新しいゲーム機!
[前回のあらすじ]
皆で肝試しをしたよ! なんか変な落とし穴とかに落とされたけど、あれは結局誰の仕業だったのだろう? まぁそんなことは一旦置くことにしよう。……そして、大変な一日を乗り越えて、朝がやってきた!
ピピピピ…
俺は7時30分にかけていたアラームで目が覚める。
「…今日一日も頑張るか。」
昨日は散々な目にあった。
入団を認めてもらえなかったり、死にかけたり、さらには肝試しで落とし穴にも落とされるなんて。
…最後のは今日だけど。
俺はゆっくりと着替えをしたのち、
ゆっっくり階段を下り、ゆっっっくりとリビングへと向かった。
まだ誰も起きていないようだ。
それもそのはず、俺らが寝たのは午前3時30分前後。
こんな早くに起きている方がおかしいのだ。
まぁ俺は、社畜人生で寝る時間がこれくらいなんてことはよくあったからいつも通り起きることができた。
俺は冷蔵庫の隣にあったパンがたくさん入っているバケットを漁る。
中からおいしそうなパンを取り出してダイニングテーブルで一人もしゃもしゃ食べる。
……静かだな。
あれくらい騒がしい日も、悪くないかもな。
…今日は何をしようか。
そう思いながらテレビをつける。
『今日の一押しはこのゲーム機! 今日から発売で、お店の前には既に開店待ちの人が並んでいるお店もあります! 今すぐ買いに行かないと売り切れてしまいますよ!』
朝のニュースでそんなことがやっていた。
ゲーム機、か。
子供の頃以来まったくやっていないな。
……久しぶりにやりたくなってきたな。
「よし決めた。今日はこれを買いに行くぞ。」
一番近くのショッピングモールは…
10時時開店か…
だいぶ待つことになるな。
売り切れる可能性もあるから、30分前くらいには行っておきたいな。
そう思い、飯を食べ終わった俺は自分の部屋へと戻る。
そして、部屋についている物置の中をガサゴソと漁って、やっとのことでカバンを取り出した。
そのカバンの中に財布を詰めて、時計をちらりと見る。
……まだ8時か…
でも、早く行っておいて損はないはず。行こう。
俺はそう決心して、部屋から出ると一階へと降りた。
「あれ? 青空くんもう起きてたの?」
リビングへと到達すると、そこには音色がいた。
ダイニングテーブルに座って一人で朝食を食べていた。
「そうだね。えっと、今からちょっとショッピングモールに行ってこようと思ってね…」
俺は頬を人差し指で軽く搔きながらそう応えた。
「え? まだ8時だよ?」
キョトンと首をかしげながら音色が疑問を投げつけてきた。
勿論普通ならそう疑問に思うだろう。
だって開店時間の2時間前なんだもの。
「いや、ちょっと買いたいものがあってね… 並んででも絶対に手に入れたくてさ。」
「へぇー…」
音色は朝食の菓子パンをもしゃもしゃ頬張りながら相槌を打った。
「じゃ、行ってくるよ。」
俺は音色に一時の別れを告げ、玄関へと向かう。
「あ、ちょっとまって!」
その時、後ろから音色の声が聞こえた。
「どうしたの?」
俺は疑問を投げつける。
「いや、私も皆の食料を買わないとだから、ちょっと待ってて。一緒に行こう。」
音色はそう言いながら二階にある自分の部屋へと向かっていく。
別に買うものを言ってくれれば俺がついでに買いに行くんだけどね…
買い物担当は音色なのかもしれないし、
謎のプライドで担当なんだからほかの人に任せてたまるかみたいな感じなんだろうね。きっと。
別に俺と行きたいってわけじゃないんだろうね。きっと。
そんなことを考えているうちに、音色が支度を済ませて戻ってきた。
時間にして10分弱だろうか。
だいぶ急いできてくれたのだろう。
とりあえず感謝しよう。
「ありg」
「私買い物当番なんだけど、他の人に自分の担当を任せるっていうのは私のプライドが許さなくて… 待っててくれてありがとう! さぁ行こう!」
俺の感謝の言葉が遮られてしまった。
しかも、先ほどの淡い期待までもが打ち砕かれてしまった。
もうこんなこと考えるのはやめにしよう。
そう心に誓ったのだった。
現在時刻は8時30分ちょうど。
俺と音色はショッピングモールの西側の方の開店の列に並んでいた。
運よく誰も並んでいなかったので、一番前に並ぶことができた。
東側にも入口があるのだが、今日はゲーム機が売っているお店が近い方の西側の入口で入ることにした。
速く来たおかげで新作ゲーム機が購入できそうだ。
その時、
ドゴォッ
と爆音が轟いたと思うと、俺達の真後ろに何かが飛び降りてきた。
「抵抗団… 殺ス!」
もしかして反社会抵抗軍ですか…?
俺は何でこうもついていないんだ!
俺は戦闘態勢に入る。
「オ前? 抵抗団?」
俺の方を見て反社会抵抗軍のやつは首をかしげる。
「そうだよ! 今からお前を倒す、抵抗団の隊員さ!」
ちょっとカッコつけてそんなことを言ったが、虚勢である。
足がすごいガクブルしているけれど、関係ない。
応援が来るまで時間を稼ごう。
「音色! ちょっと応援呼んできてくれ!」
さっきあんなことを豪語したのに、それがすぐに虚勢だったとばれる様な発言をかました。
多分この矛盾に気づくやつはいないだろう…
…?
「音色?」
音色が動かない。
声をかけたのに、全く動こうとしない。
耳を両手でふさいだ状態のままうつむいている。
「どうしたんだ? 頭でも痛いのか…?」
その時、俺は脳内にとある記憶が浮かんだ。
『大きな音、特に花火の音が最も嫌いなので、絶対に彼女の前では大きな音を出さないでください。』
”大きな音”!!!
嫌いなこと。それは誰にでもあるだろう。
目の前で自分の”嫌いなこと”が起きてしまったのだ。動けないでも無理はない。
とりあえず音色を端に置いておこう。
「音色、動けるか? 俺がおぶって端においてやろうか?」
返答はない。
もうこれは無理矢理おぶって端に置かないと…
パァァァァァン!!!!
その時、また大きな音がした。
反社会抵抗軍がいた方を見る。
…それは、なんとも言葉にしがたい光景だった。
反社会抵抗軍のやつが爆ぜて、あたり一面が血の海になっていた。
……どういうこと?
「……こ、怖かったぁ…」
音色がそう言いながらその場に倒れこんだ。
「おい、これ…」
「…あぁ、これね。私の抵抗力。私は大きな音を聞くと、それの発生源を音の力で爆ぜさせることができるんだよ。…大きな音を聞いてから44秒一歩も動かずにとどまっていると、発動できるんだよ。もちろん一日に何回も使えるけど、意識を失うととどまっていても効力はないんだよね。」
呼吸を整えながら音色はゆっくり立ちあがる。
「肩かそうか?」
俺はヨロヨロ歩きの音色に問う。
もちろん変な意味はない。
「いや、いいよ。私は自分で歩けるから!」
…そうなのか。
「疲れているだろ? ちょっと休んだら?」
「いや、もう大丈夫だよ! 今の戦いで列から抜けちゃったから、最後尾まで並びなおすよ!」
「お、おう。」
そうして俺達は最後尾に並びなおした…。
「おいおいおいおいマジかよぉ…」
最後尾に並んだから、開店から店内に入るまで結局それなりに時間がかかってしまって、新型ゲーム機は売り切れていた。
なんてことだ。
反社会抵抗軍、許すまじ!!!!!
俺は涙目になりながら、音色の買い出しを一緒に行った。
会計を終わらせ、俺が家に帰ろうとしたとき、音色が言った。
「あ、今千円の購入で一回の抽選ができるみたいなイベントやってるみたいだよ! 一等は青空くんが欲しがっていたゲーム機だよ!」
「よしやろう。三回できるね。先引いていいよ。」
その話を聞いて俺は即答した。
ちょっと早口になっていたかもしれないがしょうがない。
今俺は、それくらい興奮しているんだ。
「え? いいの? じゃあひかせてもらうよ!」
俺は運が悪いからね。
音色にちょっと引いてもらおうかな。
一回目
ガラガラ、ポン。
「大当たり―!!!」
ガラポンのイベントの責任者っぽいおじさんがそう叫んだ。
何!?
やはり音色にやらせて正解だったか!!!
何が当たったんだ!?
「残念賞のティッシュだよ!」
俺はこのおじさんのことが嫌いになってしまった。
二回目
今回も音色にやってもらう。
俺が引いてもどうせ残念賞のティッシュだけだろう。
頼む音色!
ゲーム機を!
あててくれ!!!!
ガラガラ、ポン。
「大当たり―!!!」
今度こそどうだ!?
「残念賞のティッシュだよ!」
俺はこのおじさんのことが大嫌いになってしまった。
三回目
三千円買い物をしておいてよかった。
三回もガラポンを引ける。
…ラストだけどね。
ラストも音色に引いてもらおうと思っていたのだが…
「ラストは青空くんが引いていいよ!」
音色がそんなことを言ってきたので、仕方なく、仕方なく引くことにした。
ガラガラ、ポン。
「大当たり―!!!」
もう俺は惑わされない。
どうせティッシュだろ?
「特等賞のクルーズ船旅行二泊三日六人分のチケットだ!!!!!」
…なんだって?
特等賞?
今欲しいのはそれじゃねぇんだよ!!!!!
……いったん心を落ち着かせよう。
状況をよく考えるんだ。
クルーズ船旅行? それはそれで楽しそうだな。
というか、六人分なんて珍しい。丁度俺らの部隊の人数じゃないか。
俺が欲しかったのはゲーム機だけど…
「え!? 旅行券!? やった! ちょうど六人分だし! みんなで一緒に行こうよ!!!」
…音色が喜んでいるようなのでよしとしよう。
「そうだな。みんなに聞いてみよう。」
俺はそういうと、チケットを受け取り、音色とショッピングモールを後にした。
…………今日のところは見逃してやるよ、ゲーム機。
俺達が家に帰るころには12時を過ぎていた。
昼飯も買ってきているので、それを食べようとダイニングテーブルに向かうと、もうみんなさすがに起きていた。
そしてテレビに目を向ける。
「!?」
信じがたい光景が目に入ってくる。
そこには、翔汰・琉生・琥太郎・瑠実の四人で、俺が追い求めていたゲーム機で遊んでいるじゃないか!
「そのゲーム機、どこから…」
俺は考えるより先に疑問を投げつけていた。
それに琥太郎が応える。
「え。これ、今日普通に近くのショッピングモールに行って買ったけど。」
…は?
「西側じゃなくて東側の入口から?」
「うん。」
なんだって?
だから反社会抵抗軍に合わずに俺の欲しかったゲーム機を買えたのか!
あーなるほど!
…
「お前が買ったのかぁぁぁ!!!」
俺は叫んでいた。
怒りと歓喜の感情がいろいろぐっちゃぐちゃになっていた。
皆がなだめてくれたおかげでなんとか収まったが、今度からは感情に身を任せるのは気を付けよう。
また失敗しないように心に誓ったのだった。
最近心に誓うことが多い気がするが、勘違いだろう。
そう思いつつ、俺と音色もゲームに参加し、結局夜遅くまでご飯を食べずにぶっ通しで遊んだのでした。
八回目の投稿です。
今回は結構話が長いですけどご了承ください。
次回から二章の本格的な内容に入っていくつもりです。
これからも不定期に投稿を続けていきますので、楽しんで読んでいただけると嬉しいです!
今後ともよろしくお願いします!