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第135話 μαの原型

「さて、話は変わるがリンネくん君は元の時代に帰りたいと思っているということで間違いはないかな?」

「そりゃあ、俺の元いた場所が本当に未来だとしたらおかしな言い方になるけど。みんながどうなっているのか、俺自身がどうなっているのか気になるし」

「良い得て妙とはこのことだな。今のリンネくんが仮に元の時代に戻ったとして、今いる過去のリンネくんが未来のリンネくんの事をどうなったのかと心配するということだからな」


 リオンはうんうんと頷いている。


「まあそうだな、結論から言うとだ。今のリンネくんが今のまま未来へ戻るということはない」

「元のところへ戻れないということですか?」

「戻れないというのは少し違うな、戻る必要がないというのが正解だな」

「それってどういうことですか?」


 レイネが何を言っているのかわからないというふうにリオンに訪ねる。一方のリンネは以前リオンから聞かされた話を思い出していた。


「確かリオンさんは今の俺の記憶は俺の頭の中にあるマイクロチップに入っていた記憶、記録、もしくは魂のような何かがデータとしてこの体の俺に継ぎ足されていてそのうち本来の俺と融合? みたいになるって言っていたからですか?」

「ああ、それであっている。今のリンネくんの存在はあくまでマイクロチップ、μαに入っていたものになると私は考えている。ただ今の状況を見るに、何らかの不具合や事故があり一部が破損した状態なのではないかと思える」

「それって俺の記憶が中途半端だからですね」

「そうだな、どうも足りない部分が多い気がしてならない。むしろどういった経緯でそうなったのかがないのがおかしい」


 確かに言われてみれば、何の目的がありどういった経緯でこの時代の先祖だと思われるこの体にμαを埋め込むことになったのか、それが全く記憶されていないのはおかしいとリンネ自身も思っていた。


「話を元に戻そう。今のリンネくんはそのうち元のリンネくんと同化してもとに戻ることになる。今のリンネくん自身がイレギュラーであり、それはデータの不具合のためだろう。そしてリンネくんの中にあるμαがこの時代に来た理由は、μαのコピーを作り出しダンジョン出現に備えるためだと思われる」

「状況から考えるとそう思えますね」


 リンネはうなずきながらそう答えた。


「そしてその役目は終えたわけだ。正確にはコピーのコピーだが、一度コピーをしてしまえばリンネくんのマイクロチップはもう必要無いことになる」

「まあ、もう一度俺のマイクロチップをコピーしろと言われても困りますね」


 リンネは最初にコピーをした時の苦痛を思いだして顔をしかめた。


「役目を終えたリンネくんのマイクロチップだが、このままリンネくんが持っているといい、どのみち抜く出すことはできないからね」

「つまりは俺の頭の中にあるマイクロチップは、俺が死んだあとに取り出すということですね」

「結論から言うとそうなる。そしてそのマイクロチップはリンネくんの子や孫へと受け継ぎ、最終的に未来のリンネくんに移植されることになると私は考えている」

「えっと、でも俺のμαにはそんな記録やデータは残っていませんよ?」

「それはしかるべき時期に、そうだな仮にバージョンアップなどが行われたときに開放されるのではないだろうか。まあ全ては私の想像になるがね。」


 そうリオンは話を締めくくった。


「つまりは今の俺自身は戻れないけど、俺の頭にあるマイクロチップは俺の死後取り出されて何らかの経緯を得て未来の俺に戻るということですね」

「そうだと思われる」

「お兄ちゃんが突然消えたりはしないってことでいいんだよね」

「それであっているよ」


 レイネの問にそう言って答えるリオン。それを聞いたレイネはホッとした表情を浮かべている。


「そういうわけでもう私がリンネくんにしてあげられることはないだろう。それとこのマイクロチップのことは私にまかせてもらいたい」

「わかりました。どのみち今の俺には何も出来ないので、後のことはお任せします」

「リンネくん、それとレイネくん、もしなにかあればまた訪ねてくるといい」


 こうしてリンネはレイネと共にリオンに別れを告げた。この後リオンの手により、出所不明の技術としてVRとARそしてMRを併せもった複合装置が世界中で広がることになる。その技術はダンジョンの出現とともに真価を発揮し、人類生存の鍵を握ることになる。

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