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第9話 決断

 結果から言うと特にこれといった異常はなかった。ただしリンネが女性となった理由ははっきりしなかった。結局それはユニーククラスの戦乙女が影響したのだろうとデータベースに残されることになる。


 ちなみに、男に戻れるかという問いには、今のままでは無理だろうということだった。微々たる可能性にかけるなら、上級クラスに進化できれば男に戻れるかもしれないといった感じだ。


 だがその可能性も低いだろうというのはリンネ自身もわかっている。上級クラスというものは結局現クラスの上位となることなので、戦乙女というクラスの影響で女性になったのなら、上位クラスもそれは引き継がれる可能性のほうが高い。


「さて、結果は見てもらった通りこれといった異常はない。覚醒したことによりμα(ミーア)も定着を果たし安定している」


 μαの定着というのは、出生時に覚醒因子を持つものに埋め込まれるナノマイクロチップが覚醒の過程で肉体と完全に一体化する現象の事をそう言っている。コクーンとほぼ同時期に作られたμαが覚醒の過程でこうなるのはそういう設計だったのだろう。


「身体能力は今のところ突出したものはないようだが、今後ダンジョンに入り魔物を討伐することでどう変化するかは未知数だな。ユニーククラスは既存のクラスと違いデータがあまりにも少ないのでその辺りはどうしようもない。できれば定期的にここに通って来てもらって色々とデータを取りたい」


「リンネ俺からも頼むわ、ちゃんとそれなりの報酬はでるからリオンに協力してやってくれ」


「まあ、今回お世話になったことだしそれくらいなら協力します」


「そう言ってもらえると助かるな、ちなみに報酬はこんなものだ」


「意外と高額だった」


「ユニーククラスの細かなデータになるからな報酬としては妥当だよ」


 自分の能力を数値化して見れるというのはリンネにとっても都合がいい。覚醒者は魔物を倒すことにより少しずつ力を得るのは周知の事実だ。その伸び幅やどの能力の伸びが良いかなどはクラスで決まるとも言われている。


 リンネの手に入れた戦乙女というクラスは何に適性があるのかなどは今はわからないが、魔物を倒し伸びた能力によってどういった傾向なのか、ここで調べ数値化してもらえば知ることができるというわけだ。


「それとだ、先程聞いた記録が消えた現象については一つ仮説が思い浮かんだが、聞きたいかい?」


 メガネをクイッっとした祭音さいねリオンは、リンネとゲンタに問いかける。問いかけてはいるものの、どこからどう見ても聞いてくれオーラが漏れ出ている。


「ああ、このメガネが気になるかい? 今じゃあ作られることも殆どないアンティークの一種だからな、度は入っていない伊達だよ、かけているとそれっぽく見えるだろ」


「ええ、まあ、そうですね」


「それで、聞きたいかい?」


「あー、それじゃあお願いします」


 一瞬ゲンタが止めようとしたが諦めたように視線をそらしている。


「そうか、聞きたいか、では聞いてくれ」


 そう言って語り始めるリオン。


「リンネくんが見た碧眼の少女だが私の思う所彼女は未来から来たのではないかと思われるああそうだ未だ人類は時間跳躍のすべを見いだせてはいないだがそれもいつできるようになるかもわかっていないリンネくん君の瞳も碧眼だそれと君が繭の中で聞いた気がしたという「ママ」という言葉から想像するに彼女は君の娘ということになるのではないだろうか君に覚醒の水晶を使わせた理由まではわからないが君が覚醒を果たした結果彼女が来た未来が不確定となったそのことでまずは自動記録されていた映像から彼女の存在が見えなくなりそれに続き記録自体が消滅したそのことからも私の彼女が未来から来たという仮説の信憑性が増すどうだねこの私の推理は───」


 いつ息継ぎをしているのかわからないくらいのマシンガンのような喋りに身を引いているリンネ。それを見て「これがなければな」とため息をついているゲンタ。


 要約すると、碧眼の少女は未来から来た、そしてリンネに覚醒の水晶で覚醒をさせた。目的はわからない、わからないがリンネが覚醒したことにより未来は不確定となった。不確定になったせいで碧眼の少女が生まれることができるのかもわからない。そのせいで、記録から彼女の姿が消え映像まで消えた、こういったところだろうか。


「俺がままになる? 誰の子を? えっ?」


「リンネ真に受けるなよ、リオンのなんちゃって推理はだいたい外れる」


「あっそうなんだ、いやー流石に俺が子どもを生むとか想像できないし、したくない」


 盛大に脱線しながら未だに話し続けているリオンの頭をゲンタがはたくとリオンは喋るのをやめて正気に戻る。


「正気に戻ったか?」


「ああ、済まないゲンタとリンネくん、もう大丈夫だ」


「なら良かった、お前の妄想はそれくらいにして、今後について話をしないといけないんだわ」


「今後?」


「お前はすぐにでも第一都市の始原ダンジョンに潜りたいと思っているだろうが今のままじゃ無理だってことだな」


「なんでだよ、ちゃんと大検もとってるし、なんならすぐにでも試験を受けて大学を卒業して見せるぞ」


「まあ落ち着け、大学の卒業とかとは関係ない、簡単にいうとだな、ダンジョン実習を規定回数受けてないからだ」


「あっ……」


「気づいてなかったな。まあ大学に通いながら小型ダンジョンに潜り実習を受けて、実績を積むというのが真っ当かもしれないが、どのみち第一ダンジョンに入れるのは卒業後になるわな」


「そうなるのか」


 うつむくリンネにリオンが一つの学校のパンフレットをテーブルに置く。


「そこでだリンネ、お前レイネと同じ学校に通え、それもレイネと同学年の一年生としてだ、そこでダンジョン実習を終わらせろ、多分それが一番お前の望んでることへの最短だ」


 リンネはパンフレットを手にとり学校の名前を確認する、そこには国立第一ダンジョン都市大学付属白桜(はくおう)女子学園と書かれている。


「レイネの学校って女子校だよな、俺は男だぞ」


「どこからどう見ても今のお前は女の子だな」


「うっ、いや、それでも元は男だって問題あるだろうし、流石に学校側が受け入れてくれないだろ」


「その点は大丈夫だ、まずはお前が自分から吹聴しなければバレんだろうし、その女子学園の理事の一人はリオンだからな、受け入れも問題ない」


「そうです、私は白桜女学園の理事の一人です。ですから受け入れもバッチコイだ、ついでに妹さんと同じクラスになるおまけも付けようではないか」


「それになリンネ、お前は生粋の引きこもりだ。まあ俺やリオンとも普通に会話できてるからコミュ障ってわけではないだろう。だがな知り合いが誰もいない学校に通う自信があるか?」


 そう言われてしまうと弱いリンネである。小学校卒業から5年、中学校や高校にも通わずほとんど家から外に出ることもなく今日まで来た。確かにそんなリンネがまともに学校生活ができるのかと問われると不安しかない。


 その上、ダンジョン実習を受けるとなるとパーティーを組まないといけないわけで、そういうことからレイネと同じ学校で同じクラスというのは願ったり叶ったりだろう。そこが女子校でなければだが。


 そして熟考の末にリンネは決断した。まあ最初から選択肢は一択だったわけなのだが、リンネにとっては苦渋の決断となった。

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