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逆転

気づいたらブクマや総合評価にポイントがついており、読んでくださった皆様には感謝してます。自分の作品読んでもらえるのはすごく嬉しいし、これからの励みにもなります。

まずは総合評価50を目指して頑張りたいです。

「日の丸王国……か。知らぬ間にずいぶん面白いことになっているではないか」

「そうなんですよ、ロザリーさん。だからお願いします――アイリさん達を助けてください!」

 私は深々と頭を下げる。胸の奥が熱カナル。ロザリーさんさえ来てくれれば全部、ひっくり返るんだ。


「頭を上げろ、セリカ。ガレートと事を構えるとなれば、そう簡単には決められない」

 低い声。ギルドマスター室の窓の外で、朝の風が鈴を鳴らす。

「――だが、私もそのアイリという異世界人には興味がある」


「じゃあ、助けてくれるんですか!?」

 思わず顔を上げる。けれどロザリーは、少しだけ申し訳なさそうに首を振った。


「悪いが、私が“直接”アイリという人間を助けることは出来ない」

「そんな……いえ、無理を言ってすみませんでした」

 踵を返す。――でも、行かなきゃ。せめて私だけでも……


「待て。どこへ行く気だ?」


「……助けに。アイリさん達を助けに行きます!」

 命令違反だろうと関係ない。アイリさん達を見捨てるなんて、私には出来ない。


「確かに私は“アイリ”を助けることは出来ないと言った。――だが、今あの森に他に誰がいる?」

「え?」

「私の“大事な弟子たち”が残っているだろう」

「あ……! じゃあ、もしかして……」

「私の弟子に手を出す連中は、どんな理由があろうと許さぬ。敵は“副団長ジェフ”と“異世界人が一人”、それにその他大勢――間違いないな?」

ロザリーは椅子から立ち上がり、腰の刀に手を添える。刃文が一瞬だけ、きらりと光った。


「はい! 他にもいるかもしれないですけど……聞いた限りではそれで間違いないです!」

 ロザリーは唇の端をわずかに上げる。


「なら、私一人で十分だ。――セリカ、案内しろ」

「はいっ!」

 涙がにじむ。これで勝てる。あとは、間に合えさえすれば――!



 その頃。アイリ達がナギサと斬り結ぶ一方で、テッド達は苦戦を強いられていた。


「この野郎ッ!」

 怒り任せに剣を振るう。が、すべて受け流される。剣圧が空を裂き、木々の葉がばさりと舞った。

 ――差がありすぎる。


「月刀姫のお気に入りとはいえ、所詮は駆け出しの冒険者か」

 目つきの鋭い緑髪の小柄な男――ジェフ=レイダースは、冷え切った声音で続ける。

「その黒い炎は凄まじい力を秘めている。だが全く“使いこなせていない”。これでは話にならん」


「うるせぇ! お前らみたいな勝手な連中に、負けてたまるかよ!」

 アーロンが地を叩く。大地が隆起し、ジェフの足元を崩す――しかし、届かない。


「身の程を知れ」

 閃き。ジェフの一撃が目の前まで迫る。


「……アーロン!?」

 アーロンが割り込み、剣で受け止めた。金属が軋み、火花が散る。


「やはり、“異世界”というのは厄介な力を持っているな」

 その隙に、俺は黒炎を叩き込む。至近距離――外しようがねえ!


 ……はずだった。


「テッド!?」

 アーロンの叫び。灼熱。視界が白く飛ぶ。

 ――なんで俺が燃えてんだよ!?


「テッド、しっかりしろ!」

「クハハハ……惜しかったな。俺でなければ、致命傷は与えられたかもしれない」

「何をした!」

「そのくらい、自分で考えるんだな」

 ジェフの目が愉しげに細まる。さっき放った黒炎――“軌道を返された”? いや、それだけじゃねえ。熱そのものが、俺の方に“流れた”感覚……!


「頑丈な奴だ。――それだけ斬られても、まだ立てるのか」

「頑丈さだけが……僕の取り柄、だから。――この程度で、倒れるわけには」

 アーロン。お前はそう思ってるかもしれねえが――俺たちは、それだけで仲間にしたわけじゃねえんだぞ。


『次は、誰かのために命を張れるような奴に生まれ変わるんだ』

「……っ!」

 頭の奥で、誰かの声、記憶の残滓が流れ込む。だけど今はどうでもいい。動け。動け――ッ!


 ーー動くぞ!?肋の奥で熱がうねり、傷が塞がっていく。理由は分からねえ。だが今は、それでいい。


「食らえ――黒龍双!」

 二つの黒炎が、うねる龍となって走る。さっきまでの比じゃねえ火力だ!


「ほう。空恐ろしい威力だ。月刀姫が飼うだけはある」

 ジェフは微動だにしない。

「――だが、残念だが“俺には効かん”」


 次の瞬間。二体の黒龍が、くるりと向きを変えた。


「嘘だろ……どうなってやがる!?」

「テッド! 僕が食い止める!」

「やめろ! 死にてぇのか!」

 こいつは、いつもそうだ。誰かのために、自分が傷つくことを迷いなく選ぶ――バカ野郎だ!


「僕が、テッドの炎なんかで死ぬと思ってるのか」

 アーロンは俺を掴んで遠投し、黒炎を一身に受ける。世界が黒く震えた。


「馬鹿野郎……」

 よりによって、俺の攻撃で――。


 やがて黒炎が薄れていく。

「アーロン!?」

 倒れ伏す巨体。けれど、息はある。


「クハハハ。あの炎を受けて命があるとはな。本当に“頑丈”な奴だ」

「テメェ……ぜってぇ許さねぇ」

「お前ごときが、一生俺に勝てることはない。――ほら、行くぞ」


 双剣が閃く。速いすぎて見えない。勘で捌くのが精一杯だ。――このままじゃ、ジリ貧だ……。


「どうした。避けてばかりでは、勝てんぞ」

 歯噛みする。勝てねえ。今の俺じゃ、どう足掻いても――仕方ねぇ、あんまりこういうのは使いたくなかったけど。


「本当に逃げてばかりだな。戦う気がないなら、もう終わりに――」

「かかったな!」

 足元が抜ける。アーロンが仕掛けていた“落とし穴”。ジェフが落ちた刹那、俺は黒炎を叩き込む。


「こんな小細工で俺を倒せると?」

「焼け死ね――! ――ッ!?」

 黒炎が空に逸らされた。やっぱり、こいつのスキルは――“反転”!魔法なんかを跳ね返すスキルなんだ!


「ぐはっ!」

 鳩尾に衝撃。視界が跳ねる。


「油断は禁物だ。ここは戦場だぞ」

 殴り飛ばされ、土を噛む。


「さて、早く終わらせるか。そろそろナギサも“女”を捕まえてくる頃だろうし――」

 その時、ジェフの動きが止まった。肩口に、銀糸が絡み付く。


「……どうやら、こっちに来て正解だったみたいだな」

「クハハ。粘着糸か。驚いたぞ、蜘蛛まで飼い慣らしているとはな」

 扉から現れたのは、クラウド。冷たい眼が、獲物を見据える。


「悪いな、テッド。あっちはリューネとスターヴィで足りそうだ。こいつは――我がもらう」

「クハハハ。蜘蛛ごときが、俺に勝てると?」

「悪い。……あとは頼む」

 安堵が全身の力を抜いていく。――頼む。ロザリーさんが来るまで、粘ってくれ……!俺は大庭で意識を失う。



 私は大広間へ走る途中で、頬に冷たいものが触れた。

「……雪?」

「お姉ちゃん。近くにいます」

 すぐに帯電化した。空気がピリつき、足元の石畳に白が降り積もり始めた。


「安心していいわ。――あの子は、殺していない」

 通路の影から、ナギサが歩み出る。吐息が白い。


「うそ。ソアラが負けたの?」

 精霊と同一化すれば、私より強いはず――。


「そうね。私の方が“ずっと”強いから」

 淡々とした声。氷の女神みたいな顔。

「それより――あなたはこの戦いに、“ガレート”に勝てるの?」


「勝てるかどうかじゃない。勝つのよ! 負けたら、何もかも終わりだから!」

 セブンソードを握り、踏み込む。刃が稲光のように走る。


「……私たちの五百の軍勢は、ほぼ壊滅状態」

 静かに告げるナギサ。

「ジェフを相手していた二人は瀕死――だったけれど、一人の男が助けに入り、形勢が変わり始めている。――それでも、“私一人”で、すべてを覆せる」


 足が止まる。何を……言って――。


「あなたも分かっているはず。どれだけ攻撃しても、“私には当てられない”」

「だから諦めろって言うの? ふざけないでよね!」

「それなら、安心したわ」

 ナギサの瞳が、わずかに光を帯びる。

「あなたが本気でガレートに勝つつもりなら――“見せて”。あなたの力を」

最初は毎日出せてたのですが、やっぱり毎日ってなかなか難しいですね。2日に一回はなんとかキープしたいと思ってる所存ですので何卒温かい目で見守ってくださると幸いです。

これからはTwitterじゃなくてXでも発信していこう思ってます。

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