第四十八話 「師は弟子を見捨てない」
一次試験も終わり、俺は二次試験が始まるまでの二日間の休みを過ごしていた。
でも二次試験何すんだろ?またチーム行動とか言わないよね。
出来れば個人戦がいいんだけど。
そんな事を考えていながらも、ハンモックに寝転がりながら、優雅に休みを満喫していた。
でもハンモックっていいよね。特に小さな揺れが眠気を誘う。
グリッチはうとうとしていたが、眠気には勝てず、寝てしまった。
グリッチの夢の中。
グリッチは何もない黒い空間に立っていた。
グリッチは辺りを見回した。
ここは夢の中?
・・・でもおかしいな、いつもの夢ならこんな何もない空間じゃなくて、昔の出来事とかが出てくるのに・・・
俺は気味が悪いなと思いながらも、その何も無い真っ暗な空間を歩いた。
ほんと何も無い、というか、何でこんな夢見ているんだ?
嫌なほど静かだ、お笑いのネタが滑ったぐらい。
グリッチは暗闇の奥に人影見つけた。
あれは・・・人?
グリッチは不思議に思ったが、その人影に近づいてみることにした。
だんだん近づいていくと、姿がはっきり見えるようになった。
優雅に椅子に座ってティーカップを持ち何かを飲んでいる。
そして顔を見てみると・・・
・・・・・・・・!!
グリッチは目を大きく開き驚いた。
なんと、あの人影の正体は佐藤雄大だったのだ。
すると雄大は充希の方に頭を向けた。
「おや、充希じゃないですか、久しぶりですね。紅茶要ります?」
「いや、要りません・・・」
俺はこの世界に来て一番困惑していた。
何で、雄大先生が?
いやでも、夢だから(雄大が)出てくることもあるか・・・
でも何で?
「私がこんな所に居る。ですよね。」
「何故わかったんですか?」
俺は内心焦りながらも、平常心を保っていた。
「あなたと何年一緒に居たと思っているんですか。考えている事ぐらいわかりますよ。」
だから稽古の時、いつもボコボコにされていたのか。
でも考えている事がわかるのはかなり凄いな。
「・・・そうでした忘れていました。あなたに一つ伝えなければならない事があります。」
「斬るのではなく、突け。」
「・・・・・・?」
何それ?
「ちょ、ちょと待った。先生意味が全くわかりません。」
「わからなくても、時期にわかるようになります。」
「・・・おっとそろそろ時間のようです。」
「充希・・・頑張って生きなさい。先生はいつでも見ていますよ。」
「ちょと待ってください。もう少しお話しません?」
するとグリッチは何か物凄い勢いで後ろに引っ張られ、目が覚めた。
目を開けると。
フランとアリアナがグリッチを見ていた。
「大丈夫?大分うなされてたけど・・・」
フランは頭を縦に振った。
「・・・変な夢を見てた。でも心配してくれてありがとうな。」
「変な夢って?」
「俺の先生が意味わからない伝言を残す夢。斬るのではなく、突け。全く意味がわからねえ。」
「・・・グリッチって先生居たんだ!」
驚くとこそこ?
「俺だって先生ぐらい居るわ。」
グリッチは体を起こした。
「え!ぐらいの先生ってどんな人?」
ぐいぐい来るね。
「知りたいか?」
「知りたい!」
フランは頭を縦に振った。
「フラン、グリッチ程の凄い剣士を育てた、先生だよ。きっと凄いに決まってる。」
アリアナはフランと話した。
確かに凄いが・・・
グリッチはハンモックの上に座った。
「じゃあ教えよう。俺の先生を。」
二人はどんな話が聞けるのかワクワクしていた。
「俺の先生は、剣聖だ、だが普通の剣聖じゃない。本物の剣聖だった。あの人はいつもこう言ってた。」
「殺していい敵と殺してはいけない敵を判別しなさい。」
「その時俺は、まだって言ったらおかしいがまだザコ剣士の子供だった。(二十六歳)」
「そして俺はその時、無慈悲に敵を殺しまくっていてな。俺の中では敵は殺すって判断をしていた。だからその言葉を言われた時俺は、バカじゃないのか?と思っていたよ。でも、経験をかされていくうちにわかってきた。」
「犯罪を起こしている人は全員が好きでやっている事じゃない。確かに犯罪を起こすのは駄目だ、だが中には、それをしないと家族が殺されてしまう者、命令に従わないと自分が死んでしまうかもしれない者、俺は色々見てきた。」
「勿論先生もそんな人達を沢山見てきた。なんか先生いわくイヤイヤ犯罪をしている人はわかるらしい。」
「先生はそんな人見つけたら殺さず、生かす。でも刑務所には入ってもらうけど。」
「あと、先生は何があっても弟子を見捨てない。」
「その事がわかったのは、俺が四歳の時(二十五歳)・・・」
充希は軍服で左足を引きずりながら地球の何処かの森の中を歩いていた。
上半身を酷く怪我をしている。
特に左横腹にはかなりの出血が見える。
一歩一歩歩くだけでも、一応応急処置はしている左横腹の傷から血が出てくる。
充希は休めなかった。それは何故か?
それは今充希が居る場所は敵の縄張りだからだ。
一刻も早くここから出なければならない。
だが辺りは薄暗く涼しい。そして鳥の声も聞こえる。
充希はゆっくりだがこの森から出ようとしていた。
あの時の戦いで無線が壊れちまったから助けを呼べねぇ。
今こうやって歩いているが、見つかるのも時間の問題だろうな。
テント内。
雄大は帰還した隊員を確認していた。
手には何か資料を持っている。
「おかしいですね・・・」
「平岡、充希を見かけてないですか?」
平岡庄司、特殊の攻撃隊員。
「見かけてはおりません。ですが充希ならそこら辺で散歩しているのでは?」
「ならいいのですが・・・」
念の為充希の無線にかけてみましょうか。
雄大は右胸に取り付けている無線を使い、充希の無線につなげた。
・・・・・・
無線は何も反応がない。
おかしいですね。いつもの充希ならどんな無線にでも出るのですが・・・
「平岡、今からここに居る全部隊員を連れていき、指定された出口に移動させなさい。」
「隊長は何をされるのですか?」
「私は、充希を探してきます。」
雄大はそう言いテントから出た。
一方充希は・・・
スンスンスンスン。
辺りの匂いを嗅いでいた。
獣の匂い・・・
熊か?いやでもここは富士山の樹海の中だかこんな獣の匂い嗅いだことない。
なんかこう鼻にツーンとくる匂い。
少し血の匂いもする。
不気味だな、下手したら樹海村見つけたりするかもな。
そんな事を考えていると遠くでバンと銃声が聞こえた。
銃声・・・なんでだここはもう敵の縄張りじゃない無理して銃なんて撃たないはずだなら何で・・・?
・・・もしかして自殺?
遠くから連続してバンと銃声が聞こえてくる。
いや自殺だったらこんなに銃声鳴らねぇよな。
・・・・・・
充希は何か考えてるようだった。
・・・いやまさかね。
充希何かモヤモヤした感情が胸の中にあった。
でも気になる。(銃声が鳴った方に)行ってみよう。
充希は好奇心には勝てず、銃声が鳴った方に左足を引きずりながら歩いた。
銃声が鳴った場所に着いたがそのには死体も銃も無かった。
充希は地面を見ていた。
あれ・・・?何で何もないんだ。しかも何だこの強烈な血と木の匂いは・・・
しかも土臭い。
充希の目線が元に戻ると充希はまじかと言うことになる。
なんと充希の目の前に見たこともない怪物が居るのだ。
その怪物の体の色は茶色で目は赤く、体は木で足は二本で根っこだろうか?
そしてきちんと二本腕が生えている。
「まじか・・・」
その怪物は木に隠れこちらをじっと見ていると言うか充希をどう殺そうか考えている。
お願いだから、戦ったりしねえよな?
こっちは満身創痍なんだから。
でも何だろう?あの怪物何をしてくるのかわからない怖さがある。
するとその怪物の腕は刃物の様に鋭くなり。充希に襲い掛かった。
来やがった!
やがて充希の刀と怪物の腕かまじわると左横腹の傷や体全体の傷から血が出なくなった。
筋肉で傷が一時的に塞がったのだろうか?
充希は刃物を交わってるさなか、木の怪物に左足で蹴りをお見舞いさせた。
木の怪物は少し後ろによろめいた。
充希はこれは好奇と思い素早く刀で木の怪物を斜めに真っ二つにしようと斬った。
だか斬ろうとした瞬間、後ろの地面から木の根出てきて充希の頭めがけ飛んで来た。
そして充希はそれに気づくととっさに上半身を下げ木の怪物の横腹を斬ろうとした。
しかし、次は右の地面から木の根が出てきて、充希の腹にめがけ飛んで来た。
充希は右から飛んで来た木の根を刀で防いだ。
・・・チッ、そう簡単に斬れないか。
木の根を防いだ瞬間、木の怪物の刃になっている腕が充希を斬り掛かった。
充希はそれに気づくと左胸に装備していたナイフを左手で持ち木の怪物の刃を防いだ。
今充希は左手でナイフを持ち、右手で刀を持っている。
馬鹿みたいに左横腹の傷が痛む。
沢山針で刺されているように。
すると木の怪物がもう一つの腕を刃物に変え、充希に斬り掛かった。
それを見た充希はとっさに木の怪物の足の間をくぐり、直ぐに木の怪物の方に刀を構え向いた。
充希は息が荒くなっている。
さてこっからどうする。
刃物を交えるとしても、左横腹の傷が痛むから長時間は無理。
スピード攻撃をしたとしても、あの根があれば防がれる。
充希がそう考えていると木の怪物はまた充希に襲い掛かった。
今度は木の根が地面から無数に飛び出し充希に襲い掛かった。
充希は無数に襲い掛かって来る木の根を避けたり防いでいた。
近付こうともこの根のせいで近付けないし、もし近付いたとしてもあの刃があれば簡単に斬れない。
この状況先生ならどうする。
考えろ、考えろ。
そして充希が地面に着地すると木の怪物はそれを狙っていた事の様に木の根を一斉に充希に向けた。
まじかよ!
この量避けきれねぇ。
充希はそう思い。木の根を斬ろうとした瞬間、充希に向かって飛んで来る木の根は何者かによって斬られた。
充希は困惑はしなかった。
何故ならこんな事が出来るのはあの人しか居ないからだ。
「遅っかったので心配しましたよ充希。まさかこんな所で道草を食っているとは。」
「遅いですよ先生。危うく死ぬとこでした。」
「どうもすみませんね。うちの教え子が何かしでかしたのでしょう。私からきつく言っておきますので、私の監督不行き届きと言うことで許しては頂けないでしょうか。」
「・・・・・・」
木の怪物は黙っていた。
どうやら喋れないようだ。
木の根がまた地面から現れた。
木の怪物はどうやら二人を殺そうとしている。
「先生逃げましょう。」
だか雄大には聞こえていないようだ。
「この子は私の教え子です。これ以上この子に危害を加えるのなら容赦しませんよ。」
雄大からは物凄い殺気が出ている。
「ワァオ。」
充希は雄大の殺気を見てそう声が漏れた。
先生のあんな殺気見たことがない。
木の怪物はその殺気を見ると、森の中に帰りその木の怪物は消えた。
「帰りますよ。」
「はい・・・」
「歩けますか?必要でしたらおんぶしますが。」
「じゃあ、おんぶしてください。」
「わかりました。」
雄大は充希をおんぶしてテントに帰った。
帰り道。
「先生、一つ聞きたいです。何で俺を救ってくれたんですか?」
「そんなことですか。それは簡単あなたが私の教え子だったからです。あの時の普通の隊員でしたら見殺しにしていましたが、あの時はあなたでしたので助けました。あとあの時、少しあの木の怪物にイラッとしたので。」
「そうなんですか!でも珍しいですね。先生が戦闘中にイラッとするなんて。」
「ええ、教え子をあんなにいたぶっておいて、もっといたぶろうとしていたのは先生として見過ごせなかったので。」
「そうですか・・・」
「充希、あなたはあと数十年したら教え子が出来るかもしれませんので一言言っておきます。」
「‘‘何があっても弟子を見捨ててはいけません‘‘先生として弟子の成長はしっかり見届けてください。」
まあそんな事があったな、あの時俺は先生は何があっても弟子を見捨てないって思ったんだ。
「どうしてグリッチの先生は弟子を見捨てないの?」
アリアナが元気一杯に言った。
「それな、こう言われたからだ。‘‘何があっても弟子を見捨ててはいけません‘‘と。」
「・・・?」
二人は首を傾げていた。
「今はわからくてもいい。でもいつかお前達が先生になった時この言葉を覚えていて欲しい。」
「・・・さて、何でお前達は何しにここに来たんだ?」
「それはね・・・」




