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ユニーククラス戦乙女を獲得したのはいいのだが、その影響で美少女になったようだ  作者: 三毛猫みゃー


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第28話 初めての口づけ

「アカリーー!」


 リンネは倒れ伏すアカリを抱き上げその勢いのままゴブリンキングから離れる。ゴブリンキングはそれを特に邪魔することなく見送り機嫌良さそうに笑っている。リンネはアカリを抱きしめたままレイネとミレイの元へ走った。


「ミレイ、アカリを!」


「は、はい」


 そっと地面にアカリを寝かせたリンネはアカリの手を握り呼びかけ続けている。ミレイがヒールを使ったことにより、アカリは一度咳き込み意識を取り戻した。


「アカリ」


「あはは、ドジしちゃった、みんな、ごめんね」


 アカリはかすれた声でそう言い再び咳き込む、その咳には血が混じっていた。そのためゴブリンキングの攻撃は内臓にまでダメージが及んでいることが容易に想像できた。


「どうなってるのミレイ、アカリの傷が塞がらない」


 レイネはヒールを使い続けるミレイへ視線を向ける。ミレイは額に汗をにじませ精神力を振り絞りアカリを治そうとしているが一向に傷が塞がる気配がない。


「ミレイ、もう、いい、よ」


「そんなわけにはいきませんわ、しっかりしなさい」


 そうこうしているうちにゴブリンキングが動き出し、一歩一歩ゆっくりとリンネ達の所へ向かってくる。


「お兄ちゃん、ミレイ、アカリをお願い」


 レイネは一人立ち上がると腰に挿していた刀をその場に置く。その代わりとしてブレスレットから薙刀を取り出した。


「俺も一緒に──」


 レイネはそんなリンネに向かって無言で首を振りアカリに一度視線を向けてからゴブリンキングへ向かって歩き出す。レイネの瞳は今にも涙が流れ出しそうなほど潤んでいた。リンネはそんなレイネを見て最後までアカリについていてほしいという意志を感じていた。


「(なにか、なにかアカリを助ける手立てはないのか……)」


 リンネがそう考えた時、レイネとゴブリンキングの戦いが始まった。レイネは武器を薙刀に変えたことにより距離を開け、そして攻撃するよりも時間稼ぎに徹することにしたようだ。ゴブリンキングの持つ直剣は長いもののその軌道は読みやすい。


 そうしているうちにミレイが倒れてしまう。その額には汗により髪が張り付き顔色も真っ青になっている。ヒールの使い過ぎで精神力が尽きてしまったようだ。


「ミレイ!」


 ミレイは薄目を開けてリンネとアカリに視線を向けるとその瞳からは涙が溢れ出していた。浅い呼吸と共にミレイの口は「ごめんなさい」と動いたのがわかった。


「ねぇ、りんね、さん、しって、ました? わたし、ね、りんねさんの、ことが──」


「話なら後でいくらでも聞いてやる、だから……」


 そこでふとリンネはあることを思い出し、急いでブレスレットに触れた。ブレスレットに触れることでリンネのμα(ミーア)で表示された視界にブレスレットの中身の一覧が表示されている。


 それを確認しその中から、叔父であるゲンタから渡された試作品のポーションを取り出す。中身がなにかや、本当に効果はあるのか、それに怪我にも効くのかなどはわからないが、頼るものはこれしか無いと思いリンネは急ぎ蓋を空けアカリに飲ませようとした。


 だがアカリの意識は既になく仮に口に含ませても飲み込むことが出来無さそうに思えた。そこでまずリンネは見えている傷にポーションを振りかけた。効果は思っていた以上に劇的であっという間に傷は塞がった。だが傷は塞がってもアカリの表情は生気が抜けたようになっており、呼吸もいつ止まってもおかしくないままだった。


「アカリ、もし初めてだったらごめん」


 意識のないアカリに対して少し後ろめたさを感じながらも、これは緊急事態で人命救助のためだと言い訳をしながら、リンネは残っているポーションを少量自らの口に含んだ。


 リンネはアカリの頭と背中に手を添えて軽く起き上がらせる。そしてリンネはアカリの唇を塞ぐように自らの唇を重ねポーションを口移しで流し込んだ。


 ポーションがリンネの口内からアカリの口内へ流れ込んでいく。リンネはポーションが気道に入らないこととアカリがうまく飲み込んでくれることを祈るような気持ちで待った。


 そしてアカリの喉が液体に反応し喉を鳴らしポーションを嚥下したのがわかりホッとして離れようとした時それは起きた。突然リンネのμα(ミーア)がひとりでに動き出し、リンネの視界にメッセージを表示させたのだ。


<条件の達成を確認、戦乙女のスキルが開放されました>


 突然ポップアップしてきたそのメッセージを確認した直後、リンネの意識は闇の中へと急速に落ちていった。



「ふむ、この状況はどういったことだろうか」


 中等部ダンジョン最下層のボス部屋が見える位置で立ち止まった祭音さいねリオンはそう呟いていた。リオンの姿は、研究者の着る白衣をまとい、その上にはマントのように袖を通していない薄手のコートを肩にかけている。


 リオンのいる通路から見える部屋の中には、複数のゴブリンがボス部屋への道を作るように整列している。


(今のところリンネくん達の痕跡はなかった、その上ダンジョンから出てきていないということはボス部屋に入ったと考えるのが妥当か。それにあのボス部屋へ誘導するように整列しているゴブリンの集団を考えると……)


 ボス部屋に入るべきだという結論に達したリオンは、そのまま歩いて部屋に入りボス部屋のゲートへ向かって歩いていく。ボス部屋を目指しているリオンに対してゴブリンは全く反応を見せない。このゴブリン達はボス部屋に向かうものには攻撃をしないように操られているかのようであった。


 そしてそのままダンジョンボスの部屋へ続くゲートにリオンはためらうこと無く入って行った。ゲートをくぐったリオンの目に最初に飛び込んできたのは、薙刀でゴブリンキングの直剣の攻撃を受け止め、その勢いを利用して後ろに下がるレイネの姿だった。


 レイネはまだ大丈夫だと感じたリオンは視線を動かし他の面々を探す。その姿はすぐに見つけることが出来たが全員が倒れ伏している。間に合わなかったのかと焦りながらリンネ達の元へ走り、全員の息があることを確認してリオンはホッとした。


 リンネは特に外傷もなくただ意識を失っているだけで、アカリもポーションのおかげか傷は癒え呼吸も正常に戻っている。ミレイも気を失っているようだがリオンにはそれが精神力が切れたためだと察しがついた。


 リオンは腕につけているブレスレットから赤いポーションと青いポーションを取り出し、倒れているリンネ達に振りかけた。ポーションが振りかけられたことにより真っ青だったミレイの表情は赤みを増し、呼吸が落ち着き始める。


 こちらはこれで大丈夫かとレイネとゴブリンキングに視線を向ける。リオンはレイネの戦いぶりに驚きを覚えた。積極的に攻撃をしているわけではないがゴブリンキングから致命傷を受けること無く対応出来ている。


 リオンは杖を手に持ち走りながらスキルを使う。


「火炎柱」


 突如炎の柱に包まれたゴブリンキングに驚き後ろへとバックステップするレイネ、そのレイネと合流するリオン。


「すまない遅くなった」


「えっ、どうしてここにリオンさんが?」


「ゲンタに頼まれてな、急いできたのだがすまないな」


「いえ、助かりました」


 そんなレイネにリオンは取り出したポーションを渡して飲むように促す。飲んで良いものか一瞬ためらったが、覚悟を決め一気に飲み干した。そのポーションの味はかき氷に使うシロップのような甘さを感じるものだった。


「なんだか疲れが取れた気がします。あっアカリたちは──」


「大丈夫だ、みんな気を失っているが呼吸も安定しているそのうち目を覚ますだろう」


「お兄ちゃんも気を失ってるんですか?」


「怪我なども無さそうだったが気を失っていたな」


 レイネは兄が気を失っていることを疑問に思いながらも、死を覚悟していたアカリが無事だったことを知り、驚きとともに心の底から安堵していた。


「それよりも問題はこちらだな」


 そう言ってリオンは未だに炎に包まれたままのゴブリンキングに目を向ける。


「あれで生きているのですか?」


「あれがゴブリンキングなら、あの程度では倒せていないだろうな」


 リオンがそう言うと同時に炎の柱からゴブリンキングが歩きながら出てくる。所々に火傷を負っているようだが大したダメージにはなっていないようだった。


「さてと、私達二人であれをどうにかしないといけないわけだが、レイネくんはまだ大丈夫かい?」


「大丈夫です、行けます」


「ふふ、頼もしいな、攻撃は私に任せて先ほどと同様に無理に攻撃はしなくて良い」


「わかりました」


 ポーションにより細かい傷や体力が回復したレイネは薙刀を構える。ゴブリンキングとの戦いはリオンを加え更に激しさを増していくのであった。




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