第141話 リオンとの再会
「それでどうしてリオンさんがここにいるんですか?」
他国との交渉パーティーの一つとしてリンネたちも参加することになった。そしてその当日、現地についたリンネたちをリオンが待っていた。
「それはリンネくんたちについていけばおもし、いや基本的にどのパーティーにも交渉役が同行する事になっているからね」
「いま面白そうと言いましたよね」
「気のせいだろう。まあ、そういうわけでリンネくんたちの名前を見かけたものでね。リンネくんたちも知らない者を同行者とするよりもいいだろう?」
「それはそうですね」
実際、リオンの参加はリンネたちにとっては都合がいい。リンネたちのパーティーとも連携が取れることもそうだが、ワルキューレに関することも知っている。もしかすると、リンネたち以上に熟知しているともいえる。
「それにしても、カリンくんたちは再びその姿になったわけかい?」
そういったリオンの視線の先には、ミニサイズになり普通のμαでは見ることが出来ない姿になったカリンたちが浮いている。
「ああ、これはですね──」
◆
「それなら大丈夫ですよ」
そう言ったスズネはソファーに背中を預け目を閉じた。するとスズネの中から光が溢れ出し、そして光が収まるとミニサイズのスズネが浮かんでいた。
『といった感じで、以前の姿も出せるようです』
今リンネたちの前には、子供の姿のスズネとミニサイズのスズネが存在している。一方は肉体を持ち眠っているように目を閉じて浅い呼吸をしている。もう一方は、以前のミニサイズのスズネが空中に浮かんでいる。
「えっと、これってどうなってるんだ?」
『原理などはわかりませんけど、色々試した所できるようです』
「これってカリンやリィンもできるってこと?」
レイネの疑問に頷いて答えるカリンとリィン。
『ただこのこの姿になると肉体のほうが無防備になってしまうようです』
そう言ったミニサイズのスズネは再び光りに包まれ、もう一人のスズネに入って消える。
「あの姿をわたしたちは妖精モードと呼ぶことにしました。まだ試してはいませんが妖精モードでならダンジョンに行けることもできると思います。ワルキューレ化が使えるかは試してみないとわからないですけど」
妖精モードとしてスズネたちと共にダンジョンへ入ることができ、更にワルキューレ化ができるのならかなり楽にダンジョンを潜ることができる。ただ今のリンネたちなら仮にワルキューレ化ができなくても問題なく百階層まで行くことができる実力は備わっている。
それでも安全という意味ではワルキューレ化が使えるのと使えないのでは変わってくる。ワルキューレ化ができるかは試してみないとわからないとスズネは言っているが、リンネの感覚的には大丈夫そうだと感じていた。
「そういうことなら申請してみようか。今回ダンジョンに参加したチームは休養に入ると思うから高確率で参加できるだろうし」
「そうだね。百階層より先がどうなっているかも気になるし、もしかしたらお父さんやお母さんの情報も何か手に入るかもしれないからね」
そもそもリンネたちが原初ダンジョンに入る目的の一つが行方不明の両親の情報を得ることだった。百階層に潜るまでの間、今のところ両親や他の行け不明者の情報は得られていない。
だが百階層で他の国のダンジョンとつながっているかもしれないという事で、新たに何か情報を得られるのではないかとも思っている。
こうしてリンネたちは、百階層へ再び潜ることになった。
◆
「ということがあったんですよ」
「ほう、そういうことなら、今度肉体の方を検査をしてみたほうがいいだろうな」
「そうですね。できることならダンジョンへ行く前に検査をしたかったんですけど、リオンさんと連絡がつかなかったので」
「それはすまなかったね。今は色々と協会の方もごたついていてね」
「そんなごたついている状況で、今回のダンジョンに参加していいんですか?」
「たまの息抜きもひつようだからね。それに他国との情報交換も大事なことには変わりない」
実際のところ、殆どのダンジョンが消えたことで覚醒者協会はダンジョン以外の業務に駆り出されることとなっている。それも他都市間の整備やそれ以外の荒廃した地域の探索など、ある意味ダンジョン内よりも過酷な世界を開拓している。
成果としては、すでに人の住んでいないと思われていた地に少数の人間が暮らしていたという事例もあった。ちなみに、そういった者たちにはダンジョン都市の情報を伝えその後どうするからは本人たちに任せるといった方針のようだ。
実際生活おするだけなら、ダンジョンが生まれダンジョン都市が出来て以降の世界で自給自足をして百年近く生活を続けていた者たちだ。そのような生活をしていた者たちがダンジョン都市に合流する可能性は皆無だろう。
それでもダンジョン都市側は復興を進めていけば合流せざる得ないとも考えている。そういった考えのもと、現段階で無理をして迎え入れる必要もないだろうという結論に至っている。
そういったこともあり、今現在各ダンジョン都市の覚醒者協会は大忙しであった。
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MFブックス用中編はじめました。
ご一読いただければ幸いです。
【中編】おじさん騎士と召喚聖女の後日譚
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