第18話 夏休み~上杉家ゆかりの地、米沢・秋葉原
色々とショッキングな出来事が続いて、俺の頭の中はまだ整理しきれていない。美樹さんとのデート、士官学校入校の決意、そして彼女たちの提案。どれも予想を超える展開で、現実感が薄い。でも、そんな俺にも、ようやく落ち着ける時間が訪れた。夏休みだ。
父からもらった休暇と一緒に、かねてからの計画――「上杉家ゆかりの地を訪ねる旅」が始まる。第一の目的地は本家の地元、山形県米沢だ。米沢。その名を聞くだけで、上杉家としての誇りと歴史を感じる。
新幹線の車窓からは、緑豊かな山々が流れていく。都会の喧騒が遠ざかり、心地よい静寂が広がる。
「お兄様、見てください! 田園が広がってますよ!」
妹の玲奈が窓の外を見つめて興奮気味に声を上げる。彼女にとって米沢は初めてで、自然に囲まれたこの土地が新鮮に映ってるみたいだ。
「米沢は上杉家の発祥の地だからな。俺たちのルーツだよ」
俺は少し誇らしげにそう言って、玲奈を見た。彼女の笑顔が、俺の胸に温かいものを灯す。この家族を守るためにも、俺は技術で未来を切り開かなきゃならない。
米沢駅に降り立つと、本家の家令が黒塗りの車で待っていた。車が滑らかに走り出し、俺たちは本家の屋敷へ向かう。
上杉本家の屋敷は、戦後の混乱でもその風格を守り抜いた場所だ。重厚な木造建築、広大な庭園、その空気に満ちる威厳。まさに「上杉家の象徴」だ。
「ようこそ、義之君。玲奈さん」
出迎えてくれたのは、大伯父にあたる御隠居様だ。白髪交じりの髪と深い皺の顔に柔和な笑みを浮かべ、その背中には華族としての歴史が滲む。
「久しぶりの訪問だな、義之君。待っておったぞ」
「お久しぶりです、ご隠居様」
俺たちは深々と頭を下げ、屋敷の中へ足を踏み入れる。歴代当主の肖像画が並び、上杉家の重みがひしひしと感じられる。
「……やっぱりすごいね」
玲奈がぽつりと呟く。彼女には、この場所の壮麗さが圧倒的に映ったんだろう。俺も頷いて、
「この伝統を守るのが俺たちの役目だよ。技術で未来を切り開いて、家族を守る。それが俺の決意なんだ」
玲奈が目を丸くして俺を見た。「お兄様、技術ってそんなに大事なの?」と聞くから、俺は静かに答えた。
「そうだよ。曽祖父がこの家を強くしたように、俺は技術で家族と未来を守る。玲奈、お前もその一部だ」
翌日、俺たちは米沢の上杉神社へ向かった。謙信公の前に立ち、俺は手を合わせる。
「上杉家の分家跡取りとして、名に恥じない生き方を。そして、この家族を守る技術を」
その想いを胸に刻み、次の地へ向かう。夏休みはまだ始まったばかりだ。
次は秋葉原。俺が技術で未来を切り開く拠点だ。秋葉原の街に降り立つと、無数の電子看板と賑やかな街並みが目に飛び込んでくる。
「お兄様! やっぱり秋葉原はすごいですね!」
玲奈が嬉しそうに街を見回す。俺は彼女に言う。
「玲奈、お前も上杉家の一員だ。この街がどう発展してるか、よく見ておけ。俺が技術で守りたいのは、この場所と家族なんだ」
「はい!」
最初に向かったのは、上杉家のHRグループ本社だ。洋館のような外観の裏に、地下にはデータセンターが広がってる。ここでAIや電子機器の研究が日夜進んでる。
「お帰りなさい、義之様、玲奈様」
責任者とメイド部隊が出迎えてくれる。俺は尋ねた。
「秋葉原の開発状況はどうなってる?」
責任者が資料を広げて答える。
「電子部品、サブカルチャー、IT技術が中心です。特に義之様のAI研究が、次世代の鍵になってますよ」
「順調だな。家族とこの街を守るためにも、俺はもっと進めなきゃ」
次に、俺と玲奈は街を歩いて視察した。メイド部隊が影から護衛してくれるから、騒ぎにならずに済む。電気街には最新のガジェットが並び、サブカルエリアは若者で賑わってる。
「秋葉原って、こんなに多彩なんですね」
玲奈が目を輝かせる。俺は頷いて、
「曽祖父が夢見た街だ。今は俺が技術で未来に繋げる番だよ。家族を守るためにも、この場所を失うわけにはいかない」
視察を終えた後、俺は玲奈を連れて秋葉原郊外の訓練場へ向かった。上杉家の武装メイド部隊が、ここで日々の訓練を重ねてる。敷地に着くと、メイド服に身を包んだ隊員たちが整列し、リーダー格の彩花が一歩前に出た。
「お帰りなさいませ、義之様、玲奈様。訓練の準備は整っております」
彩花は冷静沈着な声でそう言って、メイド服の裾を軽く整える。彼女の背筋はピンと伸び、鋭い目つきが頼もしさを漂わせる。
隣に立つ新人の凛が、熱っぽい声で続ける。
「義之様! 私、今日こそ彩花さんに勝ってみせます! 見ててくださいね!」
凛の目は燃えていて、メイド服の袖をまくり上げてる。彩花が「凛、気合はいいが落ち着け」と軽く窘めるけど、彼女の笑顔が隠しきれない。
訓練が始まると、彩花が隊員たちに指示を飛ばす。
「二人一組で組手だ。敵の動きを読んで、隙を突け」
メイドたちは流れるように動き、素早い蹴りや手刀が交錯する。彩花は静かに構え、凛の突進を軽くかわして背後を取る。
「ほら、凛、勢いだけじゃ勝てないぞ」
「くっ、まだ諦めません!」
凛が跳び上がって反撃するけど、彩花の冷静な一撃で地面に転がされる。玲奈が「すごい!」と目を輝かせ、俺に言う。
「お兄様、メイドさんたちってこんなに強いんだね!」
「そうだよ。彼女たちは上杉家を守る最後の砦だ。俺の技術が彼女たちを支えてるんだ」
俺は訓練を見ながら呟いた。
「彩花の冷静さと凛の熱意、この二人みたいに俺も技術で家族を守りたい。AIで彼女たちの動きをさらに強くできれば、上杉家の伝統はもっと輝く」
彩花が訓練を終えて近づいてくる。
「義之様、私たちの力はあなたの技術あってこそです。これからもよろしくお願いします」
凛が息を切らせて立ち上がり、
「私だって、義之様の技術に負けないくらい強くなりますから!」
と笑う。俺は二人に頷いて、
「頼りにしてるよ。家族とこの街を守るため、俺も技術を進める」
視察と訓練見学を終える頃、太陽が傾いてネオンが灯り始めた。
「秋葉原はすごいですね……お兄様、私も何か貢献したくなりました」
玲奈の言葉に、俺は微笑んだ。
「俺もだ。この街と家族を守るのが、上杉家の伝統だ。技術でそれを叶えるのが俺の役目だからな」
曽祖父が切り開いた未来を、俺が技術で守り抜く。その決意が、この夏でさらに固まった。
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