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第130話 共通する事

 晩ごはんを食べ終え、入浴も済ませたリンネは自室に入る。レイネは既に就寝しているのかレイネの部屋からは明かりが漏れている様子はなかった。


 念の為に鍵はきっちりとかけておく。実のところリンネはずっと気になっていたことがあった。今暮らしている家は、あちらの世界と同じ家であり、リンネとレイネの部屋割りも同じ。違うところといえば両親の部屋があることくらいだろうか。


 その両親も不在……。そこに少なからず疑問を感じなくもないが、その事は今はいいと思っている。今回の目的は机の上にあるHMD、ヘッドマウントディスプレイにある。ゴーグル型のHMDは、あちらの世界でリンネが使っていたものと同じに見える。


 流石に製造番号などは覚えていないので、同じものかはわからない。ただあちらの世界とこちらの世界のHMDの違いは明確だ。


「どう見てもこれって新しいよな?」


 リンネがそういうように、今手元にあるHMDはあちらの物よりも新しい。そもそもあちらの世界にあったHMDは、リンネの暮らしていた時代よりも百年ほど前の物だった。


 あちらの世界ではダンジョンが現れ、そしてμαが広がったことでVRやARの機能が使われていた機器は無くなることになった。リンネがHMDを手に入れたのもレトロゲームをしたいがためという経緯であった。


 手に持ったHMDにゲームソフトがセットされていないのを確認したリンネは部屋を見回してソフトを探してみる。


「俺ならここだろうな」


 リンネが向かったのは扉を開けた時に死角になる位置にある本棚。本棚には漫画やラノベの類が並んでいる。六段ある本棚の一番上に並んでいる文庫本を数冊まとめて取りベッドの上に置く。


 背伸びをして空いた部分を覗き込むとリンネの予想通りゲームのパッケージが並んでいるのが見えた。


「やっぱりここだったか」


 残りの文庫分も引っ張り出してベッドの上に置き、空いたスペースの更に奥にあるゲームソフトを取り出してそれもベッドの上に並べていく。並べ終えたパッケージを一つ一つ確認して行ったリンネだが、その目はどこか遠い目をしているように見える。


 まず目に入ったのは、サウザンドシスターズメモリアルというソフトだ。このゲームは妹と名乗る人物が千人でてくるという、ある意味狂気なゲームである。他にもシスターメモリーズ、萌え萌えシスター大戦略、シスタークリエイトなどなど。なぜかヒロインが妹に特化したゲームの数々が並んでいた。そしてそのどれもがリンネの見覚えのあるものだった。


「……」


 リンネはその中から一本のゲームソフトを手にとりパッケージを開ける。中にあるデータチップを取り出してHMDに差し込む。ベッドに寝転ぼうとしてゲームパッケージや文庫本がそのままなのに気がついてそれらを本棚に戻す。念の為に部屋の電気を消してから改めてベッドへ寝転がった。


 リンネはHMDを被り電源をいれる。一瞬視界にノイズが走った気がしたがそのまま起動画面は進んでいく。操作感はあちらのものと同じようでゲームが起動する。表示される制作会社などは記憶にあるものと同じ。


 その辺りで既にリンネの疑惑は確信へと変わっている。映し出されたサウザンドシスターズメモリアルの文字とタイトルコール。セーブデータのたぐいはまっさらで一度も起動されていない事がうかがえる。そこまで確認したリンネはHDMを外して電源を切る。


 リンネは考えをまとめるために目を閉じてそのままベッドへ倒れ込む。


「やっぱりこの世界は……」


 そう言ったところでコンコンと扉がノックされる。


「お兄ちゃん起きてる?」


 扉の外からレイネの声が聞こえる。部屋の電気は消しているのでこのまま黙っていればねていると思ってくれるかも知れない。再びコンコンとノック音がする。


「ねえ、お兄ちゃん、起きてるよね?」

「(ホラーゲームかよ)」


 口の中でそうつぶやきながら閉じていた目を開ける。部屋の中は窓から差し込む月明かりが照らすだけで暗い。


「起きている気がしたのに」


 そういう声が聞こえた所でスリッパのペタペタという音が部屋の前から離れていくのがわかった。別段レイネに答えても良かったが、リンネは色々と考えたかった。


 考えること、それはHDMが新しい謎。リンネの知っているゲームソフト。プレイされた履歴がない理由。このさいゲームソフトの全てが妹ものだという事は無視をしてもいいだろう。


 未だに考えはまとまらない。このHMDもゲームソフトもあちらの世界では百年ほど前のものになる。それと同じものがこの世界ではまだ新しい状態で存在する。そしてμαもあちらの世界ではおよそ百年ほど前に突如どこからともなく現れた。


 どうしてこうなったのかは考えても答えは出ない。リンネはふと思い立ちHDMからサウザンドシスターズメモリアルのソフトを取り出してゲームパッケージに入れて本棚に戻す。


 そもそもこのHDMにはゲームソフトのチップが当初入っていなかった。それにも意味はあるはずと思いHDMを改めて装着するとソフトの入っていない状態で起動する。HDMの起動し映像が進んでいくがNO TITLEと表示されているだけで特に何もおこらない。


「えっとどうだったかな」


 視線で映し出されているカーソルを操作する。オプションから記録媒体の選択。ブランクのチップがセットされているのを確認。


「いけそうだな」


リンネの視界にはコピーしますかという言葉が映し出されていた。

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