青空と、鮮やかな紅葉に彩られた、美しい秋の都だ。


「カケルゥゥッ!」


下から、一筋の雷光が昇ってくる。 源頼光だ。 彼女は崩れゆく阿弥陀像を足場に駆け上がり、空中で僕の手を掴んだ。


「捕まえたぞ!」


「頼光さん!」


「もう二度と離さん! 地獄の底だろうが、システムの彼方だろうが、私はそなたを離さんぞ!」


強い力で抱きしめられる。 鎧の硬さと、彼女の体温。 生きてる。僕たちは生きている。


ドスゥン!! 僕たちは六条河原の砂地に、もつれ合うように着地した。 砂煙が舞う中、仲間たちが駆け寄ってくる。


「兄ちゃん! 大丈夫か!」 金時が泣きそうな顔で覗き込む。


「カケル殿……! よかった……!」 綱がへたり込んでいる。彼女の目は正常に戻っていた(暴走時の記憶があるかは不明だが、顔が真っ赤だ)。


「……生きてますね。残念ながら、また明日が来てしまいました……」 貞光が、いつものように(でも少し嬉しそうに)溜息をつく。


「システム正常化、確認しました! 道満の反応、完全に消失!」 季武がガッツポーズをする。


僕たちは空を見上げた。 降り注いでいたエラー文字は消え、穏やかな太陽が輝いている。 末法の危機は去った。 僕たちの「勝利」だ。


「……終わったな」 頼光が僕を起こし、肩についた砂を払ってくれた。


「はい。……あ、スマホ」


僕はポケットから相棒を取り出した。 画面にはヒビが入り、真っ暗だ。 電源ボタンを押しても反応しない。 道満との接続の過負荷で、完全に壊れてしまったらしい。


「……壊れたか」


未来との通信手段。現代知識の源。 それが失われた。 これでもう、僕は本当に「ただの無力な男」だ。


「カケル」 頼光が、僕の手から壊れたスマホを優しく取り上げ、懐にしまった。


「その板がなくとも、そなたはそなただ。私たちの軍師であり、料理番であり……私の、大事な男だ」


彼女はニカっと笑い、僕の背中をバシッと叩いた。


「さあ、帰るぞ! 腹が減った! 宴だ! 今日は私が最高の手料理を振る舞ってやる!」


「えっ、それは勘弁してください!」


「問答無用! 平和な世界で、私の愛(毒)を味わうがよい!」


僕の悲鳴と、みんなの笑い声が、青空に吸い込まれていった。

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