第13話 課題
✓パーティーを組む。
魔物を1体倒す。
魔物を100体倒す。
魔石を1つ手に入れる。
魔石を100個手に入れる。
ダンジョンアイテムを手に入れる。
最下層へ行く。
ダンジョンボスを倒す。
「これだけだな」
「あー、たしかにそんな感じだったね、それでも私たち1年くらいかかたんだよね」
「そうだった、最下層に着いたのが3年になってからだったね、そしてボスを倒すまでそれから半年ってかんじだったね」
「ってことは俺もそれくらいかかるのか?」
「そこは私たちにまかせてよお兄ちゃん」
「うんうん、ボクたちが手助けするから遅くても二週間でクリアさせてみせるよ」
「三年の行程を二週間って何をどうするつもりなのか知らないが不安しかないのだが」
「大したことじゃないんだけどね、とりあえず魔物を倒すのと魔石を手に入れるやつ、それからダンジョンアイテム入手を済ませちゃおうか」
「それじゃあお兄ちゃんさっそくその武器であそこの草切って」
レイネの指差す先には周りと少しだけ背丈の違うタダの草にしか見えない物があった。
「草、だよな?」
「うん、草だね」
「あれを切るのか?」
「そうだよ、あれを切るだけだよ」
ほらほら早くやっちゃってという感じで背中を押されたリンネが草に向かって歩いていき、草の目の前に立ちショートソードを軽く横薙ぎに振るう。
草は何の抵抗もなくスパリと切れたと思えば、その草が急にドロリと泥のように溶けて消えていった。そしてリンネの足元には小さな魔石が転がっている。
それを拾い上げたリンネは「なにこれ?」といった表情を浮かべながら魔石を拾い、レイネとアカリの元へ戻ってくる。
「お兄ちゃんおめでとう、魔物の初討伐と魔石GETだね」
「え、いや、え?」
「リンさんがいま切ったあれは草に見えるけどれっきとした魔物なんだよ」
「そうだよ、ちなみに見分け方はμαの情報表示をONにするといいよ」
レイネが言ったようにμαを操作して情報表示をONにする。そうすることによりどこに魔物がいるのか一目瞭然になり、魔物の位置や名前まで表示されている。
ちなみに先程リンネが切った魔物は、ウィードという名称の魔物でそこかしこに生息している。μαによってリンネの視界には▼ウィードと表示されており、リンネが▼を選択すると▽ウィード、植物型の魔物、近くを通る生物の足に巻き付き転倒させようとする。
「その情報表示はダンジョンに入る時はONにしておいたほうが良いよ、新しく出来たダンジョンでもない限りは罠の情報なんかも共有されているから」
「便利なもんだな」
「そういうわけでお兄ちゃん、頑張って100体倒してね、魔石は拾ってあげるから」
「……え? 俺一人で?」
「だってー私もアカリもやったことだし、これお兄ちゃんの課題だからね」
「手伝ってくれたりは」
「だから魔石は拾ってあげるからね。ほらほら行った行った、今日中に終わらせてね」
「リンさんがんばってねー」
アカリは手をひらひらさせている。
「仕方がないか、それじゃあ行ってくる」
そう言ってリンネはショートソードを構え、ウィードに向かって走り出した。最初は多少のぎこちなさはあったが、100体倒す頃には体の動かし方もこなれたものになっていた。
「はぁはぁはぁ、あー疲れたー」
「おつかれお兄ちゃん、はいこれお水ね」
「おー助かる、そう言えば水とか用意してなかったな、次ダンジョンに入る時までに用意しておかないとな」
レイネがバックパックから水筒を取り出してリンネに渡す。リンネは水筒を受け取って水を少しずつ飲んだあと水筒をレイネに返すと草原へゴロンと寝転んだ。
「そうだね、あとチョコとか飴とか甘いものも用意しておいたほうが良いかな」
「なんでだ?」
「遭難した時とかあるのと無いのとじゃ生存率が変わるって聞いたよ」
「ダンジョンで遭難とかあるのかよ」
「小型ダンジョンだとそうあるものではないらしいけど、大型ダンジョンだと遭難もあるみたいだよ」
「そうなのか、あとでバックパックと他に必要な道具とか買いたいから買い物に付き合ってくれ」
「まあいいけど、あとこれ回収した魔石ね」
リンネがレイネから魔石を受け取ると、魔石を100個手に入れる課題にチェクが付いて課題クリアとなる。
「クリア出来たみたいだな、魔石は預かっててもらえるか?」
「いいよー」
レイネが袋をバックパックから取り出してそこに魔石をまとめて入れる。
「それとアカリはどこに行ったんだ?」
「あーっと、いたいたあそこにいるね」
レイネの指し示した先を見ていると、アカリがリンネ達の元へ歩いてくる。
「アカリちゃんどこ行ってたの?」
「リンさん終わったようですね、お疲れ様です。あとこれをどうぞ」
アカリが手に持っていたなにかのツノをリンネに渡す。それを受け取った所でダンジョンアイテムを手に入れる項目にチェックが付いた。
「これは?」
「めったに見かけないレアなホーンラビットが目に入ったので狩ってきました、それはドロップ品ですね」
「おかげで課題がクリアできたよ、ありがとうアカリ」
「いえいえどういたしまして」
「残った課題は最下層とダンジョンボスだな、これは次回で良いのか?」
「そうだね、流石にまだ最下層に行くにはお兄ちゃんよわよわだからね、次回は下の階層を順番に進んでいけばいいかな、それに階層を降りると課題も追加されるからね」
「ちなみに次回ってのはいつだ?」
「早ければ明日と言いたいところだけど、お兄ちゃんの装備のこととかバックパックとかも買いに行かないといけないし明後日でいいかな、アカリもそれでいいよね」
「いいよー、行くときはちゃんと声かけてね」
「わかってるよ、それじゃあ戻ろっか、ほらお兄ちゃんいつまでも寝転んでないで立って」
よっこいせと声を出しながら立ち上がったリンネだが、手で影を作り空を上を見上げている。この草原にはずっと太陽から光が降り注いでいて、最初に着たときから太陽が全く動いてないようだ。
「それにしてもダンジョンって不思議だな、外はそろそろ夕暮れ時になってそうなのにここはずっと明るいままだよな」
「そうだねー、だからずっと中にいると時間の感覚があやふやになるから、外に出た時驚くよ」
「だね、ボクたちはまだ行ったこと無いけど、ずっと夜の階層があるダンジョンもあるみたいだよ」
「そんなのもあるのか。えっとそれでどこから出るんだ?」
「んーとあっちだね、あの木の所に出口があるよ」
「おー確かにμαにも出口の場所が表示されてるな、改めて思うが凄く便利だな」
「ホントだね、誰がどうやってμαと連動させるなんてことをしたんだろうね」
「ほんとにねー、まあボクにとっては便利だからどうでもいいんだけどね」
リンネたちはそんな会話をしながら数分ほど歩き、出口と表示されている場所へとたどり着く。そこにはアーチ状の門があった。ゲートの表面には赤い水鏡のような膜が張ってある。
「これが出口か」
「そうだよ、このゲートを潜るとダンジョンの外に出ることができるよ」
「大体は下の階へ行くゲートと同じ場所にあるんだけど、ここみたいに出口と別れてる場合もあるんだよね」
「そうなのか。それでこの赤いのに入るのか?」
「なになに? お兄ちゃん怖いの?」
「んなわけあるか、ほら帰るぞ」
そう言ってリンネは目をつぶりゲートを潜る。レイネとアカリもそれに続いてゲートを潜っていった。