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ユニーククラス戦乙女を獲得したのはいいのだが、その影響で美少女になったようだ  作者: 三毛猫みゃー


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第52話 アヤカシ

「夏だ! 海だ! ポロリもあるよ」


「ポロリするほどないだろ、あっ」


「ん”ん、そんな事いう胸はこれか、これなんだね」


「おっ、やっ、やめ、胸は何も言わないって、これ以上大きくなったら困──」


 リンネのその言葉にハッとしたレイネは、リンネの胸から手をのける。リンネはレイネが離れた事を察知し、これ以上やらせないという感じで自らの身体をかき抱くように両手で抱きしめる。


 レイネは両手をワキワキと動かしながら、お風呂場で初めてリンネの胸を揉んだ時のことを、そしてあの時感じた感触を思い出しながら、先程の弾力との違いを感じていた。


「ねえリン、大きくなったの?」


「お、おう、ちょっと前にキツイなと思って店に行ったら、ワンサイズ変わってた、みたい、だ」


 リンネの返答を聞いたレイネの頬に雫が伝う。この世の無常を嘆き悲しむあまり涙がこぼれ落ちたようだ。


「どうして、どうしてリンばっかり」


「んーあれじゃないかな、なにかとレイネが揉んでくるから、とか?」


「それだ!」


 この日からリンネは毎晩レイネのマッサージをする事になった。その期間は一月にも及んだが、結果がどうなったかは神にすらわからない、いや結果はご想像にお任せするといたしましょう。


 まあ、そんなやり取りがあったものの、今は全員が堤防の上から初めて見る海を見ている。そしてその独特なにおいを、少しベタつくような潮風を感じていた。その中にはカリンとスズネも一緒に海を珍しそうに眺めていた。


 今日は日も出ていない朝早く、さながら温泉バスツアーにでも出かけるのかと言われそうな装飾のされた小型バスに乗り込み、たどり着いた場所が今目の前に広がる砂浜であった。リオンとダンジョンの探索を担う職員は3日後に合流する予定になっていて、それまでは夏を満喫して良いことになっていた。


「はいはい、みんな荷物を持って家に入るわよ」


「「「はーい」」」


 声を掛けてきたのは、今回の世話役として急遽参加することになった覚醒協会の職員である、熱海カナ(28)恋人募集中である。茶色に染められたショートカットで、半袖シャツからは零れそうな2つの膨らみが見て取れる。元々借りる予定だった温泉宿とは違い、カナが参加するということでカナの実家を借りることとなった。


 カナは元々覚醒因子を持たずに生まれてきたのだが、なんらかの要因でいつの間にか覚醒因子を持つにいたった。ダンジョンに関わらなくても覚醒者になるということは稀にあることではある。覚醒因子の有無がわかったのは12歳での検査のときで、それまではこの屋敷で暮らしていた。


 覚醒因子を持っているということがわかり、周りの覚醒者に対する認識の違いからカナは第一ダンジョン都市へと単身暮らすことになった。カナの久しぶりの帰郷を楽しみにしていた両親だが、近くに小型ダンジョンが出来たことにより避難を余儀なくされている。


 カナの両親は、共にダンジョン都市への移住を考えていたようだが、様々な理由からカナは一人ダンジョン都市へと赴くことになった。それでも一年に何度かは今も会っているようだ。


 その理由の一つが目の前の屋敷である。古い時代からこの地を守護してきた古い血筋の家系であり、今もこの地の盟主的な立ち位置にいるからである。


「懐かしいなー」


「ここってカナさんの実家なのですよね、すごく大きいですね」


 レイネがキャリーバッグを引っ張りながら、目の前の立派な門構えを見ている。


「そうだよー、ここには12歳くらいまで過ごしていたんだよね、もう10年くらい前かな」


 さり気なく鯖を読んでいるカナは、門の横にある液晶の付いたチャイムのボタンを押す。液晶にライトが付き何も映さない画像が続いたが、唐突に門が自動で開き始める。


「さっ、入って入って」


 今の一連の流れに疑問を覚えることもなく、リンネたちは「おじゃまします」と言いながら門をくぐる。全員が門を潜った所で門がひとりでに閉まった。


 石畳の道を通り玄関へと到着すると、玄関の扉がひとりでに開いた。流石にレイネたちはなにかおかしいと感じたようでカナに視線が集まる。


「ただいまーさっちゃん」


 カナの視線を追って玄関を見てみても誰かがいるようには見えない。ただ、ライチとアズサは何かを感じたようで自然とμαをOFF状態にしている。


「あっ、ごめんごめん、ほら入って入って、入ったらμαをOFFにてね」


「μαを切るんですか?」


「そうそう、そもそもこの辺りではμαって外部とリンクできないからね。ダンジョン内でパーティー同士なら別だけど」


 リンネたちは少しためらいながらμαの電源をOFFにする。するとリンネたちの前に突然女の子の姿が現れた。その見た目は和服を着た黒髪でおかっぱ頭の6歳くらいの可愛らしい女の子だった。


「みなさまようこそいらっしゃいました、わたしはこの座敷童の幸子さちこと申します」


 幸子と名乗った女の子はリンネ達にお辞儀をしたあと笑顔を浮かべている。



 それぞれの部屋に案内されたリンネたちだが、襖を開けると全員の部屋が繋がるようで、早々に襖を全開にして二部屋にまとめて泊まることになった。この家の中ではμαをOFFにすることで幸子を見ることが出来るのだが、μαをOFFにしてしまうとカリンとスズネの姿や声を聞く事ができない。


 それを想定していたのか、リオンから預かっていた荷物から、リンネは人数分のネックレスを取り出した。まずはそれを自分でつけてみたリンネだが、ネックレスを付けることで、μαをOFFにしていてもカリンとスズネの姿を、それも声を聞けるようになった。


「うわ、リオンさんってすごすぎない」


 リンネに続いてネックレスを付けたレイネが言った。それに続くようにアカリやミレイアにアズサとライチもネックレスを付ける。ネックレスを付ける事でアカリたちの視界にもカリンとスズネの姿が現れる、だがその姿はどこかノイズ混じりでぶれて見えている。


「まだ未完成品って言ってたけど、μαが使えないところでスズネとカリンの姿が見えるってのは良いね」


「家の外でも会えるってはいい、です」


「ふんふん、うちもこれには興味がありますね。普通は見れないものが見える、これを突き詰めれば逆にμαを通してアヤカシが見ることも出来るようになるかもしれないね」


 アズサもライチもネックレスに興味を持ったようだ。それはリンネたちとは違った理由ではあるようだった。


「そう、それそれ、あの幸子ちゃんってアヤカシなの? 始めてみたんだけど」


 レイネがライチに尋ねる。


「それは───」


「それについては私から話そうと思うわ、みんなお腹すいたでしょお昼を食べながらお話しましょ」


 そう言ってカナが障子を開けて話しかけてきた。


「ボクもうお腹ぺっこぺこだよ」


 ぐるるるると獣の唸り声のような音を鳴らしながら恥ずかしそうにアカリが立ち上がる。それを見てそれぞれも今更ながらお腹が空いていることに気がついたかのようにお腹を擦っている。


「カナさん、お世話になります」


「よし、それじゃあ付いてきて」


 リンネたちがカナの後を付いて行くとそこには、ご飯にお味噌汁そして卵焼きとお漬物となんだか朝食のような物が用意されていた。


「ごめんね、ちゃんとしたのは夜に用意するから、いまはこれで我慢してね」


「いえ、ありがとうございます」


 みんな席に座り手を合わせる。


「「「いただきます」」」


 食事を始めたリンネたちだが、気がつけば空いている席に座敷童が座っていた。

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