石ころ
道ばたを歩いていると、石ころが足にぶつかった。
何の変哲もない、握りこぶしより少し小さいくらいの石だ。色は地面のアスファルトよりも少し明るい色をしている。
私はそれを、何の気なしに蹴飛ばしてみた。
石は乾いた音を立てながら、向こうの方を転がっていく。
そうしてすぐに石が止まった時、私の足はその石の方に向かいつつあった。
何回か、石の近くに寄ってはそれを蹴飛ばしてみる。石はそのたびに、多少の勢いを持って転がりだす。
私はしばらくの間、この単純な遊びに魅入られた。通りに人はいなかった。それが、私を子供らしい行動に駆り立てていたのかもしれなかった。
「あっ」
私は思わず声を出した。
私の蹴った石は、狙いがずれたのか、道のはずれの排水溝に落ち込んでしまった。
ややあって、水に石が落ちる音が遠巻きに聞えてきた。
私はなにか、惜しいものでもなくしてしまったかのような寂しさに襲われた。
私の足には、まだあの石を蹴りたがっている名残惜しさが感じられた。
ふと見ると、数歩進んだ所に、似たような石が転がっていることに気がついた。私の身体は自然とそちらに向いていた。
石の前に立ち止まり、片足で蹴ってみる。
以前の石とは違う感触が、私の中に不満を残していった。