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ユニーククラス戦乙女を獲得したのはいいのだが、その影響で美少女になったようだ  作者: 三毛猫みゃー


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第57話 美人の湯

「はぁー、家で温泉に入れるなんて贅沢だねー」


 そもそもレイネにとって温泉という物自体が初めての体験である。リンネたちの家よりも広い浴場にヒノキで作られた浴槽がある。リンネたち全員が入ってもまだ余裕があるくらい大きなお風呂だ。


「結局カリンとスズネはどこにいったんだろうね」


「なんとなくだけど、寝てるように感じる」


 アカリの疑問にリンネが少し考え込むように答える。今は家の中にいるのでμαはオフにしているが、砂浜からの帰り道に色々試した所、感覚的にμαの中で眠りについているように感じられた。


 消えていた記録のこともあるが、リンネがリンネらしくない言動をしたり、その記憶がないなども、カリンとスズネが眠りについていたことに関係しているのではないかと思っている。


「それにしましても、こちらのお風呂はお肌がすべすべになりますわね」


「カナさんが言ってたけど、美人の湯らしいよ」


「そうなのですのね」


「うちの家にも温泉がほしくなるね」


「第九ダンジョン都市には、都市内に温泉があると聞いたことがある、です」


「第九って鹿児島と宮崎の県境にあるやつだよね。確か天の逆鉾があった場所に始原ダンジョンの一つが出来てって習ったよね」


「山の上だから、街を作るのが大変だったみたい、です」


「アズサって第九に詳しいの?」


 リンネがなんとはなしにアズサに問いかけた。


「わたしのおばあが第九に住んでたらしい、です」


「そうなんだ」


「他の都市にもそのうち行ってみたいね、特に第九なんて日本で始めて新婚旅行を行われた場所なんでしょ」


「あーそんな話もあったな」


「新婚旅行……、ボクも行きたいなー」


 アカリがポツリとリンネを見ながらつぶやく。


「まあ、他のダンジョン都市に行くのも一苦労だからな」


「そうだね、今回のこれだって本当なら色々と面倒な手続きしないといけなかったのを叔父さんがやってくれたからね」


 覚醒者が小型ダンジョン関係以外で、ダンジョン都市の外へ出ることは容易ではない。それに加え移動手段が限られている現在では、他の都市へ行くのも簡単ではない。


 まず電車というものはとうの昔に廃止されており、化石燃料を使う車も使えない。唯一使えるものと言えば電気やソーラーを利用した車になるのだが、その数は少ない上にそこまで燃費は良くない。


 ダンジョン都市内で使われている車などは魔石を燃料の代わりとして使っているのだが、魔石を使った物は都市外での使用を禁じられている。ただ隠れて使っているものはいるのだが、そういった物はほぼ表に出てくることはない。


 ではどうやって他の都市に行くのかというと、徒歩である。ひたすら目的地を目指して歩いての移動になる。と言っても覚醒者の身体能力を駆使しての移動となるので、下手な自動車よりも移動速度は優れている。


 そういった現状なので、リンネたちが仮に新婚旅行をするとしても、第九ダンジョン都市に行くのは現実的ではないと言った所だろう。そもそも第九とかは関係なく、レイネもアカリもリンネをそれとなく誘っているわけだが、その事にリンネは全く気がついていない。


「そろそろあがるか」


「うん、のぼせる前にあがっちゃお」


 リンネたちがお風呂からあがり居間にたどり着くと、幸子とカナがくつろいでいた。


「カナさんお風呂ありがとうございます」


「みんなあがった? 麦茶用意するから座って」


「ありがとうございます」


 レイネたちが座ると、幸子とカナが麦茶を入れてリンネたちの前に置いていく。


「それじゃあ、私もお風呂入ってくるからくつろいでいてね、それと布団は用意しておいたから眠くなったら先に寝ちゃってていいよ」


 そう言ってカナと幸子は連れ立って部屋を出ていった。幸子はアヤカシなのにお風呂に入るのだろうかなどとどうでもいいことが頭に浮かんでいた。


「ちょっと縁側に行こうか」


「うん」


 リンネたちは麦茶を手に取ると襖を開けて縁側に出て並んで座る。縁側から見える庭は月明かりが照らしていて、なんだか神秘的に思える。虫の鳴き声が聞こえ、そよ風が火照った体を沈めてくれる。リンネは麦茶を一口飲むと砂糖が入っているのか甘く感じられた。


「明日にはリオンさんも合流するんだよな」


「そう聞いてるよ」


「リオンさんが来たら一度μαの事を聞いてみないとな」


「カリンとスズネのことも相談したいね」


「流石にリオンさんでも、ここでは詳しく調べることは出来ないと思いますわ」


「ミレイの言う通りだろうね。それにしても改めて思ったけど俺ってμαの事をよく知らないって気がついた」


 μαとアヤカシが相性が悪いということや、記録が途切れていることもそうだ。特に疑問に思わなかったのだが、μαと連動しているワルキューレの存在も疑問に思えて仕方がない。


 目を閉じそんな事を考えていると、肩に重さを感じたリンネは目を開けて重さの元を確認する。そこにはうつらうつらと眠そうにしているレイネの頭が乗っていた。改めて周りを見たリンネだが、アカリもミレイもライチもアズサも眠そうに頭が揺れているのがわかった。


 歯磨きをしないとなと思ったリンネはレイネを揺さぶって目を覚まさせた。


「おいレイネ起きろ、寝るなら歯を磨いてからにしろよ」


「ふん、んあ、ふわぁあ」


 大きなあくびをしながらレイネが目を覚ました。それを確認してからリンネはアカリの肩を揺すって目を覚まさせる。


「ほらほらみんな起きて、寝るならお布団で、その前に歯磨きね」


 リンネがコップを回収しながらそう声をかけると、ぞろぞろと洗面所へ向かっていった。リンネはコップをお盆に乗せて台所まで運び、洗い終えた所で歯磨きセットを持って洗面所へ向かった。


 洗面所にはすでに誰も居らず、リンネもささっと歯磨きを済ませると布団のひかれている部屋に戻った。


「みんなよっぽど疲れていたのかな」


 そうつぶやくリンネの声は誰にも聞こえなかったようで全く反応はない。布団にも振り込んでいる面々はすでに夢の世界へ旅立っているようだった。


「俺も寝るか」


 唯一空いている布団に潜り込んだリンネだが、リンネ自身も疲れていたのかすぐに眠りに落ちた。そしてリンネが眠ったのを確認するレイネとアカリ。レイネとアカリは寝たフリをしていたわけで、二人は視線を合わせて頷くとそれぞれがリンネの布団に潜り込むとリンネと手を繋ぎ満足気に目を閉じた。

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