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【第四十六話】蘆屋道満の誤算と、呪いのカウンター

「なっ……!?」


現実世界(六条河原)。 蘆屋道満が持っていたタブレット端末が、バチバチと火花を散らした。 ノイズの巨人が崩れ落ち、中から無傷の貞光と、僕たちが飛び出してきたからだ。


「馬鹿な……。あの深層心理の闇を、精神論で書き換えただと? あり得ん! 人間の心はもっと脆弱なはずだ!」


道満が狼狽する。 彼はデータを信じすぎた。人間の心は、0と1だけで割り切れるものじゃない。


「残念だったな、道満」


着地した頼光が、刀を突きつける。


「ウチの部下たちは、貴様が思うよりずっと図太くて、面倒くさい連中なのだよ!」


「おのれ……! ならば、これならどうだ!」


道満がタブレットを激しくタップする。 空間の亀裂から、新たな怪物が召喚された。 それは、現代の廃棄物ジャンクデータと平安の妖怪を合成したキメラ。 テレビの頭を持つ一つ目小僧、掃除機の胴体を持つ蛇、キーボードの鱗を持つ龍。


「行け! データ・キメラたちよ! 奴らを物理的に削除デリートせよ!」


怪物の群れが押し寄せる。 だが、今の僕たちに焦りはない。 完全復活した四天王の連携は、さっきまでとは別次元だ。


「金時、前衛! 物理で叩き潰せ!」 「おうよ! ジャンク品回収だ!」 金時のママチャリ・フルスイングが、テレビ小僧を粉砕する。


「季武、弱点解析!」 「任せてください! あの龍、背中の放熱板が脆いです!」 季武の指示に従い、綱が正確無比な斬撃を叩き込む。 「そこですわ! 恋の急所突き!」


そして。


「貞光! お前の出番だ! 溜め込んだ鬱憤をぶちまけろ!」


「……はい。私をいじめた罪、万死に値します……」


復活した貞光は、以前より数段暗く、そして強力なオーラを纏っていた。 彼女が印を結ぶと、戦場全体が薄暗い紫色に染まる。


「広域結界展開……『ネガティブ・ゾーン』」


ズーン。 重力が倍増したかのように、キメラたちの動きが鈍る。 いや、違う。 彼らのAI(思考回路)が、「やる気」を失っているのだ。


「……ダルい」 「……どうせ壊されるし」 「……再起動したい」


怪物の動きが止まる。 道満のタブレットにも警告が出る。 『システムエラー:モチベーション低下によりプロセスを実行できません』


「な、なんだこれは!? 私の式神たちが鬱になっているだと!?」


「これが貞光さんの新スキル『集団無気力化ニート・ハザード』です。ブラック企業ですら活動停止に追い込む、最強のデバフですよ」


僕が解説すると、道満は顔を歪めた。


「おのれ……! 社畜風情が、私の完璧な計画を……!」


「終わりだ道満! トドメだ頼光さん!」


「承知!」


頼光が跳んだ。 キメラたちが無気力で棒立ちになっている頭上を駆け抜け、道満の目の前へ。 雷を纏った名刀・童子切安綱が、彼の持つタブレット端末を狙う。


「その『未来の板』ごと、貴様の野望を断つ!」


一閃。 轟音と共に、道満のタブレットが真っ二つに両断された。


「ギャアアアアッ!」


道満が吹き飛ぶ。 同時に、世界を覆っていたノイズが霧散し、六条河原に元の色彩が戻ってきた。 草の緑、川の青、そして夕焼けの赤。


「勝負ありだな」


僕がスマホを確認すると、不正アクセスの警告は消えていた。 だが、吹き飛んだ道満はまだ消えていなかった。 彼は血を流しながら立ち上がり、壊れたタブレットの破片を握りしめて笑った。


「クク……クハハハ! やるな清明の犬ども。だが、これで勝ったと思うなよ」


彼の体が、ノイズと共に薄れていく。


「このタブレットは壊れたが……『データ』はすでにクラウド(天)へアップロードした。……やがて来るぞ。この平安京を終わらせる、真の『滅びの光』がな」


捨て台詞を残し、道満は空間の歪みへと消えた。 逃げられた。 だが、とりあえずの危機は去った。


「クラウド……? アップロード……?」 頼光たちが首を傾げる。 僕だけが、その言葉の意味を理解して背筋を凍らせていた。 彼は、この時代のデータを、どこか別の場所へ転送していたのか?


「ま、難しく考えるのは後にしようぜ!」


金時が、キメラの残骸テレビを興味深そうに叩いている。 「兄ちゃん、これ直したら映るか? アニメ見れるか?」


「無理だよ。……帰ろうか、みんな」


夕日の中、僕たちは屋敷へと歩き出した。 貞光が「私、生きてていいんですね……」と少しだけ笑い、綱が「吊り橋効果でドキドキが止まりません!」と僕に抱きつき、頼光がそれを引き剥がす。


いつもの日常。 だが、道満の残した「真の滅び」という言葉が、僕の胸に棘のように刺さっていた。 この戦いは、まだ序章に過ぎないのかもしれない。

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