表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/61

【第五十六話】システム再起動と、人間という名のバグ

視界が真っ白に染まった。 上下の感覚もない。音もない。 僕は光の奔流の中で、ただ漂っていた。 ここは「システムの狭間」。 再起動プロセスが走り、世界が再構築されている最中の空間だ。


「……愚かな」


声が響いた。 光の中から、蘆屋道満の姿が浮かび上がる。 彼はデータ化が解け、半透明の幽霊のような姿になっていた。


「なぜ拒む。なぜ、不完全な肉体に固執する。老い、病み、傷つき、やがて腐る。そんな器に何の意味がある」


道満の問いかけは、純粋な論理だった。 効率を求めれば、彼の言う「電脳浄土」こそが正解なのかもしれない。 だが。


「意味ならあるさ。……非効率を楽しむことだ」


僕は答えた。


「腹が減って不機嫌になる金時。妄想を爆発させて暴走する綱。ネガティブすぎて周囲を巻き込む貞光。……そして、不器用な料理で殺そうとしてくる頼光さん」


脳裏に浮かぶのは、あの騒がしくも愛おしい日常だ。


「データになれば、それらは全部『ノイズ』として削除されるだろう。でも、僕たち人間は、そのノイズこそが『生きている証』なんだ」


「……ノイズ、だと」


「ああ。だから僕は、お前の完璧なシステムに、とびきりの『人間味バグ』を混ぜてやる!」


僕はスマホ画面の『実行(Enter)』キーを、親指で強く押し込んだ。


『システム更新:Humanity_Patch.Ver2.0』 『適用中……』


瞬間、白かった空間に色が戻り始めた。 汗の匂い。土の感触。風の音。 そして、仲間たちの呼ぶ声。


「ば、馬鹿な……! 私の美しい数式が……感情という泥で汚されていく……!」


道満が頭を抱えて絶叫する。 彼の体が、光の粒となって分解されていく。


「覚え……ておけ……! 人間がいる限り……カオス(混沌)は……消えぬぞ……!」


「望むところだ。そのカオスの中で、僕たちは泥臭く生きてやるよ」


ドォォォォン!! システムが完全に再起動した。 強烈な重力が戻ってくる。 僕は現実世界へと、真っ逆さまに落下していった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ