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ユニーククラス戦乙女を獲得したのはいいのだが、その影響で美少女になったようだ  作者: 三毛猫みゃー


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第66話 ベビークラーケン

 ベビークラーケンの触手を避けながらどうにか近づいて攻撃しようとするレイネとアカリだが、なかなかうまく行かずに時間だけが過ぎていく。リンネたちが戻るまでの時間稼ぎだと思えばその役目は十分に果たせているだろう。


「あーもう、近寄れないし、触手は触手で全然切れないしどうしろっていうのよ」


 仕切り直しのために一度後ろに下がりながらレイネが吠えている。


「一刀両断でも無理っぽい?」


「ああも動かれると難しいかな、なんとか上空に飛んで使えば切れそうな気がするけど、当てるのが難しいよね。あまり動きがない根本とかなら当てられるけど、そこまで行くことが出来ないよね」


「確かにそうだね、ボクの攻撃もぶにょんって感じで全く傷をつけれないからね」


「わたくしも混ざってみましょうか?」


 トゲトゲの付いた大きめのメイスを片手にミレイがレイネとアカリのそばによってくる。


「ミレイのそれでも、あのブヨブヨ突破できないんじゃないかな」


「一度次のアタックで試してみますわ」


「それじゃあ、私とアカリで援護するよ」


「お願いしますわ」


 レイネたちがどうしてこんなにのんびりと会話できているかというと、ベビークラーケンは何かを守るようにある一定の場所から出てこないからだった。それなら距離を開けてリンネたちが戻ってくるのを待てば良いと思うだろうが、そうも行かない理由があった。


 その理由とは一定時間、およそ三分ほどベビークラーケンと距離を空けていると、どこからともなくサメの魔物が複数出てくるからだ。結局サメを相手にして体力を消耗するよりも、ベビークラーケンの相手をして弱点なり攻撃パターンなりを調べたほうが良いという話になり今に至るわけだ。


 アタッカーの3人、ミレイをアタッカーと数えて良いのかは判断に迷う所だが、残りのリオンとシラベが何をしているかというと、シラベは上空を漂っているホーンホエールの弱点ないし地上に落とす方法を調べている。


 リオンはそんなシラベの護衛をしているわけだ。リオンは一度ホーンホエールに攻撃を仕掛けようとしたが、どう考えても届かないという事で諦めた。いっぽうベビークラーケンへ魔法で攻撃をした所、触手に防がれ本体まで届かず、その上魔法の当たった触手からは、ぬめぬめした謎の液体がにじみ出て、全員一致で気持ち悪いからやめようとなったわけである。


 この時、その場にいる全員の脳裏には、ローションまみれになりくんずほぐれつする情景が浮かんだとか浮かばなかったとか。およそ一人だけ、何を考えたのかニヘラと表情を崩しながら気持ち悪い笑い声を上げていたとだけ記しておこうと思う。


「そろそろ時間だから行くよ、ミレイ準備はいい?」


「わたくしはいつでも行けますわ」


「ボクもいつでもオッケーだよ」


 三人はレイネを先頭に走り出す。触手の攻撃範囲に入った所で三人の上から一本の触手が振り下ろされてくる。それぞれが左右に別れ回避をすると、そこを狙って別の触手が横薙ぎに振るわれる。


「しゃがんで!」


 レイネの指示に従いアカリとミレイがしゃがみ込むとその上を触手が通過していく。


「ミレイ、今よ」


 レイネはミレイに声をかけながら、手に持つ薙刀を地面に振り下ろされたまま動かない触手に向かってふるう。ミレイもほぼ同時に手に持つメイスをフルスイングするように両手でしっかり持ち殴りつけた。


 レイネの薙刀はベビークラーケンの触手に傷をつけることはなく少しへこますだけにとどまった。いっぽうミレイのメイスでの攻撃はトゲの部分がその触手の外皮を破ることに成功した。穴が空いた触手からは、謎のヌルヌルした液体が溢れ出し、それをモロに受けたミレイは散々な姿になっていた。


「一回引きましょうか」


 ミレイの攻撃で初めてダメージらしいダメージを受けたためか、触手が暴れまわり回避するにも一苦労な状態である。


「ベトベトで気持ち悪いですわーー」


 ミレイはヌルヌルになった全身から滴り落ちる謎の液体に足を取られながらも安全圏に逃げ込んだ。レイネとアカリはそれを確認した後にステップなどを使い離脱に成功する。


「はぁはぁ、あんなヌルヌルした液体が中に詰まってるとか、刺す? 突き? が有効だとしても攻撃したく無くなったね」


「リオンさん、これどうにかならないかしら、気持ち悪いですわ」


「ふむ」


 リオンはミレイの頬についている液体を指ですくい臭いをかぎ、手でこすり合わせ、舌でなめる。


「ふむ、これはよくわからないな。毒は無いようだが、水で少し流してみようか」


 リオンはそう言って魔法で人がすっぽり入りそうな大きめの水球を作りだし、ミレイの前まで移動させる。ミレイは息を止めて水球に飛び込みヌルヌルした液体を手で払うように剥がしていく。


 水とヌルヌルの液体は相性がいいのか、手で払うそばから水に溶けるように剥がれていきすぐに見えなくなった。ミレイは一通りきれいになったのを確認して水球から飛び出す。


「リオンさんありがとうございます」


「あの体液には水が有効のようだな、まあわかった所でどうしようもなさそうだがね」


 そう言ってリオンはベビークラーケンへ視線を向ける。先程まで暴れていたベビークラーケンは大人しくなり、溢れ出ていたヌメヌメが足元に広がるだけで、ミレイに穴を開けられた傷も塞がっているようだ。


「どうしよう」


「どうしようか」


「どうしたらいいのかわかりませんわね」


「いやはや困ったものだな」


「すいません、何のお役に立てなくて」


 年下にばかり戦ってもらっていることにシラベが申し訳無さそうにしているが、レイネたちは、役割分担や適材適所などと言って慰めている。


「こうなったら本格的にリンたちが戻ってくるのを待ったほうが良いかな」


「一応ヌルヌルの液体は水で落とせるみたいだから、色々試してみても良いかもしれないね。ミレイが穴を開けた所へ、ボクとレイネが攻撃をしたら触手を切れないかな」


「ヌルヌルが出るのがわかっていますので、気を付けて攻撃しますわよ」


「でもそれってさ、私とアカリがヌルヌルまみれになるんじゃ?」


「ま、まあその時はリオンさんに水をぶつけてもらうとか」


「私も手持ち無沙汰だからな、水球ていどならいくらでも出して援護はしよう」


「ここまでお膳立てされちゃうとやるしか無いね、よし時間が切れる前にいっちゃいますか」


「おーけー」


「わたくしはいつでもいいですわ」


「しっかりと援護はしよう」


 レイネは一度全員を見回した後に、薙刀を収納して帯と太刀を取り出し腰に帯ごと巻きつけた。


「よし、行くよ」


 レイネを先頭に再びベビークラーケンへと駆け出した。この時レイネたちはベビークラーケンに集中しており、上空のホーンホエールの動きに変化が現れたのを見逃していた。

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