第126話 世界は変われぞリオンは変わらず
いつも戦乙女をお楽しみいただいている皆さまありがとうございます。
あとがきを少し書いておりますので、よろしければ一読をお願いいたします。
白桜女子大学の研究室にリンネとレイネは来ている。休日ということで学生はほとんどいないようだ。そしてリンネとレイネの前には白衣を来た女性が一人いる。
「君がリンネ君か、ふむ聞いていたよりも男前ではないか」
まるで初対面のようにそう言ったのは祭音リオンだった。リンネにとっては顔見知りになるが、この世界のリオンにとってはゲンタ経由で紹介されただけの人物ということになっている。
「それ以上近づかないで下さい」
レイネがリオンの視線を遮るようにリンネの前に出る。
「ああ、君がレイネくんだね。兄妹だけあって似ているようだね」
「そ、そうですか? 私とお兄ちゃんがお似合いってことですね」
「誰もそんな事は言っていないが、まあ良いだろう。早速だが詳しい話を聞きたい」
リンネは何から話したものかと考えながら話を始める。
「こんな話信じてもらえるかわかりませんが──」
リンネが別の世界、リンネにとっての元の世界の話を始める。ダンジョンがあり覚醒者が生まれ、μαと呼ばれる脳内端末が普及した世界。そして覚醒に失敗し引きこもり生活を送り、覚醒を果たした後にユニーククラスを得て女性として過ごした数年の話を語った。
リオンは終始興味深そうに、レイネは不安そうに話を聞いている。途中で何度か休憩を挟み、最後はこの世界に、そしてこの男の体で目が冷めた所で話を終える。
「実に興味深い。特にμαというものはこの世界にない技術だ」
ぶつぶつと呟きながらリオンはノートPCのキーを打ち始める。
「お兄ちゃん……、今のお兄ちゃんは私の事を覚えていないの?」
「覚えていないというわけではないけど、なんだか夢の続きを見ているような感覚だな。この男の体の俺とレイネの事は記憶としてはあるけど、現実味がないというか」
この世界で目覚めたリンネは、当初何もわからなかったこの世界の常識とともにレイネとの関係性も知ることが出来ている。ただしそれは実体験を伴ったものではなく映画を見ているような感じの記憶となっている。そのために、どうしてもレイネとの関係は受け身になっている。
「そうなんだ。うん、なんとなく最近のお兄ちゃんがよそよそしいと思ったのはそういうことだったんだね」
「ゴメンな」
「ううん、気にしないで、それならそれでまた新しく関係を深めればいいだけだから」
そう言ってレイネはリンネに抱きつく。リンネは困惑しながらも抵抗すること無く受け入れている。ここで下手に抵抗すると色々と危険が危ないというなんともいい難い感覚を覚えたためだったりする。
「さてと、リンネくん少しいいだろうか」
「はい」
リンネに抱きついているレイネに対して特に反応をすることもなく、リオンがリンネに話しかける。
「当初の予定通り、精密検査をしようと思うがいいかな?」
「はい、お願いします」
「それじゃあ、まずはこれに着替えて隣の部屋に来てほしい、まずはCTか始めよう」
「わかりました。えっと着替えはどこでしたらいいですか?」
「ああ、そうだった。そうだなどうせ隣の部屋に行くことだしそこで着替えれば良いだろう。済まないがレイネくんはこの部屋で待っていて貰えないだろうか」
「仕方ないですね。えっと時間はかかりますか?」
「そうだなすべての検査がい終わるまで二時間と言ったところかな。検査結果が出るまでは数日ほしいから、検査が終われば今日は終わりになる」
「それじゃあ、少し大学の中を見学してきてもいいですか?」
「ああ、それは構わないよ。そうだな、ゲストIDを発行するからそれを持っていくといい」
「ありがとうございます」
リンネがリオンに渡された着替えを持って隣の部屋へ向かっていく。レイネはリンネを見送り、リオンの用意したIDカードを受け取り部屋を出ていった。残ったリオンはどこか楽しそうに笑みを浮かべている。
「μα、面白い事になぜか私はそれを知っているという感覚を覚えている。これは何なのかはわからないが、リンネくんの言っていたことが真実だと言う証左なのかもしれないな」
リンネの検査の準備を済ませて隣の部屋に向かうリオン。今回、リンネを検査する事により、何かとてつもないことが起きる予感を覚えたリオンは怪しい笑みを浮かべていた。
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