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仮面舞踏会


ロイドたちは舞踏会には参加せず、人気の少ない酒場で、万が一に備えてリューネとクロエそしてセレナと話し合っていた。


「ママ、大丈夫かな?」


クロエは心配そうに窓の外へ視線を向ける。


「大丈夫っすよ! アイリ様は最強っす!」


「あの人ってそんなに強いの? どことなく強そうな雰囲気は感じるけど……」


セレナは直接アイリの戦いぶりを見たことがないため、実感が湧かないのも無理はなかった。


それにしても、アイリは本当にみんなから信頼されている。まあ当然か。僕のスキルが反応するほどの人物なのだから。


「万が一に備えて色々準備はしてきたつもりだから、そんなに心配しなくて大丈夫だよ」


「それなら安心っすね。でも、アイリ様ならあっさり優勝して薬も取ってきてくれるっすよ」


……そううまくいくといいけれど。


「ママの踊り、見たかったなー」


クロエは残念そうに呟いた。


「そもそも踊れるのかしらね?」


「それじゃ、今から見に行ってみる?」

 

 僕は舞踏会に行くことを提案する。


「ほんと!?」


「でも関係者以外入れないんじゃなかったっすか?」


 リューネの言う通り今回の仮面舞踏会は招待されたものしか入れない。でも……


「大丈夫。これを使えば問題ないよ」



「ナギサ……どうして?」


目の前の仮面の女性がナギサだと、私は一目でわかった。

白いドレスに身を包んだその姿は、まるで氷の国の姫のようだ。


「君こそ、どうしてここに? ここがどこか、知っているでしょう?」


「知ってるわ。でも、この舞踏会でどうしても優勝しないといけないの」


セレナの母を助けるためにも、舞踏会で優勝して薬を手に入れなければならない。最悪、月光山まで取りに行く手段もあるが――。


「残念だけれど、あなたは騙されていると思うわ。この大会の商品に薬なんて存在しないもの」


ナギサの言葉に、私は衝撃を受けた。嘘かもしれないが、ナギサが嘘を付くとは思えない。


「じゃあ私たち、何のためにここに……」


せっかく準備したのに、全部無駄だというの?私は少しショックを受ける。


「参加した以上、特別な事情がない限り途中退場はできないわ。まんまと嵌められたわね」


「じゃあ、ドゥームがまた……?」


「違うわ。ドゥームは今とても忙しいからそんな暇はないはず。それに、しばらくはあなた達に手を出さないと話していたわ」


じゃあ一体、誰が何の目的で……。


「すべては明日の武闘会で分かると思うわ」


「もう帰りたいんだけど……」


「ちなみに、もう舞踏会は始まっているわよ。ほら、手を貸して」


 周りを見ると既にみんな踊っていた。いつの間に始まってたのよ!合図なんてなかったわよね?


ナギサに強引に手を取られ、私は踊らされる形になった。

今までまともに踊ったこともない私が舞踏会で踊るなんて、公開処刑でしかない。


「あっ、ごめん!」


早速、相手の足を踏んでしまう。


「お姉ちゃん、焦らず落ち着いてください。お姉ちゃんならできますよ」


そんなこと言われても……。


「それにクロエさんたちも見ていますよ」


「えっ!?」


慌てて周囲を見渡したが、姿はどこにもなかった。どこにいるのよ。こんな恥ずかしい姿見せたくないよ


「どうかしたの? それより、想像以上に下手なのね」


「!? し、仕方ないでしょ! 踊ったことないんだから!」


逆に、なんであなたはそんなに踊れるのよ!?

……まあ、どう見ても裕福な家の令嬢だし、きっと元の世界でも習っていたのだろう。


「私の動きをよく見て、合わせてみて」


そんなこと言われても……あ、そうだ。


「えっ? 何をするつもり?」


ナギサが戸惑った声を出す。


私は帯電化し、反射神経を一気に引き上げる。そして、ナギサの脳から発せられる電子パルスを読み取るように意識を集中させた。


「……嘘。踊れてる……何をしたの?」


「どう? さっきよりはマシでしょ」


いける……! ナギサの動きに体が勝手に合わせてくれる。


おかげで思考に余裕が生まれ、周囲を見ると――ソアラとレインが踊っているのが見えた。


そういえばソアラと踊る予定だったのに、私、勝手に離れちゃったんだよね。いや、どちらかというとソアラから離れていったのか?


「これ、どうやって踊るの? 全然わかんないよー……って、うわぁ!!」


ソアラは盛大に転んでいた。


「おいおい、しっかりしてくれよ。これじゃ武闘会に出られねぇだろ」


「うぅ、ごめん。でも、難しいよぉ……」


ソアラは上目遣いでレインに謝る。


 レインはすぐに目を逸らす。


「べ、別に……いいよ。ほら、俺がちゃんと教えてやるから……」


何だかんだ仲良くやれているようで安心した。もしソアラを泣かせるようなことをしたら、ぶっ飛ばしているところだった。


ホールでは美しい演奏に合わせ、数多の仮面ペアが優雅に踊り続けていた。



演奏が終わると、観客席から一斉に拍手が起こった。


なんとか踊りきった私は、色んな意味で疲弊していた。


「何とか終わったわね」


「最初はどうなるかと思ったけれど、これなら大丈夫そうね」


結果が出るまで、私たちはこのホールで豪華な料理をいただくことにした。


「どれも美味しそうね! 私たちの国も、これくらい作れるようにならないと」


まずは日本の料理を再現して、そのあとファストフードでも展開すれば儲かりそう。


「ここの料理は日本人が作っているのよ。同じように召喚された人で、料理に特化したスキルを獲得したらしいわ」


料理特化スキル……道理で美味しいわけだ。あとでナナに分析してもらおう。


「急だけど、あなた達のところにジェフは来ていなかった? 私が連れ帰ったあと、すぐにガレートを出ていったのよ」


じゃあ、クロエ誘拐は完全にジェフの独断……?

ん? 待って。ジェフはロイドにやられたあと逃げたのよね?

それなのにガレートに戻っていないってことは――まさか。


「もしかしたら、ジェフは日の丸に向かっているかもしれない」


「日の丸……あなたの国だったかしら? なら、こんなところにいたらまずいんじゃない?」


私はクラウドに念話を送る。


『どうしましたか、アイリ様?』


『ジェフがそっちに向かっているかもしれない。気をつけて。私もなるべく早く戻るわ』


『お任せください。今度こそ我が返り討ちにしてみせます』


その自信はすごいけど、正直不安だ。


『万が一ジェフが来たら、無理に戦わず逃げて時間を稼いで』


『承知しました。皆にも伝えておきます』


さて、本題はここからよね。薬も手に入れないといけないし、かといって日の丸を放置するのも危険だし……。


「アイリ姉ちゃん、難しい顔してどうしたの……あ! この匂い、もしかして……」


「どうしたんだ急に。この女と知り合いなのか?」


ナギサを見ると、ソアラに気づかれたことをまったく気にしていない様子だった。


「どうやらバレたみたいね――確か君はソアラ、だったかしら? 随分と鼻が利くのね」


自慢じゃないが、ソアラの嗅覚は犬並だ――猫なのに。


「ねぇソアラ、ジェフの匂いって覚えてる?」


魔力を消していてもソアラなら気づける。もしかしたら……。


「うーん……なんとなくなら。探してみる?」


「たぶん、この辺にはいないと思うけど――」


「いた! アイリ姉ちゃん、近くにいるよ!」


マジか……! まさか舞踏会に?


「どうやら本当ね……私も見つけたわ。灯台下暗しってやつね」


ナギサは片目を手のひらで隠していた。


「みんな、気づかないふりをして。相手の狙いが分かれば、こっちも動きやすいから……」


「あの時はよくもやってくれたな!」


ソアラァァ!! なんで話しかけちゃうのよ!


「……!? まさか、バレるとはな――こうなれば仕方ない。ここで貴様らを殺してやる!」


ジェフは隠し持っていた剣を抜き放つ。その瞬間、周囲の人々が悲鳴をあげた。


「最悪の展開ね……」


「お姉ちゃん、どうする?」


逃げるか戦うか――迷っている暇はない。


「アイリ、いつでも逃げられるよ」


「ママ、大丈夫?」


いつの間にかロイドたちが私のそばに立っていた。


「うん、お願い。――レイン、ソアラを連れてきてくれる?」


「任せろ!」


「僕が一瞬だけ隙を作るよ。合図したら魔法石を起動して」


「分かったわ――大丈夫だからね」


私はクロエの手を握る。


「じゃああたしはこっちっす!」


なぜか反対の手はリューネが握っていた。いや、魔法石が握れないんだけど……もう握られてるし。セレナはこっそり私の服を掴んでいた。……なんだかんだ、子どもなのよね。


ロイドはフィアを呼び出し、精霊化。レインがソアラを抱えた瞬間、ロイドがジェフに拳を叩き込む――が、拳の勢いがスキルによって反転し、ロイドは吹き飛ばされた。


「しまった……!」


「ちっ、仕方ねぇ――金縛りの術!」


レインが咄嗟に術を放ち、追撃に来たジェフの動きをわずかに止めることに成功する。


「今だ!」


「逃がすかぁーー!!」


私は合図と同時に魔法石を握った。淡い光が広がり、周囲を包み込む。叫びながら迫るジェフ。普通に怖い。


ロイドもすぐに体勢を立て直し、飛び込んできて何とか間に合った。


転移の光が消えた場所に、ジェフが呆然と立ち尽くしていた。


「覚えていろ……必ず殺してやる」

 ジェフはすぐさまこの場を後にした。

 




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