第三十話 立方体の部屋!-②
衝突。
とてつもない音を立てて、藍と敵が衝突した。
通常の人間ならば、この速度での衝突を受ければ死は必至。
しかし、敵は、大きさを小さくした大量の部屋を自身の周囲に纏わせていたため、衝撃を和らげていた。
それでも、致命傷を負う。
突然の衝撃に驚き、そして、現状を把握できていないように見える敵に向かって、藍は連撃を食らわせる。
視認不可であるその連撃は、敵を粉砕する。
粉微塵となることは必至である。
血反吐すら吐く隙を与えず、敵を消滅させることに成功する。
それと同時に、そいつの能力で存在していたであろうこの広い空間も消滅する。
消滅した場所は、天空であった。
地面がとてつもなく遠い位置に見え… 否、見えすらしない。
ほとんど宇宙である。
先程合った能力は、「地球」判定となっていたので、地球と同じ重力が発生していたようだが、今は違う。
酸素すらない。重力すらない場所である。
ここからどうやって地上に戻るか。
…藍ならば、余裕であろう。
現在一人である藍は、能力によって力が活性化している。
そのため、数瞬あれば地球には戻れる。
しかし、他の人たちが不安である。
自身だけが飛ばされたわけではないだろう。と、憶測をたてている。
その人々を元の位置に戻すことも必要となってくる。
目につく範囲でも数人、確認できる。
自身の能力で全員を連れ戻ることができれば行うのだが、能力が能力で、一人でいる時にしか発動しない。
現に今、人が周囲にいることを確認できたため、能力が弱くなっている。
非常にまずい状態である。
藍は思考を巡らせる。それはほんの数瞬のできごとである。
すぐに可能性を閃く。ここに移動させた奴の能力だ。
ここに移動させることができたのは、先ほど倒したやつの能力とは別であるはず。
その二つは全く違う能力。一人が持つことができる能力は、一つ。
衣央のような人物は、「身体強化」というひとくくりであるため、一つの能力と換算する。
しかし、「物質を増やす」と「物質を移動させる」は異なるもの。
だからこそ、その能力発動者を発見して、強制的に能力を使用させるのが手っ取り早いのだ…
多分地球上の安全な場所にいるはずである。
ほとんど憶測であるが、それしかもう可能性がないのだ。
それからまた数瞬悩んだが、それ以上の案が思いつかなかったので、即行動に移す。
少しずつ地球に近づくにつれ、他の人の気配が消えた。
能力がさらに力を増す。
地球上にいる人を人だと認識しないくらいの高さから高速移動をして、能力を使っていそうなやつを捜索する。
…ほとんど不可能かもしれない。
せめて、せめてだが、我々に敵対しているという敵意が感じられたなら―――
♢ ♢ ♢
数秒前———
衣央は宇宙空間に放り出されていた。
何が起きたのかは理解できていない。
しかし、ここがどこかなのか、そして「死」が迫っているということは一瞬で理解する。
生物は「生」を渇望する。だからこそ、こういう奇跡が起こったのだ。
何もわからず能力を発動したとき、三個同時に風船が召喚された。
そして、能力が発動する。
一つは「能力付与」
一つは「移動速度上昇」
一つは「条件絞り有り敵意感知」
移動速度上昇は、まあ、外れでありおまけでもあるだろう。
しかし、二つ、揃うべきものがそろう。
一瞬にしてすべてが発動される。
この世に存在するすべての物にそれが付与された。
それは、一瞬の出来事だった。
これの発動により、藍が瞬時に敵を発見し、強制的に能力を発動させる。
簡単に言うと、脳をいじくったのだ。
そのおかげで、阿鼻叫喚していた隊員たちは全員地球へと戻ることができた。
死を確定したものだと思って、もう黙りこけていた隊員数人のみの犠牲で済んだ。
今回の戦いは、抵抗団の勝利で、いいだろう。
しかし、これはまだ、恐怖の序章でしかなかったのだ…
もう三十話か…って感じです。
結構休んじゃったりしてますけれど、もうこんなに時が経過していたんですね。
時の流れは速いなって思います。一日は72時間でいいと常々思ってます。
これからも頑張って投稿を続けるので、これからもよろしくお願いします!




