第46話 無人ドローンAI開発
またスケジュールが埋まっていく。
今度は無人ドローンのAI開発。
「お前の技術が必要だ」
軍開発部からの直接要請。断れない。
でも──
「士官候補生が開発?」
開発主任の田中が眉をひそめる。元戦闘機パイロット。実戦経験が豊富。目つきが鋭い。
「前代未聞だ。上は何を考えてる」
「私も驚いています」
「まぁ、上杉家だから、か」
苦笑いが漏れる。また特別扱いだ。
無人航空機(UAV)の自律制御AI。パイロットなしで戦う機械。
胸が高鳴る。でも不安もある。異例すぎる。
「つまり、無人戦闘機が自分で考えて戦う?」
「そうだ。遠隔操作じゃない。完全自律型」
田中が説明する。
「電子戦で通信が切れても戦える機体が必要なんだ」
「なぜ私なんですか?」
聞かずにいられない。
「上層部いわく、お前のAI知識が必要らしい」
「でも、規則では──」
「特例中の特例だ。責任は俺が取る」
田中の覚悟を感じる。
問題は山積みだ。
パイロットの直感。経験。それを機械が再現できるか?
戦場のカオス。一瞬の判断。AIにできるか?
***
ホワイトボードの前に立つ。
無人機に必要な機能を書き出す。
・環境認識 → 敵味方の識別
・戦術判断 → 攻撃・回避の選択
・適応学習 → 状況に応じた修正
・通信障害対応 → 独立動作
「理論上は可能だ。でも──」
田中が腕を組む。
「実戦は理論通りにいかない」
その通りだ。元パイロットの言葉は重い。
「データ不足が致命的だな」
田中が額を押さえる。
「無人機の自律戦闘データがほとんどない」
「有人機のデータじゃダメですか?」
「人間の感覚は再現できん。別物だ」
考え込む。データがないなら──
「シミュレーションで作りましょう」
「机上の空論になりかねん」
田中の懸念はもっともだ。でも──
「仮想環境で数万回の戦闘。それを学習データに」
「計算リソースは?」
「軍のスパコンを使わせてください」
田中が少し笑う。
「面白い。やってみろ」
***
数週間後。初回テスト。
実験場の管制室。モニターが並ぶ。緊張が走る。
「無人機との接続確認」
「AI制御モード、スタンバイ」
手に汗が滲む。これが成功すれば──
「離陸許可」
試作ドローンが滑走路を走る。
離陸。スムーズだ。美しい。
敵機役のターゲットが接近。
AIが反応──回避機動!
「やった!」
思わず声が出る。
次の瞬間──
動きが止まる。
被弾。
「くそ……」
モニターに赤い警告。
一瞬の判断ミス。AIが迷った。
「まだ最適化が必要だな」
田中が肩を叩く。
「でも悪くない。最初にしては上出来だ」
確かに。完全に失敗じゃない。
回避はできた。判断もした。
ただ──遅かった。
「人間なら直感で動く場面」
田中が呟く。
「それをAIに教えるのが難しい」
データを見直す。
0.3秒の遅れ。戦場では致命的。
でも改善の余地はある。
「次は反応速度を上げます」
「期待してる」
窓の外、試作機が帰還する。
無傷じゃない。でも飛んでる。
これが第一歩。
完全自律型無人機への道。
まだ遠い。でも──不可能じゃない。
***
士官学校に戻ると、噂は広まっていた。
「おい、お前また特別任務か」
北園が声をかけてくる。
「候補生が開発なんて聞いたことない」
羨望と嫉妬と困惑が混じった視線。
肩身が狭い。
「まぁ、上杉だし」
誰かが言う。笑い声。でも棘がある。
夜遅くまでデータ解析。
0.3秒をどう縮めるか。
アルゴリズムの改良点をメモする。
ふと思う。
俺は命を奪う機械を作ってるのか?
それとも、パイロットの命を守る技術か?
答えは出ない。
でも、開発は続く。
技術に善悪はない。使う人間次第だ。
そう自分に言い聞かせて、また画面に向かう。
異例の立場。重い責任。
でも、これが俺に与えられた役割なら──やり遂げる。
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