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ユニーククラス戦乙女を獲得したのはいいのだが、その影響で美少女になったようだ  作者: 三毛猫みゃー


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第42話 残念なミノタウロス

 そこにそいつは存在していた。


 胸から二の腕にかけ、はちきれんばかりの筋肉をまとい、腹は6つどころか8つに割れており、さながら筋肉の鎧をまとっているように見える。そして身につけている衣服は唯一つ、ブーメランパンツだけをまとっており、堂々たる立ち姿を見せている。


 身の丈は三メートルはあるだろうか、その体を支えるには少し不自然な程に細い牛のような後ろ足をしており、手に持つ武器は身の丈ほどもある巨大なハルバードである。


 頭部にはネジ曲がった角が二本生えており、鼻には鼻輪が付いていて、まさに牛そのものである。そのモノの名はミノタウロスと呼ばれている怪物だ。彼はこのダンジョンでは人気者である。


 彼の人気の理由はそのマッスルな筋肉だけではない。そう彼が倒された時にたまに落とすレアアイテムが人気の理由であった。彼が落とすレアアイテム、それは最高級牛の肉500gだ。


 そうなのだ、このミノタウロスは高級な肉を稀に落とすのである。それを狙い何度も何度も戦いを挑むパーティーがある。最高級肉のドロップ確率は10%ほどだと言われている。


 リンネは最初にミノタウロスを見た時、その存在感から強敵だと思っていた。そんなミノタウロスなのだが、可哀想なことに今となってはリンネ達によって作業のように倒されてしまっている。どうしてそうなったかと言うと……。


「すごい筋肉だな、アイツは強いのか?」


「えーっと、多分まともに戦えば強いんじゃないかな」


「まともに戦えばってどういう事だ?」


「なんて言ったら良いのかな、あのミノタウロス見た目に反して可哀想なくらい残念なんだよね」


「ボクも最初見た時はあんなのどうやったら倒せるのかわからなかったよ」


「ほんとにね、先輩方からは色々と聞いておりましたが、あの姿を実際に見るとびっくりしましたわ」


「最初は私が行くからリンちゃんは見ておいてよ」


「一人で戦うのか」


「見てたらわかるけど、一人で戦っても全員で戦っても対して変わらないからね」


 レイネは刀を抜くとミノタウロスに向かって歩いていく。ある一定まで近寄るとミノタウロスがレイネに向かって「ブモォォォォォォ」と咆哮を上げる。


 そのミノタウロスだが最初の位置から一歩も動かない、それどころか右手で持ち地面に突き立てているハルバードを構えようとすらしない。そのまま歩いて近寄ったレイネが刀で袈裟斬りにするとミノタウロスは泥となり消えていった。


「…………は?」


「まあ、こんな感じだよ。あのミノタウロスって筋トレのし過ぎで自分の筋肉の重さでまともに動けなくなってる感じなんだよね」


「何だそれは、駄目だろ」


「昔はああではなかったようですわよ、もっとスリムで適度のムキムキ筋肉のミノタウロスだったらしいですわ」


「それにね筋肉の鎧って言われるほどの筋肉だけど、結局筋肉にかわりないからね、刃物で斬ったり刺したりできちゃうわけだよ」


「何ていうか可愛そうでもあるな」


「まあ、私たちのとっては簡単に倒せるし、たまにレアドロップで最高級のお肉を落とすんだよ、今日はそのお肉を集めるために周回するからね」


「そう言えばそんなこと言ってたな」


「一度五階層のボス部屋前に戻って、再突入の繰り返しだよ。戦うのは順番でね」


 というわけで、リンネたちのミノタウロスを倒し肉を集める周回が始まった。その闘い方は問答無用というか、ミノタウロスが可哀想に思えるほどの凄惨を極めていた。


 一刀のもとに斬り伏せるレイネ、ステップで近づきその股間へ斧を叩きつけるアカリ、モーニングスターで顎からかち上げ倒れた所をフルボッコにするミレイ、執拗に足へと矢を射掛けて倒れた所で頭部に矢を打ち込むアズサ、鬼火を召喚して一瞬で黒焦げにしてしまうライチ。


 そんな彼女たちの行動にドン引きしていたリンネだったが、よく見ているとミノタウロスはダメージを受ける度に「ぶもぉぉぉ♡」とつやのある声を出し、恍惚の表情を浮かべているように見えた。


 まるで「もっとー」と言っているように聞こえるその声を、一度は気のせいだろうと思ったリンネだが、次第にそれが現実だと認識することになった。そしてリンネはいつしか無心となり作業のようにミノタウロスと戦うようになっていた。


 このミノタウロスという魔物は、完全に設計を間違えていると言いたくなる存在であった。二足歩行には向かない細い足、筋肉が邪魔をしてまともに攻撃ができずほぼ棒立ちの有様で、ハルバードの支えがなければすぐにでも転んでしまうだろう。


 今のリンネにとって、このミノタウロスを早く成仏させてやるのが人情ではないのかとすら思っている。リンネたちはこの日、五階層のボス部屋が貸切状態だったのを良いことに、時間いっぱいまでミノタウロスを倒しダンジョン探索を終えた。


 リンネたちはミノタウロスをほぼ一撃で倒し、魔石とドロップを拾い、ボス部屋前に戻り再びボス部屋に突撃するといった行程を繰り返し、最高級肉と大量の魔石を手に入れた。


 この肉はドロップ時、腐敗防止の効果のある大きい葉に包まれていて汚れもなく新鮮だ。今回手に入れた肉は3セットほどだった。翌日も翌々日も、ひたすらミノタウロスを倒す作業に明け暮れたリンネたちは、最終的に最高級肉を10セットほど揃えることに成功する。これらの肉はすべてリンネたちの家で預かり、この週末にはパジャマパーティーとバーベキュー大会を開く事となった。



 週末がやってきた。金曜日の放課後はダンジョンへ行かずにみんな揃ってリンネたちの家へ来ている。アズサとライチもお泊りセットを持って来ていて、この日は泊まることになっている。


 学園からの帰りに、スーパーに寄り色々と買い物を済ませての帰宅となった。お肉はあるので、野菜やソーセージにジュースなどやお菓子を大量に購入している。バーベキューの道具はゲンタが買ったきり一度も使われていないものが、倉庫にあったので許可を取り借りている。


 ジューと網でお肉が焼ける音が聞こえる中でリンネがジュースの入ったコップを持って立ち上がる。


「えー、今日は俺のパーティー加入の歓迎会も兼ねているということでバーベキューをすることになりました。まあ長々と話すこともないので挨拶はこの辺で、みんなコップは持った? 持ってるね、それじゃあかんぱーい」


「「「かんぱーい」」」


 リンネは手に持っている飲み物を喉を鳴らしながら一気飲みする。


「ぷはぁー。それじゃあ焼いていくから、適当に食べてくれ」


 リンネはそう言って次々とお肉や野菜を焼いていく。


「こら、レイネもアカリもちゃんと野菜も食べなさい」


「「はーい」」


 お肉ばかり取っていくレイネとアカリのお皿に焼けた野菜を乗せる。焼くのに忙しいリンネにはレイネとアカリとミレイが順番にお肉や野菜を「あーん」といった感じで食べさせている。


 その様子をアズサとライチは不思議そうに見ているのだった。




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