第99話 みかんの皮むき
プールで冬の花火を堪能したリンネたちはお風呂に移動する。このフロアにはプールのすぐ近くにお風呂が設置されていて、プールからその足で入れるようになっている。さっそく水着を脱ぎお風呂に入るリンネたちだが、リンネも慣れたもので今更女の子の裸を見ても何かを感じるという事は……たぶん無かった。
お風呂の後は改めてディナーが提供されて、普段使うことのないテーブルマナーに四苦八苦しながら食事を楽しんだ。こういうご時世になったために手に入りにくい食材も使われているのだが、リンネたちが気づくことはなかった。
食事を終えた後はわいわいとパジャマパーティーになり、気がつけば一人また一人と眠りに落ちて目が覚めると朝になっていた。つまりは特になにかあれやそれやが起きることもなくクリスマス・イブの夜は過ぎていったのである。
「せっかくの一緒に寝るチャンスだったのに、いやでも他の人もいたし……」
とレイネが呟いたとか呟かなかったとか。こうしてクリスマスイベントは終わり気がつけばお正月となっていた。
「一年が経つのは早いな」
「そうだね、来年には学園を卒業だよ」
「サキナさんは卒業したら進学せずに鍛冶師としてやって行くっていってたな」
「確かおじいさんが退院したから修行に集中したいって言ってたね、ただ原初ダンジョンに入る時は一緒に入ってくれるって言ってたよ」
「それは助かるな、それでレイネは進路どうするんだ?」
「私はとりあえず進学かな、それよりリンこそどうするの?」
「何もなければ俺も進学でいいかな?」
風呂上がりのリンネとレイネはコタツに入りみかんを食べながら会話をしている。なぜかリンネとの入浴はローテーションになっていて、今回はリンネとレイネが一緒に入ったことで、今はアカリとミレイが交代でお風呂に入っている。いつからこうなったかはリンネにはわからないがいつしかこういう事になっていた。
「お風呂上がりましたわ」
「みかんボクも貰うね」
「みかんは珍しいですわね、このあたりでは手にはいらない気がするのですが」
「他の都市に出張しているゲンタおじさんが送ってきたんだよね」
「あらゲンタさんは他の都市に?」
「そ、京都のあった場所にある第五ダンジョン都市で会議があるとかで他の都市を経由しながら向かったらしいよ」
世界が変わってしまってからは通信の手段も限られている。そんな中そうそうに集まれるわけではないこの時代にわざわざ招集をかけて会議をするというのはなにか大きな事が起きる前触れのようにリンネには感じられた。
「詳しい話はおじさんが帰ってきてから聞いてみるかな、教えてもらえるかはわからないけど」
リンネがふとアカリに視線を向けると、アカリは剥いたみかんの白いあれを丁寧に一つずつ剥がしている。
「アカリそれを食べてもいいと思うけど」
「そうなんだけどね、どうしても気になって。それに剥がしたほうが雑味がなくて美味しいかなって」
「どうなんだろう気にした事無かったな、俺もやってみようか」
ここからはなぜかみかんの皮むきをチミチミと始めるリンネたちの姿があった。
「めんどくさーい」
そう言ってまずはレイネが戦線を離脱。
「特に味に代わりはないですわね」
半分ほど剥がして食べ比べをしたミレイの感想がそれである。結局まるまるひとつ分綺麗に取りきったのはリンネとアカリだったが、意外とリンネも凝り性だったようで黙々と作業をしていた。
「んーいや、噛んでしまえば余り変わらない?」
「だと思う」
「ですわよね」
そのような意見はそっちのけでアカリはきれいになったみかんの中身を捧げ持ちご満悦である。
「はいあげる」
そしてそのみかんをリンネに渡して次のみかんに手を出し始めた。
「食べないのか?」
「じゃあリンネが食べさせてくれる?」
「まあ良いけど」
リンネがアカリから受け取ったみかんを一房手にとりアカリの口元へ持っていく。
「あーん、もぐもぐおいしいね」
再びもう一房アカリの口元へ持っていくと、アカリが再び「あーん」と言って口を開く。リンネはなんだか小鳥の餌付けをしているようで楽しくなったようで、手元のみかんが無くなるまでアカリの口元へ持って作業を続けた。
「リンありがとー」
「いや俺もなんか面白かった」
とまあ、このような二人の世界を見せつけられたレイネとミレイは競争するように皮を向いてリンネに差し出したのは言うまでもないだろう。その行為は目の籠に入っていたみかんが無くなるまで続けられることになる。
「あれ? 俺の食べるみかんが無いんだけど」
「さーてっと、歯磨きして今日は寝ようかなー」
「そうだね」
「そうですわね」
レイネたちはそんなリンネの声に対し聞こえないふりをして仲良くリビングをでていくのだった。結局放置されたみかんの皮の塊を仕方がないなと苦笑しながら片付けるリンネであった。将来は良いお嫁さんになりそうである。





