第十話 二泊三日のクルーズ船旅行!-④
一日目 午後8:41 [翔汰]
「ね、ねぇ。もうやめてっ…」
涙を流しながら後ずさりする敵を目の前に、俺は抵抗力を発動していた。
俺は数100人いた敵の軍勢を一人で全員倒しきっていた。
残るはこいつだ。
「じゃあ、本当のことを教えてもらおうか? 皆はどこにいるんだ?」
俺は問う。
「いやっ、知らないっ、僕は全員死んだって聞いたから―――」
バシッ
俺は自分の抵抗力でこいつをはたいた。
「本当のこと言うまで、少しずつ痛めつけていくからな。」
俺は抵抗力を再発動する。
使いすぎは良くないのだが… まぁこれくらいなら全然大丈夫だろう。
「本当に知らないんだよっ」
泣きながら、声を震わせながら最後の敵がそう叫ぶ。
チッ、本当のこと言わねぇのなら…
俺は再度思い切り抵抗力を使ってこいつをたたく。
「ううっ、えぐっ」
うるさいな。本当に。
何にも言わないのなら、コイツも始末してしまえば―――
その時、この部屋の壁が思い切り崩れ落ちた。
俺は反射的にそちらの方向を見る。
そこにいたのは―――
「皆!!!」
俺は目の前の敵を放置してそちらへと駆け寄った。
少し時は遡り―――
一日目 午後7:47 [青空]
ザザン…
波の音が聞こえる…
あれ? 俺、生きてる?
えっと、確か、俺は海に沈んで、それから…
覚えてない。何も。…多分そのまま流されてここへついたのだろう。かなり俺はツいているようだ。
俺は無理矢理立ちあがる。
「ゲホッ、カホッ…」
口の中から、喉の奥から尋常じゃないほどの水が出てくる。
だいぶ飲み込んでいたようだ。…なのに漂流できたなんて、本当に俺はツいているな。
俺はゆっくりと歩き回る。
ここはなんだろうか。島、なのか?
俺は木々が生い茂っている方向へと進んでみることにした。
静かだな…
俺は少しそこにあった木にもたれかかることにした。大分体力が削れてしまっているようだ。
瑠実を探さないといけないのに… 皆を探さないといけないのに…
はは。俺はなんて情けないんだ。失敗ばっかだよな。俺って。
俺は少し泣きそうになる。が、ぐっとこらえて、その場に仰向けに倒れた。
空を見上げる。
暗い空には、いくつもの星が光っている。
それは一つ一つ個性のある、一つだけの、唯一無二の存在達だ。
俺達も、一人ひとり個性のある、唯一無二の存在。だから、人によって苦手なこともある…。
そうだよな。俺は、自分でそう考えて、自分で納得した。
だから、失敗だってしていいはずだよな。ああ。そうだよな。失敗なんていくらでもしていいんだよな。
…でも、俺は失敗が怖いんだよな。それはしょうがないことだ。治すことなんてできない。
だって、それが俺の個性なんだから。
たまには自分を慰めたっていいじゃないか。これはこれで、気分は上がる。
そして俺は立ちあがる。
さっきまでとは違う、俺は決意に満ちた顔になっていた。と思う。
俺は瑠実を見つけ出す。皆を見つけ出す。俺が、俺がやるんだよ。
そして走り出す。皆を見つけるために―――
「青空くん!!!」
いきなり声をかけられた。すぐにそちら側を向く。
「…音色…!!!」
そこには音色がいた。
俺はやっと仲間を一人見つけた。ほらな。俺もやればできるんだ。こう考えてさらに自分を鼓舞する。
「この島に…!!! 瑠実ちゃんがいる!!!」
なんだって!?
今の音色の発言に俺は驚く。
ここに、瑠実がいる…!!!
というかここはしっかり島だったみたいだ。
いや、今はそんなことは関係ない。今は瑠実を急いで探すことが最重要だ。
「…探すぞ!!!」
俺は音色にそう言い返す。
そして俺らは別方向に散り散りに走ってゆく。
瑠実を見つけるために。
一日目 午後7:35 [琉生]
「カハッ」
僕は勢いよく体を起こした。
何が起こったんだ?
僕は、敵に刺されて死んだはず…
傷口が綺麗に塞がっている。誰がこれを…?
「ああ、やっとおきたかい。」
後ろから声をかけられた。
僕は勢いよくそちらに振り替える。
そこに立っていたのはメガネをかけた中年男性だった。4、50代だろう。それくらいの貫録を感じる。
髪は黒く、寝癖が目立つ。スーツを華麗に着こなしていて、ダンディなおじさんという印象だ。
「誰です、お前」
俺は立ち上がり戦闘態勢に入る。
知らない相手は警戒するのがこの界隈では常識だ。
「ああ、本当に忘れちゃってるんだ。まぁ、そりゃそうか。こんなに時間がたてばな…」
何を言っている?
忘れている? 僕が? 何を?
僕は戸惑っていることを隠しながら、そのことを問う。
「僕が何を忘れたというんですか?」
俺は無理矢理笑顔を作る。余裕だと見せつける。
「忘れられてるよな。そりゃ。俺はあんなにひどいことをしたからな。」
何を言っている?
目の前に立っている男は僕の戸惑いになど気づいていないのか気にしていないのかはわからないが、そのまま何も表情を変えず話を進める。
「最後にこれを言っても思い出さなかったらもう諦めるか…」
本当に何が何だか理解できていない僕は叫んだ。
「さっきから何を言って―――」
その叫びは途中でかき消される。男の発した言葉に。
その言葉が僕の叫びより大きい声だったわけではない。なのに、なぜか僕は叫ぶのを途中でやめていた。
その言葉は―――
「俺の名前は、騰冶だ。」
だった。
それが何かはわからない。これを聞いたからと言って彼が何かがわかったわけではない。
しかし僕は何かを感じ取っていた。
過去の記憶に、触れてしまった気がした。
僕がその言葉を聞いてもなお立ち尽くしているのを騰冶が確認すると、一つため息をつき、こう呟いた。
「やっぱり、思い出さなかったか…」
そして客室の窓を割り、そこから飛び降り逃げようとした。
僕はそれをなぜだかわからないけれど、止めなくてはならない気がした。
そう感じた時には既に叫んでいた。
「待って! とう―――」
しかしその声は届かず、彼は去っていった。
自分が引き留めようとしていたものは、大切だった人。そうだろう。
喪失感が胸を締め付ける。
……なんだろう。
これは、一度体験したことがあるような―――
いいや、やめておこう。今ここで思い出すようなことではない。
今は仲間を見つけることが一番大事だ。
そう考え、僕は歩を進めた。
十二回目の投稿です。
前回の投稿から大分時間が空いてしまったのは申し訳ございません。
ちょっとやらなきゃいけないことがたまっていたのでそちらを先に終わらせていました。
それは置いといて…
これからも楽しくこの物語を読んでくれると僕もうれしいです!今後もよろしくお願いします。




