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第144話 他国のμα

 リンネたちのパーティーは順調に階層を攻略していき百階層にたどり着いていた。


「ほんとうに百階層にボスがいないんだね」


 レイネがなにもない殺風景な景色を眺めながらつぶやく。


「最初に来た時は神殿みたいな柱が立っていたのに、今はなにもないね」


 アカリが言うように、初めて百階層に来た時は神殿のような太い柱が複数立っており、ヤマタノオロチがボスとして現れた。だが今は、広さは変わらないようだが、天井を支えるような柱は見られない。とはいえ天井を見上げてもなにもないので、支える必要すらない。


「とりあえず他のチームが来るまでまだ何日か掛かりそうだんだっけ?」

「そうだな。残りのチームが百階層にたどり着くのは、早くても二日かかるだろう」

「それじゃあ二日は休むってことでいいか」


 リンネたちは脱出用のゲートへ向かう。早くて二日、遅ければ四日ほどはかかるのだろう。そう言った事情で交渉チーム全員が揃うまでは猶予があることになる。


「先に次の階層に行っておくって駄目なの?」

「別に構わないと思うが、他国との関係がどうなるかわからないのであまりおすすめはしないな」

「リオンさんは英語話せますよね?」

「話せるがどういった交渉をするかまでは聞いていなからな

「そうなんですか?」

「今回私がここまで来たのは半分調査のためだからな」

「あーそんなこと言ってましたね。ちなみに何を調査するんですか?」

「ふむ。まあリンネくんたちになら話しても良いかもしれないな」

「あっ、面倒そうな案件なら話さないでください」


 面倒事は困るというようにリオンに釘を刺すリンネだったが、それをリオンが聞き入れるわけもなくリオンは脱出ゲート前で立ち止まる。


「そう言わずに聞きたまえ。外ではおいそれと話せないこともある。それにリンネくんは知っておくべきことかもしれないな」

「はぁ、このまま聞かないほうが面倒そうですね。わかりました、丁度時間も良さそうなのでお昼を食べながら聞きましょうか」


 リオンは収納リングからテーブルと椅子を取り出す。そのままそれぞれが昼食と飲み物を収納から取り出してテーブルに並べていく。昼食や飲み物はいつも常備している。だいたいはその日の昼食で消化する。今回は思いの外早く進み、午前中に百階層にたどり着いたため残っていたものになる。時間は丁度お昼を回ったところだったので話を聞きながら昼食をということになった。


「今回私が調査するのは、他国の者たちが使っていると思われるμαに関してだ」

「μαですか?」

「そうだ。ふむ、あまりわかっていないようだね」


 リオンはこの場にいるリンネたちを見回して、誰もがよくわかっていないというような表情を浮かべている。


「リンネくんならわかっているものと思ったがそうでもなかったわけだな」

「俺ですか?」

「リンネくんから聞いた話では、リンネくんは過去の記憶を受け取ったと聞いている」


 リンネは曖昧にうなずきながらも、今となってはあの体験は夢だったのかわからなくなっている。実際リンネの体はこの時代のこの世界で意識を失って存在していた。リンネとしては、実際に体験したようにも思えるが、あれがμαの見せていた仮想現実だったようにも思えていた。


 よくよく考えると、百年前の人たちの姿や名前が今のリンネたちと変わらないというのがおかしいと思う理由でもある


「私が思うにリンネくんが体験したことは実際に過去にあったことと仮定している。そのうえで、μαのマイクロチップがこの世界で初めて手にしたのが、百年前のリンネくんとうことになるのだろう」

「そうですね。あれが本当にあったことならそうかもしれませんね」

「それでだ、肝心のμαのマイクロチップは量産され人々の間に広まっていく事になった」


 リンネたちが頷いて返す。


「そこで疑問が一つ。海外の国々はμαもしくはそれに類似した何かを持っているのではないかということだ。


「あっ、そうか。μαが量産されるころにはとっくにダンジョンは生まれているし、他国との交流も途絶えていたってことだね」

「そのとおりだ。私が調べた範囲では海外流出したという情報は上がってきていない。そもそも盗み出すほどの価値あるものとは思われていなかったはずだ」

「そもそも他国の方たちはμαを持っておられるのですか?」

「つまりはそこだ。日本にμαがあるように、他国にもμαそのものかもしくはμαと似た何かがあるのではないだろうかということで調査しようとしているわけだ」


 こうしてリンネはリオンの目的を知ることとなったが、今度は別の疑問が出てきた。


「リオンさん、そもそも外国の方がμαそのものか、それに似た物を持っている前提で話していますよね。実際外国の方はそう言ったものを持っているのですか?」

「持っているはずだ。そうでないと自分のクラスがわからないからな」

「クラスがわからない? あっ、そうかクラスがわからないとまともに戦えない?」

「そういうことだ。そしてクラスというものはμαによって決定付けられている」


 リオンの今回の目的である調査とは、海外のμαがどうなっているのか、そしてどういった経緯で手に入れたのかなどを調べることなのだろう。そしてそれはリンネたちと同じように、ナノマイクロチップを直接脳に埋め込んでいるのかということも含まれていた。

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