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太川るい作品集(全作品ver.)  作者: 太川るい
掌編小説・短編練習
52/62

服装

「おい、そこのお前」


 私は通りすがりに、呼び止められた。


「なんでしょうか」


 呼び止めた男は、がっしりとした体格をしている。その体格の威圧感を、身に付けている制服がいっそう強調している。


 男は、じろじろと私の様子をにらみつけてくる。


「お前、その服装はなんだ」


 そう横柄に言うと、男は手に持っていた警棒で私の服を差した。


「この服ですか」


 私は聞き返す。そんな私の態度も気に入らないらしく、渋い顔はますます苦虫を嚙み潰したようになる。


 私は何が指摘されているのか分からず、ますます困惑した、それでいて途方に暮れたような表情をしていた。


 結局、制服の男はそれ以上は余計に口を開かず、ただ私の名前と所属を聞いて、汚いものを見るような目でそれを紙に書きつけた。


 そうして、顎をつき出す。もう行けという合図らしい。


 私は男に何か聞きたかったが、男は目も合わせず、黙ってうつむいてしまった。私たちの間には、ぶ厚い壁が張られてしまったかのようだった。


 それは距離以上の距離を感じさせる、冷たい拒絶だった。

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