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第17話 秋葉原上杉家の日常

上杉子爵家の屋敷が秋葉原にあるというのは、一見奇妙に思われるかもしれない。だが、それには曽祖父が築き上げた歴史と経済的な背景が関わっている。この場所はただの住居ではなく、時折欧州上流階級の人々や財界関係者が集まる国際的な社交の場でもある。


曽祖父が築いた上杉グループの影響力は、国内だけに留まらず欧州にも及んでいる。そのため、屋敷には時折、欧州の上流階級に属する人々が滞在していることが多い。彼らは商談や交流を目的に訪れることもあれば、単に「文化的な交流」として滞在を楽しむこともある。


ある日、屋敷の庭でドイツの貴族夫人が紅茶を楽しんでいるのを見かけた。


「おはようございます、マリア夫人」


挨拶をすると、彼女は優雅に微笑みを返してくれる。


「おはよう、義之君。今日は良い天気ね。この庭はいつ来ても素晴らしいわ」


ちなみに俺は初等部から外国語を徹底的に叩き込まれ英・独・仏・伊を取得している。玲奈も同様だ。ギフテッドに感謝だ。


そんな風に、屋敷の日常には国際的な雰囲気が漂っている。曽祖父が築いた「秋葉原上杉家」の名は、欧州の上流階級にも知られており、そのおかげでこうした交流が生まれるのだ。


屋敷の日々は忙しいながらも充実している。欧州の上流階級との交流、曽祖父の偉業を感じる瞬間、そして玲奈との何気ない会話――それらが秋葉原上杉家の「普通」の日常だ。


俺はこの家で、家族や関係者たちと共に多くの学びと刺激を得ながら、自分の道を進んでいる。義務と責任を背負いながらも、こうした日々が俺の成長を支えているのだと、改めて感じる。


秋葉原上杉家では、日々の生活がただの家庭の延長ではなく、一種の社交場としての機能を持っている。そのため、家族の何気ない日常にも、華族らしい品格や、曽祖父から引き継がれたグローバルな交流が色濃く反映されている。


ある朝、いつものようにダイニングに向かうと、すでに欧州からの来客が朝食を楽しんでいた。今回のゲストは、イタリアの侯爵家の三男であるエンリコ様とその姉であるカテリーナ様だ。彼らは秋葉原上杉家を「文化の交差点」として非常に気に入っている。


「グッドモーニング、義之」


エンリコ様が気さくに声をかけてくる。


「おはようございます、エンリコ様」


礼儀正しく返事をしながら、席に着いた。朝食のテーブルには、日本らしい和食と、彼らのために用意されたヨーロッパ風のパンやハムが並んでいる。


「お気に召しましたか? これは、我が家の専属の茶師が用意したものです」


俺がそう答えると、彼女の瞳が好奇心に輝いた。


「専属の茶師!? そんな贅沢、日本の貴族は今も続けているの?」

「当然です。我が家の伝統ですから」

「ふふっ、日本の文化って素敵ね」


彼女の微笑みに、俺も少しだけ誇らしくなる。

会話は自然と日本文化の話題へと進み、彼らがいかに日本の文化に興味を持っているかが伝わってくる。こうした交流は、曽祖父が築いたネットワークのおかげであると改めて実感する。


その日の午後、玲奈と一緒に屋敷の資料室を訪れた。この資料室は、曽祖父が生涯をかけて集めた貴重な文献や技術資料が保管されている場所だ。


「お兄様、これ見て!」


玲奈が手に取ったのは、曽祖父が若い頃に書いた研究ノートだった。そこには、彼が欧州に滞在していた際の詳細な日記が記されていた。


「こんなことまで書いてあるのね……」


玲奈が感嘆の声を上げる。ノートには、曽祖父がドイツやイギリスで交流を深めた上流階級の人々とのエピソードや、当時の技術革新の様子が細かく書き残されていた。


「このネットワークがあったからこそ、今の秋葉原上杉家があるんだよ」


「お兄様、曽祖父様って本当にすごい人だったんだね」


「そうだな。でも、俺たちがこの遺産を活かせなかったら、それも意味がない」


玲奈は真剣な顔で頷き、その姿に少しだけ成長もを感じた。


曽祖父はすでに亡くなっているが、彼の存在感は屋敷の隅々にまで息づいている。彼が残した書物や映像記録は、今でも家族にとっての財産だ。


「義之兄様、これも見て!」


妹の玲奈がBlu-rayディスクを手に持ってきた。曽祖父が生前に残した映像記録の一つらしい。再生すると、若き日の曽祖父が自信満々に語っている姿が映し出された。


「この技術が世界を変える。日本を未来に導く基盤になるんだ」


その言葉に、俺も玲奈も思わず苦笑した。


「やっぱり、曽祖父様ってすごい人だったんだね」


玲奈が目を輝かせて言うと、俺は頷いた。


「そうだな。でも、玲奈もこれくらいの情熱を持って何かをやってみたら?」


「えー、それはお兄様の役目でしょ。私はサポートする方が好きだもん」


彼女の屈託のない笑顔に、俺は少し安心する。


玲奈は中等部1年生になったばかりで、まだまだ子供らしい部分を残している。それでも、華族の一員としての自覚は強く、家柄にふさわしい振る舞いを自然と身に付けている。


「お兄様、今日の晩餐会には来るの?」


玲奈が夕方に声をかけてくる。今日は欧州の貴族たちを招いた晩餐会が予定されている。


「ああ、出席するよ。でも玲奈、ドレスはちゃんと選んだのか?」


「もちろん! お母様と一緒に選んだわ」


そんなやり取りをしながらも、玲奈は時折俺に小説の話題を振ってくる。


「お兄様、次回の作品ってどんなお話なの?」


「次回は少し未来の話を書いてるよ。ディストピアっぽい感じで」


「へぇ、面白そう! でも、暗い話ばっかりじゃなくて、もっとロマンチックな話も書いてほしいな」


「……考えておくよ」


玲奈とのこうした何気ないやり取りが、俺にとっては心の安らぎでもある。

夜になると、屋敷は一転して活気に満ちた雰囲気に包まれる。この日は欧州貴族や国内の華族を招いた晩餐会が開かれる予定で、使用人たちが忙しなく準備を進めていた。


晩餐会では、欧州貴族たちが曽祖父の功績について語る場面もあった。


「上杉子爵家は、日本と欧州の架け橋だと感じます」


ドイツのある侯爵がそう語ると、他のゲストたちも頷き、曽祖父への敬意を口にした。


イギリスの曽祖父と関わり合いのある伯爵が


「義之君はMBAを取るんだろう。どこで取るつもりなんだい?」


俺はよく聞かれるのでよどみなく答える。


「今はMITで取得することを考えています」


「君の曽祖父はイギリスと関係が深いんだ。是非ケンブリッジ辺りで取ることも考えて欲しいな」


なるほど確かにそういう考え方もあるな。


「まだ、何年も先なので考えておきますね」


「是非、選択肢に入れておいてくれたまえ。歓迎する貴族家は多いよ。うちに下宿してくれという家は多いと思う。勿論、我が家もだよ」


とユーモアを交えて誘ってくれる。


「あら、私がMBAを取る時でもよろしいいですか?」


その中で玲奈が礼儀正しくも活発に会話を楽しむ姿は、俺にとって誇らしいものだった。


秋葉原上杉家での生活は、平穏な日常と華やかな非日常が絶妙に交錯している。家族としての時間を大切にしながら、国際的な交流や華族としての役割も果たす。それがこの屋敷での暮らしだ。


玲奈との何気ない会話や、曽祖父が残したものへの気づきは、俺にとって自分の立場や未来を考えるきっかけとなる。そして、こうした日常が、俺にとっての「秋葉原上杉家らしさ」を象徴しているのだと感じている。

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