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ユニーククラス戦乙女を獲得したのはいいのだが、その影響で美少女になったようだ  作者: 三毛猫みゃー


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第33話 ダンジョンコアの価値

「な、な、な、何やってるんですかー」


 リオンは袖口で唇を拭い、何でもない風に返答する。


「何と言われても実験だよ、なんならレイネくんとミレイくんも試してみるかい」


「し、しませんよ、私とお兄ちゃんは、きょ、兄妹だし」


 レイネは口ではそう言っているが、兄とのキスをするチャンスを勢いに任せて棒に振ってしまったことを少し後悔している。想い合っている者同士じゃないと駄目というのは、もしリンネとキスをしてスキルワルキューレが発動しなかったらと考え躊躇してしまってもいる。


「わたくしもご遠慮いたしますわ」


 リンネから顔をそらしたミレイも断る。


「それは残念だな」


 いっぽうリンネはリオンとのキスがよっぽど刺激的だったのかぽわーといった風になっており、焦点の合わない目はぼーっと天井を見上げている。


「お兄ちゃん!」


 レイネがそんなリンネの肩を掴みガクガクと揺らすことでリンネは正気を取り戻した。


「リオンさんいきなり何を」


「あー悲しいなー、リンネくんは私の事を好いてくれていなかったようで残念だよ」


「いや、えっと、その、すみません」


「はぁ、リオンあまりリンネたちをからかうな」


「そうだなすまんなリンネくん、ちょっとした冗談だ。といっても実験のためだったのは本当だがな。本来ならレイネくんに協力してもらいたいのだが無理強いも良くない、とりあえずはアカリくんとの条件が整ったら教えてほしい」


「わかりました」


「こちらの方でも、リンネくんやアカリくんを通さずにカリンくんを見る方法が無いか考えてみるつもりだから、そちらに関しても協力を頼むかも知れない」


 リンネとアカリが揃って頷く、カリンもうなずいているが見えているのはリンネとアカリだけなので、リオンには伝わっていない。


「さてと、リンネくんとアカリくんにはこの後少し検査に付き合ってほしい」


「検査ですか?」


「そうだ学園の病院施設で受けたものとは違って、もっと専門的なデータを取りたいのだよ。それにワルキューレになったことで何が変化したのかなども一度調べておいたほうが良いだろうからな」


「そう、ですね、一度ちゃんと調べてもらったほうがいいかもね、アカリもそのほうが色々安心できるだろ」


「ボクもかまわないですよ」


「よしそれじゃあ二人とも早速地下へ行くぞ」


 リオンは席を立ちさっさと歩き出す。


「おいリオン焦り過ぎだって行っちまった、すまんなリンネにアカリちゃんアイツと一緒に行ってほしい」


「わかったよ」


 アカリとリンネが立ち上がりバタバタとリオンを追いかけていく。一緒に行こうと立ち上がるレイネをゲンタは待つように言ってもう一度ソファーに座らせる。


「まあ、なんだ、レイネにミレイは不用意にリンネとキスしたりするなよ」


「し、しないよ」


「わたくしもしませんわよ」


「それなら良いんだが、リンネの態度を見てたらわかると思うが、お前ら二人のこともリンネは大切に思っているからな。流石にそれが愛情なのか信頼なのかはたまた家族愛なのか、それとは別の感情なのかはわからんがな、そしてお前ら二人は言わんでも自分のことだからわかるだろ」


「それは、そうだけど」


「戦乙女もワルキューレもよくわかってない上に、ゴブリンキングを圧倒的な力で簡単に倒してしまうほどだ、だからな二人にはよっぽどのことがない限り自制してほしい」


「わかりましたわ。話はそれで終わりですわよね、わたくしは先に帰らせていただきますわ。色々準備をしないといけませんから」


「ああそうだったな、すまんなミレイ」


「かまいませんわ、これに関してはわたくしも好きでやりますので」


 そう言ってミレイは部屋から出ていった。ゲンタとミレイの二人だけで話が通じていて蚊帳の外なレイネだが自分には関係ないと思って聞き流している。


「おじさん、話はもう終わり? 終わりならお兄ちゃんの所行くけどいい?」


「おう話は終わりだ、すまんな」


「まあ、おじさんの懸念もわかるし、私も踏ん切りがつかないから今はまだ……。それじゃあいくね」


 レイネも部屋を出て行き、ゲンタはため息をついた後、執務机へ移動して書類仕事を始める。ある程度は落ち着いたが、まだまだ大変遷での影響は続いていてしばらくはゆっくりできそうにない。



 リンネとアカリの検査を終え、翌日に結果を聞きに来るようにと伝え帰らせたリオンの元へゲンタがやってきた。


「おう、どうだった?」


「来たか。そうだな予想通りとも言えるな」


 リオンは検査結果を印刷した紙をゲンタに渡しながらコーヒーを飲み始める。しばらく部屋の中ではゲンタがパラパラと紙をめくる音だけがしている。一通り読み終わった紙をテーブルに置き、ゲンタはコーヒーメーカーに残っていたコーヒーを紙コップに注いで一口飲む。


「アカリちゃんのμα(ミーア)もリンネと同じになってるってことでいいのか?」


「多分な、完全に解析がまだ終わっていないから全く同じかどうかまではわからんが、データを見る限りではそうだ」


「それ以外の変化は特にないのか?」


「若干前回のデータよりリンネくんの身体能力が上がっているが、それに関してはおかしくない範囲だからな。アカリくんの方は4月にあった学園の身体測定時のデータと比較しても上がり幅におかしな点はないな」


「ワルキューレになったからといってなにかが変わるということはないってことか」


「そうなるな、まあ二人に変化がないとしてもワルキューレの能力が桁違いだからな」


「お前の録画していたものを見る限りワルキューレに対抗できる存在は少ないだろうな」


「よくいう、お前ならどうとでもなるだろ」


「さてな、あれが全力ではないだろうからな、わからんとしか言えんな」


 残ったコーヒーを一気に飲むと紙コップを潰してゴミ箱に放る。


「また何かわかれば教えてくれ、今日はこのまま仮眠室で寝るわ」


「おつかれ、私はもう少しデータを纏めている」


「お前も無理はするなよ」


 そう言ってゲンタは部屋を出ていく。それを見送ったリオンは一度伸びをしてからキーボードを打ち始める。



 翌日の放課後リンネたちは揃って再び覚醒者協会へと訪れていた。普段なら一時間でも時間があればダンジョンへ潜ってから向かうのであるが、今は各所のダンジョンのほとんどが閉鎖されており潜ることが出来無くなっている。


 それは中等部ダンジョンも高等部ダンジョンも同じだ。それに中等部ダンジョンは既になくなり消滅が確認されている。中等部ダンジョンはリンネたちが脱出を果たしたおよそ一時間後に突如消滅した。


 なぜ消滅したのか、それはリンネがダンジョンから脱出する前に拾ったダンジョンコアが原因である。そもそもダンジョンコアというものは破壊しない限りダンジョンから持ち出すことが出来ないと思われていた。


 だがゴブリンキングがダンジョンコアを喰らい、そして倒された結果ダンジョンコアだけ残された。それをリンネが拾い外へ持ち出されたというわけだ。そしてダンジョンコアがダンジョンより消失したことによりダンジョンは消滅した。


 ちなみにダンジョンコアは覚醒者協会が買い取り、今はリンネの手元にない。今頃はどこかの研究施設で研究者が狂喜乱舞のダンスを踊っていることであろう。


 買取価格は、ダンジョンから完全な形で外へ持ち出された、世界で唯一のダンジョンコアとしてかなりの金額が提示された。もともとダンジョンコアなど持っていても仕方がないと思っていたリンネたちは一も二もなく売り払うことに決めた。リオンも含めて五等分しても全員に億単位の金額が分けられたといえばその価値もわかるものだろう。

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