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太川るい作品集(全作品ver.)  作者: 太川るい
掌編小説・短編練習
46/64

燐寸

 マッチに灯がともる。


 火はまわりの空気もぼんやりと明るくし、やがて消えた。


 煙が絹のようにたなびいていくのだろう。木の燃える特有のにおいが自分の鼻をついた。


 火が消えたあと、あたりは再び暗闇にとざされた。


 もう一度、新しいマッチを手に取り、もう一方の手にマッチ箱を取った。中に残っている数本がカラカラと音を立てる。私はまた火をつけた。


「うるさい!」


 すぐ近くで、鋭い声が飛んだ。


「何を考えている。そんなものをここで燃やすんじゃない」


 その声には、ひどく冷たい響きがあった。壮年の、男の声らしかった。


 私は無言でマッチを消した。足元に落としたマッチを、念入りに靴で踏みつける。


 私は無言のままでいる。


 その声を荒げた壮年の男も、それきり押し黙って時間を過ごしている。


 遠くでは、風の音が鳴っている。木々が揺れているようだった。

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