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ユニーククラス戦乙女を獲得したのはいいのだが、その影響で美少女になったようだ  作者: 三毛猫みゃー


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第26話 ゴブリンキング

 時はリンネたちが最下層に降り立ったところまで戻る。その日、国内の覚醒者協会には朝から各方面より連絡が絶え間なく届いていた。


 それは霧影きりかげゲンタが支部長を務める第一ダンジョン都市覚醒者協会第一支部も同じだった。各所に職員を派遣して調査を続けた結果、確認できたすべてのダンジョンが大変遷だいへんせんを起こしたと結論づけられた。


 ダンジョンの大変遷とは、ダンジョンの一部もしくは全てが突如として変わってしまうというものだ、最初に変遷が確認されたのはダンジョン発生からおよそ10年経った頃だった。


 最初はそれが変遷へんせんだとは誰も気が付かなかった、なぜなら途中の階層まではゲートの位置も出てくる魔物も今までと同じだったからだ。だがある階層まで降りた所で違和感に気がついた者たちがいた。


 その階層は今までと違っていた上に、魔物の強さが変わっていた。そのパーティーは犠牲者を出しながらも帰還を果たした。そして帰還したパーティーから報告を受け、覚醒者協会が調査した結果、今で言う変遷といった事象が確認されることになる。


 それ以降変遷はいつどこで起こるかわからないながらもその存在は知られることとなる。そしてダンジョン発生より20年後、すべてのダンジョンで変遷が起きた、いわゆる大変遷である。


 世界中で起きた大変遷により、覚醒者に相応の犠牲は出たがそれを乗り越え現在に至っている。そしてダンジョン発生からおよそ50年のいま、再び世界中のダンジョンで大変遷が起きたことになる。


「くそっ、リンネにもレイネにも連絡がつかん」


 μα(ミーア)でリンネやレイネに通信を繋げようとしているが一向に繋がる気配がない事にゲンタは苛立っていた。ここは覚醒者協会の最上階にある支部長室だ、そこには霧影ゲンタと祭音さいねリオンの二人がいる。


「落ち着けゲンタ、まだリンネくんたちになにかあったと決まったわけではないだろ」


「だがな、これだけ各所から変遷が起きたと報告が来ているんだぞ、誰が考えても大変遷の再来だ、そうなると学園のダンジョンにも変遷が起きているはずだ」


「そもそもだな、ダンジョンに潜っているのなら通信が繋がらないのはわかっているだろ」


「なら俺が直接行って──」


「バカかお前は、支部長が狼狽えていては今も各所で奔走している部下たちに示しがつかんだろ、それにお前はここで指揮を取らねばならん」


「だが」


「だからな私が行こう、学園内のことでもあるからな」


 ゲンタは驚いた表情を浮かべてリオンと視線を交わす。


「リオン……、頼めるか」


「任せたまえ、リンネくんは私にとって貴重な研究対象だからな」


「はぁ、お前なー……。すまんがリンネたちの事は頼む」


「少しは余裕を取り戻したようだな、それでは私は行く、お前はお前のやるべきことをして待っていれば良い」


 リオンはそう言い残し支部長室から出ていく。ゲンタは各方面から上がって来る報告書を読みながら各所に連絡を取り指示を出し始める。



 ボス部屋へのゲートに投げ飛ばされたアカリを追ってリンネもゲートへと飛び込んだ。


「アカリ!」


 リンネの声がボス部屋に響く。リンネはアカリの姿を探し視線をめぐらし、地面に倒れ伏しているアカリを見つけ駆け寄る。


「アカリ、大丈夫か」


「いちちち、ごめんリンさんへましちゃった」


「動けるか?」


「ちょっとまだ無理かな、ブレイブヒートを使っちゃうとこうなっちゃうんだよね」


「怪我とかじゃないんだよな、なら良かった」


 リンネはアカリに怪我がないことを確認してホッと胸をなでおろした。リンネは余裕ができたことでもう一度周りを見回す。丁度その時リンネを追ってきたレイネとミレイが何もない空間から飛び出してきた。


 レイネとミレイがリンネとアカリを見つけ駆け寄ってくるのを横目に見ながらリンネはボス部屋の奥に視線を向ける。リンネの視線の先には玉座があり、そこにはリンネの倍近い身長の人の形をした何かが座っていた。


 今のところは動き出す気配はないが、その姿を見た事でリンネの背中に冷や汗が流れる。リンネの本能があれは危険だと訴えている。そんなリンネの姿を見てレイネはリンネの視線の先を見つめ動きを止める。


「ゴブリン……キング」


 レイネのμα(ミーア)には玉座に鎮座している何かの情報として、ゴブリンキングの名が表示されている。そしてそのゴブリンキングの姿を見てレイネは警戒を強めた。


「アカリ、回復しますわ」


「ごめんミレイ、お願いするね」


 ミレイはアカリの横に座りアカリに手をかざす。


「ヒーリング」


 傷を回復するヒールと違い、ヒーリングは傷以外を回復するスキルになる。今のアカリは怪我で動けなくなっているわけではなく、いわゆる気力や精神力などと言われている物が枯渇した結果動けないでいる、なのでヒーリングを使うことでそれを回復できるというわけだ。


「あ”ーきもちぃ~」


 ゴブリンキングを目にして冷や汗を流しているリンネとレイネの緊迫した状況などお構いなしに、そんな声を出しているアカリは空気が読めないのか大物なのか判断に困るところである。


 気力が回復して動けるようになったのを確認しアカリが起き上がる。


「ミレイありがとう、助かったよ、それでリンさんもレイネも何をして……」


 アカリはここでようやくリンネの視線の先にいる存在に気がついた。眠っているわけではないのだろうそれは不思議と動き出そうとはしていない、だがその身から溢れ出している気配はアカリに恐怖を与えるには十分なものだった。


「うひぃ」


 アカリは息を呑み自然と足が後退りをしていた。ミレイはそんなアカリを見てゴブリンキングの方に初めて視線を向け動きを止める。ミレイは体がひとりでに震えだしその身を掻き抱くように自らの腕で抱きしめる。


「ふぅー……」


 リンネは軽く呼吸を繰り返し、最後に息をすべて吐き出す。視線は未だに動かないゴブリンキングに向けたままレイネの手を取りアカリとミレイの元へ引っ張っていく。


「レイネ大丈夫か?」


「おにいちゃん、どうしよう、あんなのむりだよ」


 瞳に涙を溜め今にも泣きそうな顔をしている。そんなレイネを抱きしめ背中をトントンと叩く。


「大丈夫だ、俺がなんとかしてやる」


 しばらくそうしているとレイネは落ち着きを取り戻したのか、強張っていた体の力を抜きリンネから離れる。その顔からは恐怖は抜けているようだ。


「ありがとうお兄ちゃん、落ち着いたよ」


 リンネとレイネは未だに恐怖に囚われているアカリとミレイに声をかけなんとか落ち着かせる事に成功する。落ち着きを取り戻したリンネたちはゴブリンキングからなるべく離れるように壁際まで後退して作戦会議を始める。


「ボス部屋からは撤退ができると聞いてたけどどこから出るかわかるか?」


「それがね、脱出用のゲートが見当たらないんだよ」


「そうか、ならここから出るにはあれを倒さないといけないわけだな」


 全員の視線が未だに動きを見せないゴブリンキングに向かう。相変わらず威圧は感じられるが、先程まで感じていた恐怖はなくなっている。


「やるしか無いか」


「そうだね、私も覚悟を決めるよ」


「ボクもやるよ」


「仕方ないですわね」


 リンネたちは立ち上がり覚悟を決める。それぞれが獲物を手にとり視線を交わし頷く。そしてゴブリンキングへ向かい歩き出す。


 そしてついにゴブリンキングが玉座から立ち上がった。




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