第138話 変わりゆくもの
リンネ、レイネ、アカリ、ミレイの四人と、スズネ、カリン、リィンの三人がリビングでテレビを見ている。テレビでは今まさに、ダンジョンに関する重大な発表が行われようとしていた。
不思議なことに、スズネ、カリン、リィンの三人は妖精サイズではなくなったおり、小学生低学年ほどの姿になっていた。更に三人の姿はμαを通さなくても見ることが出来るようになっている。
それどころが、三人の姿は今ではリンネたち以外にも見ることが出来るようになっていた。そうなった原因は今でもわかっていない。ある朝リンネが目を覚ました所、リンネの布団の中に三人が今の姿のまま潜り込んでいた。
その後、リンネの悲鳴を聞いたレイネたちが部屋にやってきて修羅場になったのは言うまでもないだろう。スズネたち本人もなぜこうなったのかはわからないのだという。ちなみに、急いでライチとアズサに連絡をしたところ、ブリュンヒルドのサラも同じような姿になっていた事がわかることになる。
一度サキナとリオンを含めた全員が集まり、色々とリオンの考察の元話し合った。すぐには結論が出なかったが、それも時間がたつにつれわかってくるものも出てきた。
そのうちの一つが、ダンジョンが減りはじめた理由だろうか。もともと原初ダンジョンの子や孫として生まれ続けていた中規模と小規模ダンジョンだが、結論としてその役割を終えたためだと判明した。
ダンジョンの役割として考えられていたうちの一つが覚醒因子の分布だと考えられていた。覚醒因子が広がる事で、原初ダンジョンから離れた場所にダンジョンが生まれ、そこから覚醒因子がさらに広がり人類全てを覚醒させようとしていると考えられていた。
結局のところじわりじわりと覚醒因子は広がっており、ダンジョン消失が確認された頃には、ダンジョン都市から距離を取り暮らしていた人々も覚醒する結果となった。そのことからダンジョンが生まれるのは覚醒因子を広げるのが目的だったと結論付けられた。
それは日本だけではなく世界全体に覚醒因子が行き渡ったということになるのだろうと。そして覚醒因子が世界全体に広がったことで、不要となった小規模や中規模のダンジョンは消えたということだろうと。
そのことから、リンネたちはスズネやサラが人の子どもの姿となったのが覚醒因子を取り込んだためだと結論付けた。実際の所はどうなのかはわからないが、一番説得力があるのがそれだった。
詳細は今後も調べるということになっているが、この事が起きてから一年経った今でも調べることは出来ていない。ただ、今の状態で困ったことがあるのかというと、食費が増えた以外にはないのでリンネたちは気長に待つことにした。
今となってはリンネたちがダンジョンに潜ることはなくなっている。原初ダンジョン以外のダンジョンがなくなり、その上残っている原初ダンジョンも今はおとなしいために半封鎖状態になっている。今では一部のダンジョン協会職員が調査のためにダンジョンへ入っているだけとなっていた。
そんな中、リンネたちはダンジョン都市の外へおもむき、様々な調査に駆り出されていた。そこでは熱海カナや八井シラベとも再会を果たした。ダンジョンに潜れないとなると収入が得られないということで、ダンジョン攻略を生業としていた人たちも収入を得るために、ダンジョン都市の外へと出ている。
結局のところダンジョン都市と外を分ける必要がなくなり、少しずつダンジョン都市の外へと生活基盤が広がっていくことになる。今もインフラが整備されていき、通信網の復帰など少しずつ進められている。
そのおかげで少しずつ他のタンジョン都市とのやり取りや行き来が可能になっている。ただ、未だに連絡がつかないダンジョン都市もあり、近々連絡のつかないダンジョン都市への遠征も計画されているようだ。
そんな中で、今日は原初ダンジョンに関しての発表があるということで、リンネたちはテレビの前に集まっている。
「何の発表があるんだろうな」
「リオンさんも教えてくれなかったからね」
ここ最近叔父であるゲンタやリオンは忙しいようで、連絡がつかなかった。特になにかがあったというわけではなく、本当に忙しいということだった。
「最近ダンジョンに潜ってないから何を発表するのか検討もつかないね」
「そうですわね。リィンもわからないのですよね?」
「んー、わからないかな」
ミレイの問にテーブルの上に置かれているお菓子を頬張りながらリィンが答える。結局ここにいる誰も詳細はわかっていないようだった。
「何にしろ今の俺たちには関係ないとは思うけどな」
「そうだといいけどね」
リンネの楽観的な発言に、本当にそうだといいなという感じで答えるレイネだった。