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【第四十八話】秋の味覚狩りと、暴走する生態系

季節は秋。 食欲の秋だ。 坂田金時の胃袋が、新たな獲物を求めて唸りを上げている。


「兄ちゃん! 山だ! キノコだ! 松茸だ!」


金時の提案により、僕たちは京の北山へ「キノコ狩り」に出かけることになった。 メンバーはいつもの四天王+僕。 だが、山に入ってすぐに異変に気づいた。


「……なんか、植物のサイズがおかしくないですか?」


卜部季武うらべすえたけが、巨大なシダ植物を見上げて呟く。 普通の倍はある。森全体が、何らかのエネルギーで活性化しすぎている。


「これも道満の撒いた『バグ』の影響か……」


僕が呟くと、金時が茂みから飛び出してきた。


「うおおお! 見ろ兄ちゃん! 超デカい松茸があったぞ!」


彼女が抱えているのは、子供の身長ほどもある巨大なキノコだ。 もはや松茸ではない。松茸の形をした鈍器だ。


「金時、それ本当に松茸か? 色が蛍光ピンクだぞ」


「匂いは松茸だ! 食える!」


「待ちなさい金時!」 碓井貞光うすいさだみつが、暗い顔でヌッと前に出た。 「私が鑑定します……。毒キノコなら、食べて楽になれるかもしれないので……」


彼女はキノコの一部をちぎり、口に入れた。 全員が固唾を飲んで見守る。


「……んぐ。……あ、これダメです。幻覚が見えます。お花畑で死んだお婆ちゃんが手招きしてます……」


「ペッしろ! 吐き出せ貞光!」


貞光が白目を剥いて倒れた。 やはり、この森の生態系は狂っている。 ただの毒キノコじゃない。「即死級のエラーコード」を含んだバグ食材だ。


「ふん。毒ならば、私の料理で中和すればよい」


源頼光が自信満々に前に出た。 彼女は持参した鍋を取り出し、金時が採ってきた謎の巨大キノコや、赤紫色の木の実を次々と投入していく。


「頼光さん、それは中和じゃなくて『毒の上塗り』です!」


「黙っていろ。カケルのために、滋養強壮の特製鍋を作るのだ!」


グツグツグツ……。 鍋の中身が、ドス黒い紫色に変色していく。 そこから立ち上る湯気が、ドクロの形を作って消えた。


「完成だ! さあ食え!」


「嫌です! 絶対に嫌です!」


僕が拒否しようとしたその時。 ズズズズズ……! 地面が揺れた。 鍋の匂いに釣られて、森の奥から「ぬし」が現れたのだ。


それは、高さ5メートルはある巨大な「暴走猪バグ・ボア」だった。 全身からノイズを放ち、目は赤く発光している。


「グルルル……! メシ……ヨコセ……!」


「出たな食材! 今夜は猪鍋だ!」 金時がママチャリを構える。 「カケル殿! あの猪、データが破損しています! 物理攻撃が通るか怪しいですわ!」 季武が分析する。


「なら、これを使うしかありません!」


僕は頼光の作った「猛毒キノコ鍋」を持ち上げた。


「金時! 猪の口をこじ開けろ!」 「おう!」 金時が猪の突進を受け止め、強引に顎を開く。


「食らえ! 特級呪物・頼光スペシャル!」


僕は鍋の中身を、猪の口に流し込んだ。 瞬間。


「ギャアアアアアッ!?」


猪が断末魔を上げ、全身が紫色に発光し、そして――爆発四散した。 ポリゴン状の光となって消滅する猪。


「……すげぇ威力だ」 「即死魔法デスですね……」


全員が戦慄した。 頼光だけが「ふん、私の料理に酔いしれたか」と満足げに頷いている。 違う、そうじゃない。 僕たちは、この森で食材を手に入れるのは諦め、大人しくコンビニ(前回略奪した残り)のカップ麺をすすることにした。

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