第39話 ロックゴーレムでの金策
RPGゲームのような表現を使っております。
ド◯クエの戦闘メッセージをご想像下さいませ。
レイネに呼び止められたリンネは、隣を歩いているレイネへと顔を向けて「ん?」と軽くかしげる。
「あのね私、お兄ちゃ───」
ロックアリゲーターが現れた。
「ぐるがぁぁぁぁぁ」
「じゃま!」
レイネの一閃で、ロックアリゲーターを倒した。
「えっと、その、私ねお兄ちゃん事がす───」
ロックアリゲーターが三匹現れた。
レイネの渾身の一撃が炸裂した。
レイネはロックアリゲーターを倒した。
「はぁはぁはぁはぁ」
リンネが動く前にレイネが一人でロックアリゲーターを倒してしまった。レイネは息を継ぎながら辺りをくまなく索敵して戻ってくる。
「飲むか?」
リンネはレイネがウロウロしているうちに収納から水筒を取り出しレイネに渡す。
「はぁはぁ、ありがとう」
レイネは受け取った水筒を飲みリンネに水筒を返すと、そのままリンネは水筒から水を飲み収納にしまった。間接キスなのだがリンネは特に気にしていないようだが、レイネの口からは小さく「あっ」っという声がでていた。
水を飲み、間接キスの事を頭を振って思考から消し去り、レイネは再び辺りを見回して、魔物や人がいないことを念入りに確認する。そしてもう一度リンネに向き合う。
「お兄ちゃん私ね、お兄ちゃんのことが好きなの。だからね───」
ドゴワッという音とともに、リンネたちの足元から突如ロックゴーレムが現れた。とっさのことだったが飛び退くことでリンネとレイネに怪我を負うことはなかった。ただしレイネの体は怒りのためにふるふると震えている。
「おんどりゃ、このくそがーーーーー」
レイネの攻撃、スキル一刀両断が発動した。
レイネのμαには新しく一刀両断のスキルを獲得したと表示されている。
レイネはロックゴーレムを倒した。
「……うぅ、もうやだぁー、なんで、じゃま、するのよーーー!」
刀を鞘に仕舞ったレイネはその場にぺたん座りをして泣き出してしまった。リンネはそんなレイネの隣に座ると頭を膝の上にのせ膝枕をしながら、レイネの頭を撫で始める。
レイネは「ふえーん」と若干幼児退行したように泣いている。そんなレイネの頭をリンネは撫で続けている。この二人はここがダンジョンだということを忘れているのではないだろうか。
暫くして泣き止んだレイネは、自分がどういう体制なのか気づいた。そしておもむろにリンネの腰に手を回して抱きつき、顔をリンネのお腹に埋めると胸いっぱいに匂いを吸い込んでいた。
それに気が付いたリンネは、レイネの頭をを撫でていた手でパシリとレイネの頭を叩いた。
「いてっ」
「はぁ、落ち着いたなら起きろ」
「もう少しだけ……」
「まあ良いけど変なことはするなよ」
レイネは膝枕のまま顔を上に向け、リンネと視線を合わせようとしたが、邪魔な膨らみがありうまく出来なかった。
「ぐぬぬぬぬ」
レイネがぐぬぬと唸っているのを不思議そうに見ていたリンネは、一度首を振った後に話し始める。
「レイネの気持ちはわかっているつもりだ」
「ほんとう?」
レイネは目を見開いて驚いた表情を浮かべている。
「俺が風呂に入っている時に俺の部屋に入って枕に顔埋めてたりしてただろ?」
「うぐっ」
「それとだ、今は見かけないが、少し前まで脱衣所に隠しカメラがな」
レイネが突然起き上がろうとしたが、リンネに頭を抑えられて起き上がることが出来ないでいる。一生懸命足をジタバタしていたが諦めたようにその動きを止めた。
「はい……、私が全部やりました」
抵抗をやめたレイネは先程と違った意味で涙目である。
「まあいい、そうだな、次の週末にでもリオンさんに相談しようか」
「相談?」
盗撮などを相談されるのだろうかとレイネの表情が若干引きつっているが、それは杞憂だったようだ。
「俺とレイネのワルキューレに関して、だな」
「いいの? 私達兄妹なんだよ?」
「俺はレイネの事が大事だ、それにな男だった頃からレイネの事は妹以上に思っていた」
「えっ、そうなの」
ガバリと起き上がりレイネはリンネと視線をあわせる。
「そうなんだよ。だけどな兄妹だったから気づいていないふりをしてたんだよ、でも女となった今なら……」
「そうなんだ……えへへ」
レイネはにへらと笑ってリンネに抱きつく。抱きついてきたレイネの背中をトントンとなでるリンネ。しばらくすると落ち着いたのかレイネはリンネから離れて立ち上がる。
「お兄ちゃん、今度の週末約束だからね」
「おう」
リンネは差し出されたレイネの手を取り立ち上がりそう答える。
「それよりもだ、目的のロックゴーレム倒してしまったんだが」
「あっ」
「まあもう一回探すか」
「お兄ちゃんごめんね」
その後、なんとかロックゴーレムに遭遇できたリンネとレイネは、無事にロックゴーレムを見つけることができた。
「それでこいつでどうやって肩慣らしするんだ?」
「それね、ロックゴーレムってめちゃくちゃ攻撃が遅いんだよね。だからねこうやって避けながら関節部分だけ攻撃してバラバラにしたらって感じかな」
そう言ってレイネはロックゴーレムの指の関節部分だけを攻撃して、指をバラバラにしてしまう。そのバラバラになった指が地面に転がり、手の方はすぐに指が再生されている。
「すごいな」
「ま、そんなわけでお兄ちゃんもやってみてよ」
レイネが下がり代わりにリンネが前に出て、直剣を構える。そしてリンネはロックゴーレムの攻撃に合わせて前へと踏み出し、直剣を振るう。直剣での攻撃はあっさりとロックゴーレムの指だけをすべて切り離してみせた。切り離された指は再び地面に転がり、手の方の指は再生される。
「さすがお兄ちゃん」
「まあこれくらいはな」
その後は何度も指だけを切り離す作業を順番にこなしていく。その度にゴロゴロと転がっている指が増えていく。
「それでね、これを繰り返しているとね」
レイネがそう言ったタイミングでロックゴーレムの指に変化が生まれた。切り離され再生した土色の指の色が白銀色に変わっているのが見えた。
「これはどうなってるんだ?」
「うふふー、ここからはその色の変わった境目を狙って切り落としてね」
「わかった」
「ちなみにその白銀色の所はミスリル銀だからね」
「はっ? ミスリル銀? なんでそうなる」
「さあ、わかんないけど偶然見つけたんだよね、最初見つけた時は私達もびっくりしたよ」
その後も指と手の境目を切りまくり、ある程度地面に溜まった所でレイネがとどめを刺し、ロックゴーレムは泥となって消えた。ロックゴーレムは泥となり消えたが切り落とした指はそのまま残っている。
「あとはこのミスリル銀を回収してみんなと合流だね」
「おう」
レイネがブレスレットから箱を取り出して、リンネとレイネはそこにミスリル銀だけをつめていく。
「こっちの土色のはこのままでいいのか?」
「うん、それはそのうち泥になって消えるから良いよ」
「もしかして、このミスリル銀のも放っておいたら泥になって消えるのか?」
「そうだよ、だけどダンジョンの外に持ち出したら消えることはないね」
「それでこれはどうするんだ?」
「普通に売るよ、購買で買ってくれるんだよね」
「あそこって買い取りもやってるのか……」
「よし、これで全部かな、それじゃあみんなと合流しよっか」
ミスリル銀を詰め込んだ箱を収納に入れてからレイネはμαの操作をする。脱出ゲートで集合とメッセージを送るとすぐに了解の返事が返ってきた。
「みんなも終わってるみたいだし行こう、これを売ったお金で今日は豪遊だね」
「ちなみにいくら位になるんだ」
「この量だと5万くらいかな」
「それは、良い稼ぎなのか?」
「そうだよー、だってこの辺の魔石なんて一個500円くらいだよ、それを考えると破格でしょ」
「言われてみればそうかもな」
「前まではこの複数使えるブレスレットの収納もなかったから持ち帰れる量も少なかったからね」
ブレスレットを掲げて笑っている。そのままμαでゲートの位置を確認しながら歩いて脱出用のゲート前までたどり着く。そこではアカリたちが既に揃って待っていた。
「お待たせ、みんな成果はどうだった?」
「バッチリだよ、このブレスレットはホント便利だね」
「こちらも十分な成果を得られましたわ」
「じゃあ今日はこの後豪遊だね、それじゃあ帰ろっか」
「「「おー」」」
レイネの号令に従い、脱出用の赤いゲートのをくぐりリンネたちはダンジョンから抜け出した。





