第55話 海水浴
照りつく太陽、寄せては返す波、そんな中健康的な肢体をこれでもかと見せつけるようにリンネたちは浜辺へ来ている。
前日の夜は海鮮料理を堪能し、温泉を楽しみ早々に眠りについた面々。朝は早くから起き出し、部屋の掃除などを済ませた後に、温泉に再び浸かり朝食を食べた。そして少しの休憩の後、水着に着替えて浜辺に来たわけである。
リンネの水着は真っ白で布面積が結構際どいビキニだった。これはレイネが選んだものだが、レイネ自身にダメージが行くほどこれでもかと胸が強調されている。
そしてリンネの眩いばかりの銀色の髪と雪のように白い肌を目の当たりにしたレイネは自らと比べてさらに精神的なダメージを受けることになった。
リンネ自身は、自らの水着姿を見ても、いつものメンツしかいないこともあり、外である事以外は特に思うところはないようだ。
いっぽうレイネの水着は、残念ながらベタなスクール水着ではなく、ワンピース型の水着を着ている。胸元はフレアで隠れていて大きさはわからないようになっている。実はこっそりパッドを入れているのだが、入れてもなお誰にも反応してもらえない悲しみがある。
アカリは意外に普通といった感じのもので、ブラはアジャスター式になっており、下はショートパンツのタイプの水着姿だった。水着の色が薄い青色で赤い髪に映えている。
そしてミレイの水着だが、ネタでもなんでも無く普通のスクール水着だった。普通のスクール水着とは、あの紺色のあれである。ミレイいわく「わたくしはシスターですので、あまり派手な水着を着るわけにはいきませんので」とのお答えを頂いた。
それを聞いたレイネは「あ、うん、そうだよね」となんだがネタを取られたような気分になったのは言うまでもないだろう。
アズサの水着は、外からは長袖のラッシュガードパーカーを着ていて、フードまで被っているのでどういったものかはわからない。そして下はレギンスタイプとなっていて足首まで覆われている。
最後にライチは黒色のクロスラインビキニを着ている。似合ってゃいるのだろうがこの中で一番布面積が少ない物を着ているようだ。
みながみな、普段からダンジョンに潜るといった運動をしているおかげで、適度に引き締まった健康的な姿である。
「リン、オイル塗るからそこに寝転んで」
ビーチパラソルが立てられている場所にあるビニールシートを指さしながらレイネがリンネに言っている。家を出る前にカナに「日焼けで痛い思いしたくなければ塗りなさい」と渡されて、日焼け止めオイルを持ってきていたバッグの中から取り出す。
「すまん、頼む。終わったら交代な」
ごろりとうつ伏せに寝転んだリンネ。手にオイルを垂らし塗り始めるレイネ。ドサクサに紛れて水着の中にまで手を入れて揉みしだきながらオイルを塗るのはお約束だろう。
交代した時にやり返されたレイネだが、パッドを入れていたのに気づかれてお互いやるせない気持ちになったのは悲しい事件であった。リンネとレイネが順番にオイル塗りをしている横では、アカリとミレイが同じようにオイルを塗る。また別の場所ではライチとアズサが同じようにオイルを塗っている。
一通りオイルを塗り終わったリンネたちは浜辺へ行き海水浴をしたり、ビーチボールでバレーの真似をしたりして楽しんでいる。リンネたち以外は誰もいないまさにプライベートビーチといったところだろう。初めて感じる砂や波の感触。海水のしょっぱさなども体験をしたりもした。
写真や映像記録のみでしか見たことのなかった海という存在を体験し、リンネたちは世界の広さを改めて感じていた。箱庭とも言えるダンジョン都市で生まれ育ったリンネたちに取って今回の体験は、代えがたいものになったと言えるだろう。
お昼になると一度カナの家まで戻り昼食を頂いた。出された食事は大量のおにぎりといなり寿司とお吸い物にお漬物と簡単なものだったが、みんな美味しそうに食べている。
「どう? 楽しんでる?」
「はい、初めての海、というよりもすべてが新鮮ですね。カナさんと幸子さんが作ってくれるこのご飯も美味しいですし」
「ふむふむ、そう言って貰えると作ったわしも嬉しいの。夜は……外ですますのだったか、なら明日の夜は楽しみにしておるが良い」
「はい、楽しみにしています」
夜は浜辺でバーベキューをする予定になっている。ダンジョン都市ではなかなかお目にかかれない、飼育された家畜の肉や貝などの海鮮が食べれるという事でみんな楽しみにしている。
食事を終えたリンネたちは、夜に備えて昼寝を始める。普段は昼寝などしないリンネたちだが、なれない海や砂浜で相応の体力を消耗したこととお昼ご飯をお腹いっぱいに食べたことも相まってすぐに眠りについた。そんなリンネたちにカナと幸子はタオルケットを掛けていく。
「こうやって寝ている姿はまだまだ子供じゃの」
「みんな可愛いよね」
「昔のカナを見ているようじゃの」
「そうかなー、私はもっと可愛かったと思うけど」
「くふ、自分でいいよるか、まあ否定はせんがな」
全員にタオルケットを掛けたカナと幸子は、別の部屋に移動してゆっくりと思い出話に興じる。カナがこの家を出てから25年ほど経っている。カナは自分が家を出てからの両親や妹のことを聞き、幸子はカナのダンジョン都市での生活を聞く。
幸子が聞いたカナの話は、今回のことが解決した後にカナの両親へと伝えられることだろう。しばらくするとリンネたちも起きて会話に参加しはじめる。リンネたちはカナが幼少期この家で暮らしていた頃の話しを聞いたり、ダンジョン都市の外での暮らしなどの会話をした。
そして幸子にはダンジョン都市での暮らしや、ダンジョンでの戦いの話しをした。そして全員が起き揃った所で、幸子以外のカナも含めた全員でバーベキュー道具を持ち浜辺へ移動した。
「それじゃあ炭は私がおこすから、他の準備なんかはお願いね」
カナが炭をおこしている間に、家から持ってきたテーブルやイスの準備を始める。それが終わればお昼の残りのおにぎりなどを用意して、飲み物を人数分用意する。
それ以外にも、準備しておいた薪を使って焚き火を始める。日が暮れたあとの照明代わりとなる。テキパキと役割分担をして準備を済ませる。
今のところレイネたちは泊まりでダンジョンに潜ってはいないが、その時が来た場合の予行練習と言ってもいいかもしれない。ただダンジョンでの泊まりはここまで大掛かりな準備は出来ないので、参考にならないのだがリンネたちにとっては何事も経験といったところだろうか。





