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VSエルダースケルトン


アイリたちがスケルトンと戦っている一方で、日の丸ではクラウドを中心に警戒態勢に入っている。


「本当に敵は来るのかな?」


 スターヴィが、我のいる監視塔に顔を出してきた。


「まあ、来ないに越したことはないだろ」


 本当のところは、退屈だから暇つぶしにとちょっと期待していたのだがな。


「とか言ってホントは来なくてがっかりしてるんじゃない?」


「べ、別にそんなことはない。ただ、何もないから退屈なだけだ」


 スターヴィの言葉に一瞬動揺してしまった。我としたことが、まだまだ精神が未熟だな。


「それにしてもアイリちゃんはいつ帰ってくるんだろうね? 僕も一緒に行きたかったなぁ」


 スターヴィは残念そうに地上を眺める。

 まあ、それには同感だな。我も行きたかったし、外の世界を見てみたかった。だが、我はきっとチャンスはまた来るだろうと思っている。


「それより、森の警戒は怠っていないな?」


「誰に言ってるんだい? 今も常に部下と感覚を共有して、偵察しているさ」


 スターヴィは髪をかき上げ、自慢げに言った。


 サラッと簡単に言うが、こいつのやっていることは異常だ。我ら覇蜘蛛は進化と同時に共感覚という特性を獲得したが、共有できるのは精々一人が限界だ。しかしこいつは部下八人全員と常に共有し続けている。


「ホントすごいやつだな」


 我はボソッと呟く。


「ん? クラウド、何か言ったかい?」


「いや、別に何でもない」


 我ももっと精進しないとな。アイリ様の役に立つためにも、まずは強くならないといけない。この国を安心して任されるくらいに。アイリ様がここを離れるときの不安そうな顔は今も覚えている。あんな顔をいつまでもさせるわけにはいかない。


 ガシャン。


「おっ、こんなところにいたんだな」


 一人の亜人が扉を開けて入ってくる。


「何だ、デイルか。どうしたんだ?」


 デイルとはよく剣の稽古に付き合ってもらっている仲で、亜人族の中では一番気心の知れるやつだ。


「敵も来ないしアイリも帰ってこないから、ちょうど今がチャンスだと思うんだよ」


 チャンス……ああ、例のあれか。


「アイリ様がいない今が好機だが、肝心のアイリ様が何を欲しがるのか分からないと話にならないだろ」


みんなでアイリ様が国王になられたお祝いに何かプレゼントをしようと言う話になったのだが……。

 我はアイリ様の好みを全く把握していない。そういうものにはどうしても疎くなる。


「女だから、豪華な服とか宝石とかで喜ぶんじゃねぇのか?」


 さすがに単純すぎないか? アイリ様がそれを貰って喜ぶ姿は想像しがたい。


「デイルくんは分かってないな」


「何だよスターヴィ……ならお前は分かるのかよ」


「ふっ……当然だよ。僕はこの国の女性の好みはだいたい把握しているよ。もちろんアイリちゃんの好みもね」


 ……なんでそんな事知ってるんだ。もしかして、そんなことに力を使っているから共感覚が異常に発達したのか?


「す、すげぇ……じゃあさ、その……シールの好みとかも分かるのか?」


 デイルは少し恥ずかしそうにしながら言った。


 なるほどな。それにしてもシールか……あいつは天然だからなかなか大変な道のりになるだろうな。


「もちろんだよ! 教えてほしいかい?」


 怪しい笑みを浮かべるスターヴィ。何か裏がありそうだ。


「ああ、教えてくれ! もちろんこの礼は必ずする!」


 デイルはスターヴィを引き連れて監視塔を出ていった。


「全く……賑やかな奴らだな」


 我は監視塔から飛び降り、街の巡回へ戻る。


 



 


何よ、なんなのよこいつは。


「お姉ちゃん、冷静になってください。ムキになると相手の思うツボです」


 そんなことは分かってるけど、攻撃が全部かわされるからムカついてくるのよ!


「アイリ姉ちゃん、どうすればいいかな?」


 このスケルトンは、攻撃する瞬間に空間魔法で私たちの空間を微妙にずらしている。

 物理がだめなら魔法で……と思ったが、魔法まで別方向に飛んでいく始末。結果は同じ。


「とりあえず、あいつの魔力が切れるまでひたすら攻撃し続けるしか方法はないと思うわ」


「まさかここまで厄介とはな」


 擦り傷だらけのレインが息を切らしながら戻ってくる。スケルトンのカウンターを紙一重でかわし続けているがそう長くは持たなそうね。


「レインも聞いてたと思うけど、あいつの魔力さえ切れればこっちのものよ。それまでなんとか粘って!」


「任せとけよ。いつか災禍と戦うんだ。この程度のやつに負けててたまるかよ!」


 レインは再びスケルトンへ駆け出した。複数の分身を作り出し、スケルトンの注意を散らす。


「今度こそ当ててやるっす!」


 洞窟内にリューネの声が響く。しかし姿が見えない。

 レインの忍術、隠れみの術で背景と同化し、視認できないようにしている。


「これなら行けるかも!」


 見えない奇襲、レインの撹乱、そしてソアラの絶え間ない攻撃。完璧な連携で、相手の意識をリューネへ向かわせないようにしている。


「お姉ちゃん……フラグですよ」


 うっ……確かにそうね。こういうときは逆のことを言えば……。


「これじゃだめね。きっと気づかれて返り討ちにあうかもしれないわ」


 私はわざとらしく思ってることと逆のことを言ってみる。

 

「……」


 セブンソード(ナナ)から無言の圧力を感じる気がする。やめてよ、自分でも意味ないってわかってるから。


「そ、それより何か他にいい方法はないの? いつ魔力が切れるかも分からない状況で戦い続けるのって、精神的にもきついんじゃない?」


 私は誤魔化すように話題を変える。


「……おかしいですね。あのスケルトン、魔力を初めて見たときからほとんど減っていないような……」


「嘘でしょ……まさか魔力が無限とか言わないわよね?」


 もしそうならチートにも程がある。どう倒せっていうのよ。


「……もう帰りたい」


「お姉ちゃん、なんとか私が打開策を考えますので諦めないでください」


「済まない、僕が戦えていたら少しは役に立てたのに……」


 ロイドは悔しそうに下を向いた。

 戦えない自分がよほど悔しいのね。確かにロイドが戦えてたらもっと優勢だったのは事実だけど、戦えないのは仕方ないことだ。


「悔しい気持ちはわかるけど今は後回しよ。それより、一緒にあいつを倒す方法考えて」


「そうだね。あのスケルトンは、基本的に自分から攻撃してこないのが鍵だと思う」


 確かにそうね……あのスケルトンはあの場から全然動かない。いや、動けない?


「でもなんで襲ってこないんだろ?」


 ここを解明できれば勝ち筋が見える気がする。


 スケルトン……つまりアンデッド。太陽が弱点?

 いや、ソアラの光を浴びても平気だったから多分違うわね。


「クソっ、なんて速さだよ!」


 まずい。レインたちもそろそろ限界かもしれない。


「月光山……」


 ふと頭の中に月光山という名前がよぎった。

 

「何かいったかい?」


 月の光を浴びて咲くのが月光花。

 この部屋でも、月光花は月の光が当たる場所にだけ咲いている。そして、その光の中心にいるのがスケルトン。


 てっきり花を守っているから動かないのかと思っていたけど……もしかして。


『みんな、今から私の言う通りにして動いて』


 私は念話で、ひらめいた作戦をみんなに伝える。


 私のIQ5000が導き出した答えが、この局面をひっくり返すはず。


 そうして私は、スケルトンのからくりの種明かしを始めた。




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