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服装
「おい、そこのお前」
私は通りすがりに、呼び止められた。
「なんでしょうか」
呼び止めた男は、がっしりとした体格をしている。その体格の威圧感を、身に付けている制服がいっそう強調している。
男は、じろじろと私の様子をにらみつけてくる。
「お前、その服装はなんだ」
そう横柄に言うと、男は手に持っていた警棒で私の服を差した。
「この服ですか」
私は聞き返す。そんな私の態度も気に入らないらしく、渋い顔はますます苦虫を嚙み潰したようになる。
私は何が指摘されているのか分からず、ますます困惑した、それでいて途方に暮れたような表情をしていた。
結局、制服の男はそれ以上は余計に口を開かず、ただ私の名前と所属を聞いて、汚いものを見るような目でそれを紙に書きつけた。
そうして、顎をつき出す。もう行けという合図らしい。
私は男に何か聞きたかったが、男は目も合わせず、黙ってうつむいてしまった。私たちの間には、ぶ厚い壁が張られてしまったかのようだった。
それは距離以上の距離を感じさせる、冷たい拒絶だった。