【第五十五話】システムの中枢へ、最後の突撃
巨大阿弥陀像の左腕を失ったことで、道満の表情に焦りが見えた。
「チッ……。バグった月が、あんなイレギュラーを引き起こすとはな」
道満は阿弥陀像の胸部にある「制御室」へと撤退していく。 阿弥陀像の胸が開き、中から無数のケーブルが伸びて道満と接続された。 彼自身が、この巨大システムのCPUになる気だ。
『システム同化率:100%』 『最終殲滅プログラム:起動』
阿弥陀像の残った右腕と、背中の後光(レーザー砲塔)が輝き出す。 これまでとは桁違いのエネルギー反応だ。
「カケル殿! まずいです! あれが発射されたら、都ごと蒸発します!」 季武が警告する。
「撃たせるか! 総員、突撃!」
頼光を先頭に、僕たちは阿弥陀像の胴体へ向かって駆け出した。 金時がママチャリを捨て、瓦礫を持ち上げて投擲する。 貞光が呪詛を撒き散らし、レーザーの照準を狂わせる。 季武がドローンで撹乱する。
「カケル! 道満の懐まで運んでやる! しっかり捕まっておれ!」
頼光が僕を姫抱きにした。 「えっ、ちょっ!」 「舌を噛むなよ!」
ドォォォン! 頼光が地面を蹴り、垂直に壁を駆け上がる。 阿弥陀像の巨体を、忍者のように駆け登っていく。
『排除……排除……』 阿弥陀像の表面から、迎撃用の小型アームが出現し、襲いかかってくる。
「邪魔だァッ!」 頼光は片手で僕を抱えたまま、もう片方の手で童子切安綱を振るう。 雷撃がアームを粉砕し、火花が散る。
「カケル! 道満の制御を奪うには、どうすればいい!」
「直接接続しかありません! 奴の胸にあるコアに、僕のスマホを突き刺して、修正パッチを流し込みます!」
「突き刺すのか! 原始的だが分かりやすい!」
頂上まであと少し。 だが、阿弥陀像の口が開き、極太のビーム砲口がこちらを向いた。
『サヨウナラ』
「しまっ……!」 回避できない。空中で足場がない。
その時。 空から黄金の光が降り注いだ。
「あらあら。わたくしの愛する都を、これ以上壊さないでくださる?」
九つの尾を持つ巨大な狐の影。 玉藻前だ。 彼女が展開した妖力の障壁が、阿弥陀像のビームを受け止め、拡散させた。
「玉藻!?」
「貸しにしておきますわよ、カケル様!」
玉藻がウィンクする。 最強の援軍だ。
「よし! 道は開けた!」
頼光が最後の跳躍を見せる。 阿弥陀像の胸部、道満が埋まっているコアの前へ。
「道満んんんッ!!」
頼光が僕をブン投げた。 「ええええええッ!?」
僕は空中でスマホを構え、道満に向かって飛んでいく。 人間ミサイルだ。扱いの雑さに泣けてくるが、今は感謝する。
道満が驚愕の表情で僕を見る。 「貴様……! データごときが、管理者に触れるなァッ!」
「データじゃない! 俺たちは生きてる人間だ!」
僕は叫び、スマホの充電端子部分を、道満の胸にある接続ポート(のように見える光の亀裂)へ突き刺した。
ガシャァァァン!!
『外部デバイス接続確認』 『管理者権限:上書き(オーバーライド)』 『実行コマンド:SUDO REBOOT(強制再起動)』
「な、なにィィィィッ!?」
道満の絶叫と共に、世界が真っ白な光に包まれた。




