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第31話 シミュレーター訓練

 士官学校での海軍シミュレーター訓練が始まった。

 この訓練は、戦闘状況を模擬的に体験し、操縦技術だけでなく、状況判断やチームワークの重要性を学ぶことを目的としている。

 俺と北園は同じチームとして選ばれた。喉が締まる。また一緒か。

 彼らが共に訓練を受けるのは今回が初めてではなく、以前の訓練で培った互いの信頼感を活かす場面が訪れた。

 教官が説明を始める。

「今回の訓練では、敵艦隊を迎撃するシナリオが設定されている。全員、各自の役割を理解し、最善を尽くせ」

 声が耳に響く。心臓がドクンと跳ねた。

 

 訓練が始まると、俺と北園は迅速に役割分担を行った。

 俺は指揮官として全体の状況を把握しつつ、北園は機動力を生かして的確な動きを見せた。

 操縦桿を握る。掌がじっとりと湿る。モニターの青い光が目に刺さる。

「北園、右翼を抑えてくれ!敵艦が動き始めた!」

 声が少し上ずる。落ち着け。

「了解、上杉!次の目標を送れ!」

 二人のやり取りは簡潔でスムーズだった。これまでの訓練で培った連携力がそのまま発揮されていた。胸が少し熱くなる。

 

 シミュレーターに集中している最中、観戦席の視線を感じた。

 首筋が熱くなる。背中に視線が突き刺さる。

 美樹さんたちが見ていると思うと、手が震えそうになるのを必死で抑える。だが、今はそんな余裕はない。深く息を吸う。目の前の敵艦に全神経を集中するだけだ。瞬きを忘れる。目が乾く。

 

 後半、敵艦隊が思わぬ動きを見せた。

「やばい、どうする……?」

 一瞬の迷いが頭をよぎる。心臓が跳ね上がった。

 操縦桿を握る手に汗が滲む。指が滑りそうだ。深く息を吸う。肺が震える。

 ……いや、迷ってる場合じゃない。冷静を取り戻せ。

 チームが動揺しているのが伝わってくる。空気が重い。胃がキュッと縮む。

「ここで俺が判断を間違えたら、全てが崩れる。落ち着け」

 奥歯を噛みしめる。

「全員落ち着け!敵艦の動きは読み切れていないが、まずはこちらの陣形を整える。北園、左翼をカバーしてくれ!」

 声を張り上げる。喉が焼ける。

「了解!お前の言う通りだ!」

 北園は俺の指示に応え、迅速に対応した。

 

 観戦席にいる美樹さんが、じっとこちらを見ているのを感じた。

 頬が熱くなる。耳まで熱い。

 何を思っているのかは分からないが、その視線に温かさを感じる。でも同時にプレッシャーも。肩が内側に丸まりそうになる。

 

 俺はその間も画面上の敵艦の動きに集中していた。

「ここで判断を誤るわけにはいかない……」

 こめかみがズキズキする。考えろ。もっと考えろ。

 仲間たちの士気を保ちながら、最適な攻撃タイミングを模索していた。指先が震える。マウスを握り直す。

「北園、敵艦の動きを予測して、先回りして牽制をかけてくれ!」

「任せろ!」

 北園の声で、少し息ができた。

 

 北園は迅速な操作で敵艦の進路を封じる動きを見せ、俺が狙ったタイミングで全体の攻撃が決まった。

 成功。心臓が大きく跳ねる。顔が熱い。

 チーム全員の連携がうまくいき、訓練は成功裏に終わった。肩の力が一気に抜ける。深いため息が漏れた。

 

 訓練終了後、教官が生徒たちを集めた。

「全体としては上出来だ。しかし、全ての場面で最善を尽くしたとは言えない。各自、自分の動きを振り返り、次に繋げること」

 教官の言葉が胸に刺さる。ズキンとした。

 俺は教官の言葉を真摯に受け止めながら、自分の指揮に足りなかった部分を考え始めた。

「もっと冷静な分析が必要だ。そして、チャンスを逃さない判断力も……」

 唇を噛む。悔しい。

 

 訓練後のデブリーフィングでは、上級生から「もっと大胆に攻める場面を作ってもいい」とアドバイスを受けた。

 その言葉に一瞬戸惑った。瞬きが増える。慎重すぎた?

 でも、自分の慎重な姿勢を見直すきっかけになるかもしれない、と感じた。胸の奥で何かが動く。

 俺はその言葉に感謝しながらも、自分の中に湧き上がる課題意識を抱いていた。腹の底が重い。

 

 訓練が終了した後、俺たち下級生は教官からのフィードバックを受けるために再集合した。

 教官が一歩前に進み、全員に向けて評価を述べる。背筋が勝手に伸びる。

「今回の訓練では、全体的に良い成果を挙げた。しかし、それぞれの動きに改善の余地がある。上杉、お前の指揮は的確だったが、慎重になりすぎる場面がいくつか見受けられた。次はタイミングを見て、思い切った行動も試みるべきだ」

 慎重すぎる。その言葉で胃が沈む。

 俺は教官の言葉を心に刻み、頷いた。喉が詰まる。

「はい、次回はもっと攻めの姿勢を意識します」

 声が少し掠れた。

 

 隣に立つ北園はそのやり取りを聞きながら、小声で「お前が慎重すぎるなんて言われるのは珍しいな」と微笑を浮かべた。

 肩を小突かれる。少しむっとする。

「お前も次はもっとサポートしてくれると助かる」

 俺が軽く返すと、北園は笑いながら肩をすくめた。

「任せておけ」

 

 一方、美樹さんも俺に近づき、小声で感想を伝えた。

 心臓が跳ねる。また緊張。

「義之君、今日の動き、とても素晴らしかった。士官学校であなたが果たしている役割が本当に誇らしい」

 その言葉に俺は少し照れくさそうに笑いながら、顔が熱くなる。耳まで赤いだろうな。

「ありがとう、美樹さん。でも、まだまだ課題は多いよ」

 と控えめに応じた。舌がもつれそうになる。

***

 訓練後、千鶴さんたちが集まり、それぞれの動きを振り返る場になった。

 俺も自分の指揮がどうだったのか、皆の意見を聞きながら頭の中で整理していく。こめかみが少し痛い。考えすぎか。

「千鶴さんのサポートがなかったら、あのタイミングでの敵艦の牽制は間に合わなかったかもしれない」

 俺がそう言うと、千鶴さんは軽く笑って答えた。

「私一人の力じゃ無理だったわ。義之君の指示が的確だったから、スムーズに動けたのよ」

 褒められて、また顔が熱くなる。

 仲間たちが頷くのを見て、俺は少し安心した。胸の奥が温かい。これでチームとしての連携がさらに強くなった気がする。

 

 その夜、俺は寮の自室で資料を見直していた。

 机に向かう。ランプの光で目が痛い。でも止められない。

 教官や上級生からのアドバイス、美樹さんの言葉が胸に響き、新たな決意を固めていた。

 

 もっと強くならないといけない。奥歯を噛みしめる。

 俺がこの役割を果たさなければ、チームのみんなを裏切ることになる。

 それが俺に課せられた使命だ、と強く思った。

 拳を握る。爪が掌に食い込む。

 

 ……でも、慎重すぎるって言われたのは、正直ショックだ。

 ペンを置く。手が震えてる。疲れか、悔しさか。

 たぶん、両方だ。

ネットコン13挑戦中。締め切りは7/23 23:59まで。

最後まで全力で駆け抜けます。

★評価+ブクマが次回更新の励みになります!

(★1 とブクマ1で3pt加算 → 選考突破のカギです)

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