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第131話 試み

 ジジという音が聞こえたと思うと視界にノイズが走る。続いてキーンという耳鳴り聞こえると同時に、激しい頭痛と吐き気がリンネを襲う。頭が熱い。すぐさまHMDを外してしまいたいという誘惑に耐えながら体をこわばらせながら、思い切り布団を握り込む。


 いっそのこと気絶が出来えば楽になるという考えがよぎるが、頭痛が酷いため気絶も出来そうにない。その状態で耐えること一時間、既に体中が汗にまみれている。


 実際は一時間が過ぎたあたりになるが、リンネの感覚では何時間どころか数日すらたっているように感じられている。そして更に数時間が過ぎた頃には頭痛もなくなっていた。


 そしてリンネは痛みを感じられなくなった頃、やっと気絶が出来ると考えながら、うまく動かない体を感じながら、眠りに落ちることになった。



「……ちゃ……。お……ちゃん」

「ん、あ……?」


 声をかけられたことで目を覚ましたリンネだったが、目の前にいたのがレイネだと気がつく。


「レイネか、どうした?」

「どうしたといいたいのはこちたの方だよ。いくら呼んでも起きてこないし、扉には鍵がかかっているしね。一体何が会ったのかなと心配で、扉を蹴破っちゃったよ。

「ん? 扉を蹴破る?」


 リンネは視線を部屋の入口に向ける。そこには開かれたままの扉が見えるが、特におかしな場所は見当たらない。


「それにしてもお兄ちゃん服もベッドもびしょ濡れだけど大丈夫?」

「ん、うわ、ちょっと先にシャワー浴びてくるわ」

「それもいいけど、お湯いれる? 洗ってはいるからそんなに時間かからないと思うし」

「そうするか、その間にシーツを剥がしたり洗えるようにしておけばいいな」

「それは私がやっておくから、お兄ちゃんは風邪をひかないようにしたほうがいいよ。お湯を張りながらになるけど、汗だけでも先に流したほうがいいかも」


 確かに汗まみれで衣服が体にくっついているのは気持ち悪いし、冷えたら風邪をひくかもしれない。


「わかた。すまないけど後のことはレイネに頼むよ」

「任せておいて」


 リンネは自分の着替え一式を手にとり階下へ向かう。途中扉を確認すると確かに蹴破った跡があり、鍵が壊れているのがわかった。


「これも直さないとな」

「何か言った?」

「いや、何も」


 リンネはそのまま階下へ向かい、お風呂の準備を始める。


「うわ、下着までびしょ濡れだな」


 リンネはそう言いながら衣服を脱いで洗濯機に何も入っていないのを確認して中に放り込んだ。そのままお風呂場に入りお湯はりのボタンを押した後シャワーを浴び始める。


 あちらの世界でならμαを通してお湯を張ることも出来たのだが、この世界では全て手動になっていて不便に感じている。頭からシャワーを浴びて汗を流し、髪と体を洗う。体を洗い終えた後もしばらくシャワーを浴び続けてお湯はりが終わると湯船に入る。


「ふぅ」


 自然とため息をついて方まで浸かり目を閉じる。


「うまくコピーができていればいいけど、どうだろうな。それにしてもあそこまでひどい頭痛と吐き気に体が汗まみれになるほどの熱が出るとは思わなかったな」


 今更ながら無理をしたと思っている。下手をすると熱中症のように脳が焼けていたかもと考えると少し恐ろしく感じていた。そもそもどうしてコピーが出来ると思ったのか今考えても理由がわからない。あの時は出来るという確信があった。


 そして現在、リンネの脳内にあるマイクロチップもなんらしかの変化があったのを確信している。


「よし、試すか。起ど──」

「お兄ちゃん大丈夫?」

「お、おい」


 突然お風呂場の扉が開いてレイネが入ってきた。リンネはいつレイネが脱衣所に来たのか気がついていなかった。そのレイネの姿は大きめのタオルで体を隠したままお風呂場に入ってきていた。


「おいレイネ、まだ俺が入ってるんだから」

「お風呂場が静かだったから大丈夫かなと思って」

「俺は大丈夫だから、いや俺が上がる」

「一緒に入ればいいからそのままでいいよ」


 そう言ってレイネはタオルを体の前からよけた。


「お兄ちゃん、もしかして裸だと思った?」

「おい」


 そういうレイネは真っ白いビキニを着用していた。ただ水着とはいえ、それ以外の部分は肌色のために目の毒ではある。リンネにとってはスズネが生まれる時にお互いの裸を見ていたが、あの時はリンネ自身も女性の姿であった。


 それに比べて今のリンネの体は男だ。そのためにどうしてもあそこの部分が反応してしまう。そんなリンネにお構いなしにレイネはかけ湯をしてから湯船に入ってくる。


「お兄ちゃんのお布団を片付けてたら汗かいちゃったから」

「それはすまん」

「流石にあれは家で洗えないからクリーニング屋さんに取りに来てもらうことにしたよ」

「俺が抱えて運ぼうか?」

「もうお願いしたから大丈夫だよ」


 リンネとレイネは背中合わせに湯船に浸かっている。流石にレイネも水着とはいえお互い面と向かってお風呂に入るのには恥ずかしかったようだ。


「それでお兄ちゃんは何をしていたらああいう事になったの?」


 リンネはどう答えていいのか迷った。リンネにとっては出来るという謎の確信のもとマイクロチップのコピーを試みたが、体にあれほどの負荷がかかるとは思っていなかった。


「後で話す。とりあえず先に上がるからレイネはゆっくり入っておいで」

「あっ」


 リンネはレイネの返事を待つこと無く湯船から上りそのまま脱衣所へ出ていった。

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