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月光山

すいません、投稿ペースが遅くなりました。でも、投稿はまだまだ続けていくのでこれからも気長に待っていただけると嬉しいです

 私たちは小休憩を取り終え、いよいよ月光山へと入る。


「し、しっかり守りなさいよ……」


セレナが私の後ろに隠れる。


「ソアラたちが頑張ってくれるから大丈夫よ」


なるべく戦闘はソアラたちに任せることにした。私は噂になっている“守護者”という奴と戦うことになりそうだし、それまでは力を温存しておくつもりだ。


ただの噂であってほしいけど……。


ふもとの大きな入り口をくぐると、中はひんやりしていて気持ちよかった。


「へぇ~、これが月光山か。これもダンジョンなのか?」


レインは先頭を歩き、周囲を見渡しながら聞いてくる。


「そうだね。月光山もダンジョンの一つだよ。まあ、すでに攻略済みだけどね」


「ねぇ、ダンジョンって誰かが作ったものなの? この道もそうだけど自然にできたとは思えないんだけど」


舗装こそされていないけど、入り組んだ道に魔法の罠やお宝……これが自然発生とはちょっと考えにくい。


「僕も不思議だと思うけど、これは“自然にできたもの”って言われているんだ。ダンジョンには最深部に“核”があって、それがダンジョンを形作っている。罠や宝箱なんかは、あとから冒険者とかが付け足したって噂もあるよ」


この形が自然にできたって……。ほんと、異世界って何でもありね。


「お姉ちゃん、前方から魔力反応があります」


「よっしゃ、ここは俺の番だな!」


レインは両手に短剣を構える。ここは好きにやらせよう。


「ねぇ、ずっと気になっていたんだけど……なんでスマホが喋ってるの? それがアイリのスキルなの?」


後ろにいたセレナが尋ねてくる。まあ、気になるよね。


「正直、私にも詳しくは分からないわ。でも、ナナはこの世界で誰よりも信用できるの。それにすごい便利なのよね」


ナナが何か隠しているのは分かっている。けど、いつも私のために動いてくれるし、ちゃんと理解してくれる。だから私はナナを信じている。本当の正体を言えない理由が何かあるんだろう。いつか話してくれるって私は信じてるけどね。


「そう……大事にしなさいよ」


セレナはそれだけ言って黙り込んだ。


そうこうしているうちにレインが魔物を倒し終えていた。すかさずナナが倒れている魔物を吸収して回る。


「へへ、こんなもんか」


レインは誇らしげに腕を組む。


「次は私の番ね!」


「えー、次はアタシがいいっす!」


これなら守護者がいたとしても、この三人に任せれば何とかなる気がしてきた。私はついていくだけだし、楽でいい!


「頼もしい限りだね」


後ろを歩くロイドが申し訳なさそうな顔をしている。


「ロイドさんはずっと戦いっぱなしだったんだから、仕方ないわよ」


セレナの話だと、あのロイドが窮地に追い詰められるほどの相手だったらしい。確か……フェイカーズ、だったっけ? 次々に厄介なのが出てくるわね。


「おっと……なにかあるな」


レインが壁に近づき、まじまじと見つめる。


「何かあるんすか?」


「ああ、魔法が仕掛けてある。通ると発動して、壁に潰されるとか矢が飛んでくるとか……そういう類の罠だろう」


よく分かるわね。私にはただの壁にしか見えない。


「面白そうっすね! ちょっと気になるっす」


「ちょ、待って!」


私の制止を無視してリューネがトラップを発動させる。途端、リューネの頭上の岩が落下してきた。


「きたっすね!――おりゃ!」


リューネは拳で岩を粉砕した。馬鹿力ってこういうのを言うのね。


「リューネお姉ちゃんすごいね!」


クロエが拍手をする。


「だめよクロエ。ああいうのを馬鹿って言うんだから」


セレナが呆れたように言う。


その後も私たちは魔物を倒したり、罠を避けたり(またはリューネが壊したり)しながらダンジョンを登っていく。ミレイも便乗して必死に罠を探すから余計に時間がかかってしまう。


それでも誰一人大怪我をせず順調に進めているのは、レインたちが純粋に強いからだろう。


ナナが逐一魔物を吸収してくれて、ここの魔物の強さも分かったけど、あの死蜘蛛に匹敵する個体もいるらしい。やっぱり私たち、あの時より強くなってるのね。


ここの魔物の一体に“バトルウルフ”という種類がいて、その持つ特性“空間把握”が非常に便利だった。一定範囲の空間を把握できる能力らしく、そのおかげでダンジョンを迷わずに進めている。



薬品のにおいが漂う薄暗い研究室に、二つの人影があった。


「戻って来てたのか」


「ああん?当然だろ。こんないいとこで辞めるわけねぇだろ」


白衣を着た、ぼさぼさの白髪が特徴の男――ブレインが、面倒くさそうにあくびをしながら答える。


「研究の成果はどうだ。例の亜人は再現できるのか?」


「おいおい、アーガストよ……俺が誰だと思ってんだよ。世紀の大天才ブレイン様だぜ? もうちょい時間があれば完成して見せるさ」


ブレインは大袈裟に両手を広げる。それを聞いて、わしは胸を撫で下ろす。その研究が成功すれば、わしの野望も実現するはず……。


「それはともかく、まさかボスまで来てるとは思わなかったぞ。わざわざこんなところまで来るってことは――もしや、例の異世界人を?」


わしは作業机に腰かけている黒髪の男に声をかける。


「ああ。お前が言っていた“異世界人”がどんな奴か気になってな。だが、タイミングが悪かったようだ」


ボスは書物に目を通したまま答えた。


「ボスが誰かを気にするなんて珍しいなぁ。また悪巧みか?」


「クックッ……それもありかもしれないな。聞いた限りの能力では、俺のいい駒になるかもな」


ボスは喉の奥で笑う。


不気味だ……。すでに狂っているはずのわしでさえ、背筋に冷たいものが走るほどの薄気味悪さを発している。


本当に、このままボスについて行くべきなのか……それとも……。


「ところでアーガスト、ドゥームとはまだ繋がっているのか?」


ボスは書物のページをめくる。相変わらず故郷の書物に執着があるようじゃ。儂には読めぬから何の書物かは分からぬがよほどすごいことが書いてあるのだろう。


「今はないも同然じゃな。せっかく苦労して専属宮廷魔導士にまでなったのじゃがな」


 かなり苦労したのじゃが、失ったものは仕方ない。

 

「……そうか。まあ問題はない。すでに手は打ってある。――俺が直接、奴らのところへ行って、もうじき完成するクローンを売りつけてきた」


「またずいぶんと大胆な……わしはいまだにボスのことを理解できん」


ドゥームに直接会うなど、普通はそう簡単にできぬ。普段冷静なくせに、たまに大胆な行動を取るからボスは予測不能じゃ。


「んなことより、クローンは結構な値で売れるんだろ? 何割か研究費に回してくれよ」


ブレインは研究のことしか頭にないらしい。こやつも、どこまで信用していいのやら……。


「分かっているさ。お前の研究は、俺の目的の“要”となるからな。――そういえば、そのうちリサとブラッドがこの近くに来る。お前に“鬼丸薬”を作ってもらいたいんだ。その材料のオーガのツノを、二人が取ってくる手筈になっている」


「鬼丸薬ねぇ。研究の合間に作っとくよ。それにしても、オーガなんてそう簡単に見つかるのかよ」


オーガは希少な魔物で、はるか昔に存在した伝説の幻獣アカオニの変異種だと言われている。その名の通り、強力な力と炎を操る能力を持つ。普通の冒険者ではまず勝てまい。


「リサとブラッドだぞ?二人の相性は悪いが実力はもうしぶんないから大丈夫だ」


「うげぇ……あの毒女、俺苦手なんだよなぁ。いちいち俺に毒吐いてくるし」


ブレインが嫌そうに顔をしかめる。


「それじゃ俺は行く……。今後も定期報告は怠るな」


ボスは転移の魔法石を使って姿を消した。


この先、世界は荒れる……。世界が混沌とする時、わしはどちらへ進むべきなのか。今はまだ決められぬな。



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