古の戦士
更新遅くなりすいません。
最後まで書ききるのでこれからも私の作品を読んでいただけると幸いです。
私たちは順調に洞窟の中を進んでいる。時折現れる魔物もレイン達だけで十分対処できているし、これなら楽勝そうね。
「ねぇ、いつまで歩くのよー。疲れたんだけど」
ミレイが怠そうに私の前をふわりと飛んでくる。
確かにちょっと疲れたわね。もう二時間は歩いてるはず。
「クロエも足が疲れちゃったよ」
もう歩けないのか、クロエはその場にしゃがみ込んだ。洞窟に入ってから結構たってるものね。
「じゃあちょっと休憩しようか」
「そうだね、さすがに歩きっぱなしだからね」
私たちはその場で少し休むことにした。
「それにしてもダンジョンってこんなに長いのね。もっと早く見つけられると思ったわ」
正直、甘く見てたわね。まあ幸いにも魔物がそれほど強くないのが救いね。
「ねぇ、クロエも蜘蛛に変身できるのかしら?」
突然セレナがクロエに質問する。
「うん、できるよ! でも、あんまり蜘蛛の姿にはなりたくないの」
「そうなのね……まあクロエはそのままの方が絶対いいわよ。でも蜘蛛になれるなら私、クロエに乗りたいわ。リューネは早すぎるからもう乗るの嫌なのよね」
セレナは暇なのか一人で石を積んでいるリューネを横目で見る。
「うん! それならいいよ。ねぇママ……変身してもいい?」
「それはクロエの自由だから好きにしていいわよ」
本音は蜘蛛に変身してほしくないけど。蜘蛛嫌いの私にとって、あの大きさの蜘蛛はいつまで経っても慣れない。今だってリューネたちの蜘蛛化には抵抗あるのよね。
「ありがとうママ!──じゃあ今から乗ってみる?」
「えっ!? いいの!?」
ボフンッと音を立て、クロエは蜘蛛に変身した。
「すごーい! それがクロエの真の姿なのね! かっこいいわ!」
セレナは興奮しながら、あちこちをペタペタと触っている。
「あはは、くすぐったいよ!」
なんだかんだ仲良しなのね。クロエに友達ができてよかったわ。
「あの……」
どこからか声が聞こえた気がした。
「気のせい?」
あたりを見渡すが特に何もない。ソアラは携帯食料を食べてるし、リューネは石積みに飽きてレインと話し込んでいるし……まさか幽霊じゃないわよね。
「あの……ここです。アイリさん」
今度ははっきり聞こえた。しかもすぐそこから。
「い、いつの間に私の肩に乗ってたのよ」
私の肩の上にフィアが乗っていた。軽すぎて全く気付かなかったわ。
「すみません……少し話がしたくて……」
私が村で変装してから、フィアとは話していなかったから、ちょっと嬉しいかも。
「もちろん、いいわよ」
「この間はすみませんでした。正直私も、なぜあなたを見て涙を流したのか分かりませんの。ただ、その眼にはすごく見覚えがある気がして……」
「……多分人違いよ。私はこの世界に最近やってきたし、他人の空似じゃない?」
前に見た夢にも私に似た人が出てきたけど、あれは私なんかじゃない。でも、フィアやミレイが私と間違えてるのは、きっとその人なんだろう。
「そ、そうですわね。私が最後に記憶をなくしたのは二百年近く前のことですもの」
二百年って……今何歳なんだろう? 聞いたら怒られそうだからやめておこう。
「アイリの瞳は本当に珍しいんだよ」
突然ロイドが話に入ってきた。寝ていたと思っていたが起きていたらしい。
「どういうこと?」
確かに私の紫色の瞳は日本では珍しかったけど……そういえば、お祖母ちゃんからお母さんの瞳を受け継いだって聞いた事あるわね。でも異世界でも珍しいなんて変な偶然ね。
「この世界で紫の瞳を持つ者は──」
ガサガサッ!
「魔物が来たっすよ!」
リューネが素早く立ち上がり、大槌を構えた。反動で積み上げていた石が崩れ落ちる。あーあ、結構な高さまで積んでたからちょっと勿体ないな。
洞窟の奥からバトルウルフの群れが雪崩れ込んでくる。
「全く懲りない狼よね。っていうか何匹いるのよこの狼は……」
もう百匹は倒してるはず。まあ経験値も溜まるし、食料にもなるからいいけど。
「お姉ちゃん、どうやらこのダンジョンにほかの冒険者が入ってきてますね。目的が同じかもしれませんので急いだほうが……」
それもそうよね。じゃあ少し急がないと。
リューネたちは手際よく魔物を殲滅し、ナナが死体を吸収して回る。一連の動作がかなりスムーズになってきている。みんな、だいぶ慣れてきたわね。
「ねぇロイド、他の冒険者も来てるみたいだから少し急ぐわね」
「そうだね、先を越されて全部取られても困るしね」
さすがに全部は……いや、売るのが目的なら普通にあり得るわね。急がないと。
しばらく歩くと、月の光が差し込む空間に辿り着いた。
「綺麗ね……」
辺り一面に白銀の花が咲き、天井から少し穴が空いておりそこから漏れる月光を受けて神秘的に輝いている。
「あった! あれが月光花よ!」
セレナはなりふり構わず駆け出した。
……嫌な予感しかしない。見た限り周囲に魔物はいない……“はず”。
「アイリ姉ちゃん、なんだか不気味な感じがするよ」
ソアラも警戒している。もしかして、例の噂の怪物?
「へぇ~これが月光花か……なかなか綺麗じゃねぇか」
必死に花を摘むセレナにレインが近づく。
「これは貴重な薬の材料にもなるのよ。気安く触らないでね」
「な、別にお前のもんじゃねぇだろ。まあ俺は花なんか興味ないけどな」
その時だった。
月光の当たらない壁際の影から、何者かがゆっくりと姿を現す。
「レイン君!」
ロイドの叫びと同時に、レインはセレナを抱えて飛び退いた。
「あ! 月光花が!」
セレナは抱えられた衝撃で花を落としてしまう。
「そんなこと気にしてる場合かよ」
レインがいなきゃセレナは恐らく……。もしかしてレインはそれを見越してセレナの近くにいたのかな。
「レインくん、大丈夫かい?」
ロイドが駆け寄る。
「問題ねぇ」
私もレイン達のいた場所を見る──そこには、漆黒の襤褸をまとった骸骨が立っていた。
「何よあいつ……」
見ているだけで鳥肌が立つ。今までの魔物とは比べものにならない魔力を放っている。
「あれはスケルトン……しかも長い年月を経て進化したエルダースケルトン……」
ロイドはいつもの穏やかな表情ではなく、厳しい目でスケルトンを睨んでいる。
「ソアラ! 行くっすよ!」
「うん!」
リューネは即座に切り替え、ソアラと二人で駆け出す。
左右に分かれ、リューネの槌がスケルトンに叩き込まれる──はずだった。
だが槌はスケルトンの目の前に落ちた。
「えっ!? なんすか今の!?」
リューネも状況が掴めてない。
私も……わからない。ただ、何か“おかしい”。
間髪入れずにソアラの剣が閃き、スケルトンへ迫る──だが刃が触れる寸前、剣ごと弾き飛ばされた。
「っ……!」
ソアラは痛む右手を押さえながら後退する。
「ソアラ! 同一化するわよ!」
「うん!」
ソアラは剣を拾い上げ、ミレイと同一化した。光が部屋を照らし、空気が一変する。
「私も行ったほうがいいかな?」
ソアラとリューネ、さらにレインも加勢し三人で攻めるが、あの骸骨はほとんど動かない。
最小限の動きだけで、すべてを“見切っている”。
次第に三人の傷が増え、ロイドがフィアを呼び起こす。
「さすがにこれ以上は不味いな」
ロイドが同一化しようとしたところで、私は彼の腕を掴んで止めた。
「私がやるわ! ロイドは休んでて」
さすがに怪我人に戦わせるわけにはいかないし、ここまで私……何もしてないし。
最後くらいはいいところ見せないとね。
――次の瞬間、私は一歩前へ踏み出した。




