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ユニーククラス戦乙女を獲得したのはいいのだが、その影響で美少女になったようだ  作者: 三毛猫みゃー


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第70話 ダンジョンからの帰還

 桜の花びらがベビークラーケンの体から溢れ出し、辺り一面を桜吹雪が舞う。そしてベビークラーケンはその姿を泥へと変え消えていく。それと同時に舞っていた桜も空へと溶けるように消えていった。


「終わりかな」


「ええ、終わりましたね」


 スズネの言葉に上空から降りてきたサラが答える。


「あれは?」


 リオンの言葉を聞いて全員の視線が正面を向く。先程までベビークラーケンが居座っていたため見えなかったが、ベビークラケンが泥となって消えたためその場所が顕になっていた。


「あれって何」


 スズネたちの見つめる先にあったのは、穴だった。それもこの場所とは違う風景が映り込んでいる穴だ。そしてその穴からこちらを見つめる目玉がぎょろりと動いた。


「あれは多分だが、どこかの始原ダンジョンに通じていると思われる。流石に穴が小さすぎてあれはこちらへ来ることは出来ないようだが、早々にダンジョンコアを壊して脱出するのがいいだろうな」


「もしかしてベビークラーケンがあの場から動かなかったのって、あの穴を守っていたってことなのででしょうか」


 シラベがリオンに聞いているが、そうだと思うといった答えが返ってくるだけだったが。


「えっとダンジョンコアはどこかな」


 皆でキョロキョロとあたりを見回したところ脱出用のゲートと宝箱が一つ現れているのを発見することが出来たが、肝心のダンジョンコアが見つからないでいる。


「あっ、宝箱」


 アカリが宝箱を見つけそこへと駆け出す。皆が宝箱の周りに集まった所でシラベが調べた所、罠などは無いことがわかった。


「宝箱をみて思い出したけど、中等部ダンジョンの宝箱って誰も手に入れてないよね」


「言われてみればそうですわね、ですけどもう取りに行けませんし諦めるしか無いですわね」


「さてと、この宝箱だがスズネくんが開けてみるかい?」


「わたしでいいのですか?」


「ボクはかまわないよ」


「わたくしもかまいませんわ」


 それぞれが辞退する中、スズネが宝箱に近寄りゆっくりと開ける。宝箱の中にはどこか見覚えのある丸い宝石が入っていた。


「これってもしかして」


「ほう、こういう事もあるのか、それはダンジョンコアそのものだな」


「これがダンジョンコアですか、それではこれを壊せばいいのですね」


「まてまて、その状態なら壊さずにダンジョンの外へ持ち出せば問題ないし、そうすることでダンジョンの崩壊に巻き込まれることもない」


 スズネが宝箱からダンジョンコアを取り出す。するとダンジョンが突然震えだした。ただそれはダンジョンが震えているのではなく、始原ダンジョンへと続く穴をこじ開けようとする魔物によるものだった。


「ちょっとあれヤバくない?」


 アカリが見つめる先では、何か巨大なマモノが穴へと体当たりを繰り返しているのが映っていた。そして見ている間に少しずつ穴が広がっているように見える。


「みんな逃げよう、脱出ゲートへ急ごう」


「それがいいだろうな、ほらあの魔物がこちらへやってくる前にさっさと逃げるぞ」


 スズネとリオンに促されるまでもなくみんな必死に脱出用ゲートへ駆け出す。そうしているうちに穴は広がり続け、スズネたちが脱出ゲートへ飛び込むころには、穴の周りにヒビが入り今にも境界が破られそうになっていた。


 そしてスズネ、サラ、アカリ、ミレイ、リオン、シラベの全員が脱出用ゲートへ飛び込むと同時に境界は破られ、ダンジョン内に海水と共にクラーケンが流れ込んできた。ただダンジョンコアがダンジョン内から持ち出されたためにクラーケンは元の場所に戻ることも、そして脱出する事もできずにダンジョンと共に消滅することになった。



 ダンジョンを脱出した所でスズネとサラは光に包まれ、その光が消えた所でリンネとレイネにスズネが現れ、そしてライチとアズサにサラが現れた。


「はー、なんか色々と限界」


「ワルキューレのときは良いけど、解除されるとこんなにしんどいんだね」


 リンネとレイネは息も絶え絶えといった感じでその場に倒れるように座り込んだ。


「うちも限界」


「一歩も動けない、です」


 ライチとアズサもその場に座り込んでしまう。


「どうやら無事ダンジョンを破壊することが出来たようだな」


 リオンの言葉に応え、全員がダンジョンの入口ゲートに視線を向けた。そこには空間に溶け込むように少しずつ薄くなっていくゲートが見えた。しばらくするとゲートは完全に消え去り、後には何も残っていなかった。


 とりあえずリンネたちが動けるまで休憩ということになった。時間はもう夕方になっており、日暮れも近い時間のようだ。ある程度動けるようになったレイネたちは、日が暮れ始めると共に肌寒くなってきたので、水着から着替えを済ませた。


「みなさんお帰りなさい」


 そう声を掛けてきたのは家で待っているはずのカナだった。


「あれ? カナさんどうしてここへ?」


 リンネがカナの姿を認めて問いかける。


「さっちゃんがね、ダンジョンが消えるのを感じたって言うから迎えに来ました。皆さん無事なようで良かったです。お疲れでしょうから車をとってきますね」


「お願いします」


 カナがワゴン車をとって戻ってくると皆乗り込み、カナの家へと向かう。車の中ではリオンとシラベが会話をしている。


「リンネくんたちはよっぽど疲れていたようだな」


「ワルキューレ化ですか、すごい力なんですね」


「その分消耗も激しいようだがね。だがその消耗に見合った、いや余りある戦闘力を有しているのは彼女たちの切り札となるだろう。切り札がある分だけ生存率も上がるわけだ、使い所を間違わなければだがね」


「そうですね」


 リオンとシラベは会話をやめリンネたちへと視線を向ける。いつの間にかリンネたちは眠ってしまったようで、その口からは寝息が漏れ聞こえていた。


 それからしばらくしてカナの実家へとたどり着いたため起こされたリンネたちは、スズネたちへと一言言ってμαをオフにしフラフラと家に入った。食事もお風呂も一度寝てからと、幸子さんに誘導されて浴衣に着替えだけ済ませて布団に放り込まれる。


 ワルキューレ化したリンネとレイネ、ブリュンヒルド化したライチにアズサだけではなく、アカリとミレイも疲れが限界だったようで、布団に潜り込むとそのまま眠りに落ちるのであった。

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