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ユニーククラス戦乙女を獲得したのはいいのだが、その影響で美少女になったようだ  作者: 三毛猫みゃー


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第75話 リオンのμα

「やあゲンタ、今戻った」


「リオンか、でどうだった」


 第一ダンジョン都市覚醒者協会第一支部の支部長室では、リンネたちの引率を終えたリオンが報告も兼ねて入室してきた。


「ゲンタの予想通り、あのダンジョンはどこかの始原ダンジョンと繋がっていたようだ」


「そうか、それで他には何かあった……、その感じは他にもなにかあったな」


 勝手知ったるなんとやらと言った感じで、リオンは部屋主への断りもなく備え付けのインスタントコーヒーを入れ始める。


「ついでに俺のも入れてくれ」


「わかっている」


 2つのカップを持ってソファーに移動しているゲンタの前とその正面へコーヒーカップをおいてリオンもゲンタの正面のソファーに座る。


「それで何があった」


「どうやらあのダンジョンと繋がっていた始原ダンジョンから、リンネくんのμαが干渉を受けていたようだ。そしてそのせいでスズネくんやカリンくんが眠りにつくことになりワルキューレ化が出来ない状態になっていた」


「それでリンネたちは無事だったのか?」


「ああ、怪我一つ無い、それに干渉自体もスズネくんたちが自分で解決したようだ」


「そうか、それにしてもリンネのμαは、始原ダンジョンと何らかの繋がりがあると考えたほうがいいのかもしれないな」


「ああ、遠からずリンネくんたちも始原ダンジョンに入ることになるだろうが、なにが起きるか予想すらできないな」


「はぁ、リンネたちの目的が始原ダンジョンのどこかで生きているかもしれない両親の探索だからな、いつかは行くことになるのだろうがそれまでに繋がりというものがわかればいいんだが」


「ああそれと面白いことが一つあったな」


「お前の面白いが面白かったことは無いんだが、聞かなきゃ駄目か?」


「聞きたくないと言っても後ほどレポートで知ることになるがそれでいいなら今は言わないが」


 ゲンタはコーヒーを一口飲んでため息をつく。


「わかった今聞く」


「リンネくんだが、いや違うなライチくんとアズサくんの二人が、リンネくんのユニーククラスを通してブリュンヒルドという存在を生み出した」


「なんだそれは」


「スズネくんやカリンくんと同じような存在だな、ただし生み出してしまえばリンネくんを必要としないようだ」


「つまりは、ワルキューレ化と同じことが、リンネがいなくても可能というわけか」


「そうなるな、ただしなにも検証が出来ていないので距離が離れていても可能なのか、ダンジョンを隔てていてもブリュンヒルド化が可能なのかはわからないがね、このあたりも要検証だろう」


「おいおい、ただでさえ規格外のワルキューレ化だと言うのに、同じような存在がもう一人同時に戦力となるわけか」


「そうなるな。ただ本当にまだなにもわかっていないのだよ。それにワルキューレ化同様に、ブリュンヒルド化も一定の期間をあけないと再びブリュンヒルド化は出来ないようだな」


「そうか、まあ世話をかけるが引き続きリンネたちのことは頼む」


「任せたまえ、今となっては私も無関係というわけでもないからな」


「どういうことだ? もしかしてお前もリンネと」


「そうではないが、今はまだ言えないな」


「お前が言えないと言うなら無理には聞かないが、必要ならちゃんと俺を頼れよ」


「ああ、その時は頼らせてもらう、それではレポートをまとめるから地下へ戻るよ」


「今日くらいゆっくり休んでもいいんだぞ」


 リオンは手に持つコーヒーカップに残っていた中身を一気に飲み干し席を立つ。洗い場まで行きカップを洗い部屋の出口へと向かう。


「ああそれからリンネくんとミレイくんにもワルキューレが生まれたぞ」


「おま、そういう事は先に言え。はぁ、期限は設けないからそれもレポートで提出してくれ」


「わかっている、それではな」


 リオンが部屋から出ていくのをゲンタは見送り、そのままソファーに寝転び目を瞑った。



 支部長室を出たリオンはそのままエレベーターに乗り地下にある自らの研究室へ入る。まずはゲンタに提出するためのレポートを作り上げ、続いて自らのμαに記録していた映像を吸い出し保存する。それらが完了した頃には深夜となっていた。


「ふぅ今日はこの辺りでいいか、昼も食べてないし飯を食わないとな」


 独り言を言うように言葉を発してリオンは部屋を出ていく。覚醒者協会は既に受付にも人はいなく無人の状態になっている。そんな中リオンは裏口から外へ出てまだ開いている店で食事を済ませる。


 その間もリオンのμαでは情報の整理が行われている。食事を終えて再び自らの研究室へ戻ったリオンは、まとめたデータを一つの装置へと同期させた。そしてその装置からケーブルに繋がれたリング状のヘッドギアを自らの頭に被り、すぐ近くにある医療用にも使われるカプセル型のベッドへと寝転んだ。


「さてと、これで何度目になるかな、自分で言うのもなんだが慣れたものだな」


 μαが立ち上がりエラー表示が出ているが、リオンはそれを無視して操作を続ける。最初は多数のエラー表示が出ていたが、それも一つ一つと消えていく。最後にはYesとNoの表示が出るだけとなる。


「ふぅ、それでは始めるか、無事に明日の朝を迎えられるといいのだがね」


 リオンは体の力を抜いてμαを通した視界に表示されているYesを選択する。ブーンとケーブルに繋がれている装置がうなりを上げる。そしてリオンの意識は闇へと落ちた。動くものがいなくなった部屋のライトはひとりでに消え、部屋の中には装置の唸るような音と、リオンの被っているヘッドギアのランプが点滅している緑色のライトだけが辺りを照らしている。



「無事にμαのアップデートは済んだようだな」


 目を覚ましたリオンは自らの身体がちゃんと動くことを確認するように、ベッドから起き上がり指を腕を足を頭をそれぞれ動かし異常が無いことを確認する。


 世間一般ではμαが埋め込まれた後のバージョンアップは不可能だと言われている。その行為は脳自体をこねくり回すのと同じと考えられているからだ。リンネの場合は埋め込まれた時点でなぜか未来から送り込まれたとしか考えられないほどのバージョンが刻まれているわけで、バージョンを上書きしたわけではない。


 だがリオンはその常識を覆すように何度も自らのμαのバージョンアップを繰り返している。その行為は一つ間違えれば目覚めることもなく廃人となってもおかしくないものなのだが、リオン自身は何らかの確信を持ってその行為を成功させ続けてきた。そして今ここでリオンのμαのバージョンがリンネのソレと同じ物へと達した。


「さてと、やっと会うことが出来たな、まずは君の名前を教えてもらえないかな」


 バージョンの上がったリオンのμαを通した視界には、リンネにそっくりな見た目をした、身の丈50cmほどの少女が映し出されていた。その少女は俯いていた顔を上げ、閉じていたまぶたをゆっくりと開いた。その碧い瞳にはリオンの姿が映し出されていた。

これにて第2章終了となります。

今後の更新予定としましては、月水金の18時更新とさせていただきます。


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